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肉食が日本人の長寿に貢献〜昭和50年以降の「和食」が理想 10月6日、ヤクルトホール(東京都)で食肉フォーラム「日本の食文化と牛肉」が開催された。昨今の狂牛病不安の中、基調講演を行った柴田博氏(桜美林大学教授)は肉食が日本人の長寿に果たした役割について述べた。
1985年、日本は平均寿命で世界のトップに
1985年(昭和60年)、日本は平均寿命で世界のトップに立つ。男性で75.91歳、女性で81.77歳。日本の長寿神話の始まりである。
20世紀初頭、1900年(明治33年)頃の食事といえば、雑穀に大豆関連を中心とした食事だ。カロリーこそ現在より多少大目だが、動物性食品の摂取が極めて少ない。20年後、大正時代に入っても肉に代表される動物性食品の摂取量は1日20gにも満たないもので、当時の日本人の平均寿命は世界で50番目以下であった。 それが、この40年で上位クラスの仲間入りをし、15年ほど前には遂にトップに立った。日本は短期間に長寿を実現した国として、世界から羨望の目で見られ、長寿食の手本として「和食」に関心が注がれている。 動物性タンパク質を極端に欠いた「和食」は短命を招く その長寿世界一を実現させた「和食」の特徴は、「動物性タンパク質と植物性タンパク質の摂取比率が1対1」という世界でも類をみないものであった。これは、肉に代表される動物性タンパク質が、日本の伝統食に適度にプラスされた昭和50年以降の「和食」を指す。裏返すと、動物性タンパク質を極端に欠いた「和食」は、むしろ長寿に貢献しない短命食であったわけだ。 柴田氏はいう。「昭和35年、日本人の1日あたりの肉の摂取量は平均で18.7g、現在、1日あたり平均で80g弱、今の4分の1も摂っていない。戦後、日本人の食生活は、特に昭和40年あたりから大きな変化をみせ始めた。魚だけで世界一の平均寿命は実現しなかった」 戦後、食の欧米化により、肉食が全国的に浸透。日本人の平均寿命を伸ばすうえで「肉」の果した役割は大きかった。動物性タンパク質の摂取比率と平均寿命との関係については統計的にも明確に表れている。平均寿命の高い欧米諸国は動物性タンパク質の摂取比率が60%-70%以上。平均寿命が低いアジア諸国は20%-30%。ちなみにインドは10%で平均寿命は50歳。摂取比率が理想とされる日本は50%で、韓国もほぼこれに近い。 日本は今、「古い日本型でもない、欧米型とも違う特殊な中間的な栄養状態」
実際に、動物性タンパク質は平均寿命にどう寄与したのか---。
タンパク質は我々の細胞組織の形成に関る必須の栄養素であることは誰もが知っている。 アミノ酸の含有比はプロテインスコアーで表すが、スコア100から高い順に挙げると、100で卵(必要量79g)、96でサンマ(必要量52g)、90で豚肉(必要量83g)、89でアジ(必要量56g)、87で鳥肉(必要量55g)、86でイカ(必要量68g)、80で牛肉(必要量65g)、73でエビ(必要量86g)など。また、植物性タンパク質の場合、56で大豆(必要量52g)、44で食パン(必要量284g)と低い。(参照:三石巌著「脳細胞は甦る」クレスト選書)
分子栄養学の権威である三石巌氏によると、成人で1日に体重の1千分の1のタンパク質が必要という。体重が60kgのヒトは60gだ。妊婦や発育盛りの子供はこれの5割増しという。
「長寿」の背後で猛烈な勢いで進行していった疾患
今、日本の「和食」の絶妙な栄養比率が、米国をはじめ世界から注目されている。
しかし、だからといっても、手放しで喜んでばかりもいられない。深刻な病態が一方で発生している。昭和40年、ちょうどそのあたりから、猛烈な勢いで日本人の間で蔓延していった疾患がある---。糖尿病である。加えて、ガンの増加も見逃せない。 「長寿」を成し遂げた日本。はたして糖尿病、さらにはガンの増殖を食い止めることはできるのか。
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