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「食育」で、日本の食文化の見直しを 平成18年4月7日、ヤクルトホール(東京都港区)で、「ポピュレーションアプローチとして食育について考える」(主催:(社)日本栄養士会)が開催された。当日、日本栄養士会会長の中村丁次氏が「食育における管理栄養士・栄養士の役割」と題して挨拶、服部栄養専門学校校長の服部幸應氏が「食育のすすめ--今、なぜ食育が必要か--」と題して講演した。
「食育」という国民運動、日本が世界で初めての国に
「食育という基本理念で国民運動を展開するのは日本が初めての国になる。これを世界に紹介したい」---。挨拶の中で、 中村丁次氏はそう述べた。 昨年7月、食育基本法(以下、基本法)が施行。今年3月31日には、内閣府に設置された食品推進会議で食育推進基本計画が決定された。基本法によると、「食育」とは「様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること」とある。
基本法の施策として、
ところで、世界一の長寿国といわれる日本にあって、なぜ今「食育」が必要なのか。 近年、脂質の過剰摂取や野菜の摂取不足により、栄養の偏り、生活習慣病や肥満者の増加、過度の痩身を招くなど、若年層の食環境の改善を図る必要が生じてきている。また、食品の安全性や食料の海外依存についての認識を高め、日本型食文化の継承を図ることの重要性も指摘されている。 野菜については、予防医学の観点からの十分な摂取が必要とされるが、若年層の野菜摂取が年々減少していることが懸念されている。また国民1人あたりの消費量をみても米国より低い( 参照:農林水産省「食料需給表」)。 1985年(昭和60年)に、日本は平均寿命で世界のトップに立つが、この頃はまだ、野菜の消費量で日本は米国より上回っていた。しかし、その後、米国はマクガバンレポート(*注1)などをベースにした栄養政策の転換から、野菜の摂取を奨励。90年代に入った頃から野菜の消費量が急速に伸び、4-5年ほどの間に状況が逆転する。 具体的に言うと、米国は90年代に入って、死因のトップであるガンの克服に向け、米国立ガン研究所を中心に、健康・医療の公共機関や民間の食品の製造業者らが協力し、健康維持のために野菜・果物の摂取増を目指す「5 A DAY(ファイブ・ア・デイ)」という運動を展開した。 これは、低脂肪・高食物繊維食を食習慣に定着させることを目標に、野菜や果物を1日に5皿分以上摂ることを目指したもので、子供達に、スーパーマーケットでの買い物体験や野菜の栽培収穫体験ツアーを実施するなど地道な活動を行った。これにより、1人1日当たりの野菜・果物の摂取量が1994年(平成6年)の3.8皿から、1999年(平成11年)では4.4皿へとアップしたといわれる。 穀類、大豆、魚などの「日本食」を志向する米国 また、服部氏は、講演の中で、「教育には、知育、徳育、体育の3つある。これを根底できちっとおさえるには食育という食を通じた人間教育が不可欠」と述べ、日本の食文化の継承についても言及した。
すでに米国は、「2005年版アメリカ人の栄養ガイドライン」を見てもわかるように、明らかに「日本食」を志向していることがうかがえる。ガイドラインでは、初めて全穀物の推奨を明言し、食物繊維やビタミン・ミネラルを豊富に含む全穀物を健康管理のための必需食品として位置付けている。 また、穀物と同様、アメリカ人の健康管理に欠かせない食材として認知されつつあるのが、オメガ3系脂肪酸を多く含むサケ、マス、ニシンといった魚。オメガ3系脂肪酸は、鬱やアルツハイマー、動脈硬化、心臓病などの予防に関与するとされる。FDA(米食品医薬品局)も心臓病予防への有用性を認め、ガイドラインでも魚の摂食を薦めている。 さらに、大豆についても、FDAが大豆たんぱく質を1日25g摂取すると心臓病予防に効果があることを認めて以来、米国で大豆ブームに火が付き、大豆イソフラボンなど大豆関連製品が店頭で人気んでいる。また、豆腐や豆乳のほかにも、納豆に含まれる納豆菌やジピコリン酸による病原性大腸菌(0-157)やサルモネラ菌への優れた抗菌作用などについても注目されている。
(*注1)マクガバンレポート:肉食を中心とした高脂肪・高カロリー食の米国では、長年糖尿病に代表される現代病の蔓延に悩まされていた。そのため、その原因を探るべく、1975年(昭和50年)、米国議会上院に、かつて大統領候補にもなったジョージ・マクガバン議員を委員長に「栄養問題特別委員会」を組織。「食と健康」に関する世界的規模の徹底調査にとりかかり、2年後、膨大な報告書をまとめあげた。
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