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”飲酒”がもたらす健康への影響に関する最新報告
先頃、国立がんセンターの調査で日本酒を飲んでも1日に1合(180ml)以下の場合は全く飲まない人に比べ、死亡率が低いことが明らかになった(1990-1996年に、岩手、秋田、長野、沖縄の四県の40-59歳の男性約2万人にアンケート)。赤ワインに代表されるような、こうした飲酒による健康への好影響についての報告がこのところ世界中で相次いでいる。もちろん、飲みすぎは健康を害することは周知であるが、はたして、適度な飲酒による”飲酒健康法”なるものが存在するのか。これまでに明らかにされている酒、ビール、ワインの効用と弊害について報告する。(※未青年の飲酒は法律で禁止されています)
1日に1〜2杯程度の飲酒は心臓病、卒中、前立腺肥大の危険性を低下させる
はたして”飲酒”は健康にいいのか。 また、7月には「適量の飲酒は、糖尿病患者の心臓に対しても良い影響を与える」という研究報告が報じられている(Journal of Medical Association誌)。これはUniversity of Wisconsin-Madison研究グループが12年間にわたって行った研究(タイプII糖尿病患者983人を対象)で、糖尿病患者が毎日1〜2杯の飲酒をした場合、心臓病による死亡率が80%低下することが判ったという。
飲酒は卒中にもいい。「1日に2杯までの飲酒は、卒中の危険性を半分に」する。そうした研究報告が今年1月にJournal of the American Medical Association誌に掲載されている。 さらに前立腺肥大症に対しても、作用はおよぶ。今年1月に、「少量の飲酒は前立腺肥大症の危険性を低下させる」ということが報じられている(American Journal of Epidemiology誌)。ハーバード大学研究グループが、Health Professionals Follow-up Study(1986年40歳から75歳までの間の男性約3万人を調べた研究などが含まれる)を分析調査したところ、ビールなど酒類を1日2杯程度飲む被験者はBPHに罹る危険性が低いことが分かった。研究者はアルコールが血中のテストステロン濃度を下げることで、BPHの発生あるいは進行を阻止すると考えているという。ただし喫煙量が多い場合は危険性が高まるという。 結論的には、1日に1〜2杯までというのが、現在までに報告されている心臓病、卒中、前立腺肥大の危険性が低下する飲み方であると言える。 ビールで腎結石、心臓病、卒中の危険性低下
特にビールに限っての報告も次々に発表されている。 「心臓病や卒中による死亡率を下げる」という報告も出ている。University of New South Wales研究グループによると、1日1〜2杯のビールを飲むと、心臓病や卒中による死亡の危険性を低くできるという。研究では、1930年以前に生まれた男性1千200人と女性1千500人を対象にしたが、心臓病による死亡がビールを飲まない男性では51%、飲むグループでは42%となった。また、女性では飲まないグループでは51%で、飲むグループで43%となったという。ただし研究者は「飲みすぎるとその有効性を消してしまう」と付け加えている。 ビールに発がん物質の突然変異原を抑制する働き。こうした研究報告も今年1月に発表されている(Journal of Agricultural and Food Chemistry1月号)。日本の、岡山大学の研究グループが行った研究で、イギリス、フランス、ドイツ、日本、アメリカなど11カ国からのラガー17種類、スタウト4種類、エール2種類のビールを比べたところ、ほとんどのビールがheterocyclic amines(Has)という突然変異原の活動を抑えこんだという。Hasは、食物に火を通す間に発生するとされ、発がん物質として知られるもの。また研究では、赤ワイン、白ワイン、ブランディー、日本酒にも同じような働きが見られたという。ただ、ウィスキーにはそうした効果は見られなかったという。 赤ワインの効用、コレステロールの蓄積防止、卒中の危険性低下、ヘリコバクター・ピロリ菌の除去など世界的に認知
心臓病予防に有効とされ、日本でも昨今ブームのワインの場合はどうか。
卒中との関連も昨年報告されている。デンマークの研究グループが1万3千300人を対象に16年間にわたって、ワインを1日1杯程度を毎月1回、毎週1回、毎日飲んだ場合の卒中との関連性を調べたところ、卒中の危険性がそれぞれ16%、34%、32%低下したという(Stroke誌12月号)。ワインの有効性についてはこれまで心臓病の危険性低下が指摘されているが、成分のフラボノイド、タンニンが心血管の健康に有効であると研究者は述べている。 またアルコール摂取は男性の肺がん罹患率を高めることはこれまでの研究で指摘されているが、ワインは反対にわずかだが、ビールなどに比べ罹患率を低下させるという報告も出ている(American Journal of Epidemiology3月号)。 デンマークの研究グループが、1964年から92年までに行われたのべ2万8千人以上が参加した研究を分析したところ、1週間にコップ1杯から13杯のワインを飲んだグループは、別の種類を飲んだグループに比べ肺がんの罹患率が22%減少したという。また、13杯以上飲むと減少率は56%になったという。反対にビールを飲んだグループは、肺がんにかかる危険性が9%から36%アップしたという。 こうした赤ワインの効用は世界的にも認められるところだが、今年8月にバルセロナで開催された世界最大の心臓病会議(参加者17,000人)、欧州心臓学会(European Society of Cardiology)年次総会において、「肉は少な目で、魚と野菜が多く、オリーブ油を使い、赤ワインを飲む地中海式の食事」は心臓病の予防や脳溢血、脳血栓のリスクを減少させると発表、1日にビールまたは赤ワイン一杯(約10gramsのアルコール)の摂取は、心臓血管病の発作が起きるのを30%減少させると報告された。アルコールが動脈の血液凝固の原因となるフィブリン(繊維状蛋白質)を破壊するものとみられている。 また、ワインが胃潰瘍の原因となるヘリコバクター・ピロリ菌を除去する働きあるという研究報告も今年に入って発表されている(Epidemiology誌4月号)。ドイツの研究者グループが、18歳から88歳までの男女1千785人を対象 に調べたところ、1日1〜2杯ほど飲酒をする被験者はまったく飲まない被験者に比べ胃の中にピロリ菌が存在しにくくなっていたという。研究では、毎日ワインを飲む被験者にはピロリ菌が42%少なかったという。また、ビールを飲む被験者は26%少なかったという。 飲酒と喫煙のコンビネーション、発がん率高める
こうした「適度な飲酒による健康への好ましい作用」が世界中で次々に報告されつつある。とはいえ、アルコール摂取は食道がんや肺がん罹患率を高めることはこれまでの研究で判っている。過度な飲酒は重篤な健康被害をもたらし、寿命を早めることは明らかである。がん予防として、専門家たちが推奨するライフスタイルは、果物、野菜、食物繊維の摂取量の増加、運動量を増やして体重減少に努める、禁煙、そして飲酒量の減少というものだ。
昨年12月、米国政府機関の諮問委員会が、アルコールをヒトへの発ガン物質としてリストに挙げることを承認し、この勧告を全米毒物プログラム(NTP)へ送る意向と報じられたことは記憶に新しい。
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