日本の中高年女性21,852人を対象に調査

味噌汁は乳がん予防に有効性を発揮するという研究報告が発表された。日本の厚労省研究班によるもので、岩手、秋田、長野県、沖縄に在住する40-59歳の女性を対象に、10年間にわたって食習慣を調べたところ（研究中に179人が乳がんに罹患）、味噌汁から大豆イソフラボンを最も多く摂っているグループは乳がんへの罹患率が54％と最も低く、とくに閉経期後の女性にこうした傾向が強く見られたという。
ちなみに、味噌汁を摂る量が最も少ないグループでも米国の女性に比べると、大豆イソフラボンの量は250倍も多かったという。

大豆イソフラボン（isoflavones）は、フラボノイドの一種で、大豆の「えぐ味」をもたらす。女性が体内で分泌する性ホルモンのエストロゲンに化学構造が似ていることでも知られる（効力はエストロゲン・ホルモンの1000分の1ほど）。

女性は閉経期を過ぎるとエストロゲンの分泌力が落ち、更年期障害といわれる様々な症状が起きる。このとき、ホルモン治療でエストロゲンを補給し症状緩和を行うが、頭痛、吐き気、膣の出血、胸部の衰えなどの副作用があり、途中でやめてしまう女性も多い。そのため、これに替わるものとして大豆イソフラボンなどの植物性エストロゲンが期待されている。

大豆を常食とする日本女性、欧米女性と比べ子宮がんの罹患率が低い

大豆イソフラボンには、これまでにコレステロール低下や更年期障害の緩和、骨粗しょう症、また子宮がんや乳がんなど女性特有の疾病予防に効果的であることが報告されている。

カリフォルニアの研究グループが、35歳から79歳の1千人以上を対象に、主に大豆に含まれるisoflavones、coumestans、lignansの3つのフィトエ ストロゲンと子宮内膜がんとの関連性を調べたところ、isoflavonesとlignansの2つを摂取すると、閉経期後の女性では特に危険性が低下していたという （*ただし、Coumestansとの関連性は見つからなかった）報告もある（Journal of National Cancer Institute'03/8月6日号）。

また、日本女性は伝統的に欧米女性と比べて豆腐や味噌などの大豆製品を日頃から多く摂るが、このため子宮がんの危険性が低いという分析報告もある。 ハワイ・がん研究センターの研究者らが1985年から1993年までの子宮がんに罹患した患者332人とその他の女性500人以上を比較調査したところ、豆類や 豆腐などの食品を多く摂っている女性は子宮がんの罹患率が54％低いことを報告している。

更年期障害の重いのぼせには有効性示さず

また、大豆イソフラボンの更年期障害によるほてりの緩和作用についても、これまで幾つか報告されており、更年期の女性51人に毎日大豆プロテイン配合の栄養補助食品を12週間与えたところ、ほてりが45％減少したという報告もある（Obstetrics & Gynecology誌）。

ただし、更年期障害の重度のほてりやのぼせについてはさほど効果を示さないという報告もある。ミラノ大学の研究グループによるもので、1日に最低7回ほてりの症状を示す女性62人に、72mgの大豆イソフラボンを含むサプリメントか、プラセボ（偽薬）のどちらかを6ヶ月与えたところ、両グループとものぼせ症状に40％の減少を示したものの、両者に差はなかったという（Fertility and Sterility誌）。

ちなみに、毎日大豆などから約200mgのフィトエストロゲンを摂るといわれる日本女性はほてりを訴えるのは25％以下だが、大豆を常食としない米国では85％の女性がほてり症状を訴えているといわれている。

これまで、大豆製品を常食としなかった米国では、その有効性を高く評価し、研究を盛んに進めているが、中年期女性の疾病予防食としての有効性など、さらなる研究成果が待たれる。

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