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妊娠適齢期女性の魚離れ、胎児の認識力や視覚機能への影響懸念 平成17年10月19日(水)、アイビーホール青学会館で、DHA・EPA推進協議会主催による第7回公開講演会『少子化・高齢化におけるこれからの健康管理の在り方』が開催された。当日、「日本の過去・現状を踏まえ、今後、脂質に期待される役割」をテーマに、岡田知雄助教授(日本大学医学部)、川端輝江助教授(女子栄養大学)らが、魚に含まれる必須脂肪酸、ω-3系脂肪酸の有用性などついて講演した。
菓子類の油脂摂取が多く、魚介類から摂取少ない
妊娠適齢期の女性が適正摂取を心がける必要があるとされる二つの栄養成分---。 もう一つ、サケ、マグロ、ニシン、タラ、サバなど寒冷海域の魚に多く含まれる必須脂肪酸のω-3系脂肪酸(DHAやEPAなど)。魚は、カルシウムやビタミンDといった骨形成に必要な成分ばかりでなく、胎児の認識力や視覚機能の発達に影響をおよぼすω-3系脂肪酸を多く含む。
ω-3系脂肪酸が知力を高め、脳機能の健全化に貢献するという研究報告は数多い。脳細胞の発達などにおいて、胎児から生後18週くらいまでの期間にω-3系脂肪酸が必要とされ、胎児の間は母体から、生後も母乳を通して補給される。そのため、WHO(世界保健機構)で人工栄養ミルクへのDHA添加を検討してきたという経緯がある。
当日、川端氏は、「女性の健康意識と食生活--次世代の健康な日本を担う」と題して講演。「魚介類に多く含まれるω−3系脂肪酸は乳幼児の脳や網膜の発達に必須である」とし、妊娠適齢期女性にω−3系脂肪酸もたらす作用について報告。これまで、DHAは植物油に含まれるα−リノレン酸からEPAを経由して体内で作られるとされてきたが、「最近の研究では、α−リノレン酸からEPA、特にDHAへの代謝がそれほど期待できるものではない」と指摘し、魚の摂食の必要性を説いた。
また、昨年、女子大生(18〜21歳)30名を対象に行った4週間の食生活の調査結果について報告。対象者全員に期間中の食事をデジタルカメラに撮り、食事内容を検討した。
さらに、ω−3系脂肪酸のうち、魚介類由来の脂肪酸(EPAやDHAなど)の占める割合を調べたところ、平成14年国民栄養調査報告の18〜29才女性56%に対し、今回調査の女子大生については25%であることが分かったという。 この調査から、「女子大生の菓子類からの油脂類の摂取量が高く、一人暮らしという住環境のためか、問題のある食生活をしている人が多く見受けられる。魚料理を作って食べることをほとんどしていない」などが考察されるとした。 うつ病、注意力欠如多動障害(ADHD)などの精神障害にも関与
ω-3系脂肪酸と精神障害との関連性も多く指摘されている。1998年、Journal of Affective Disorders誌に掲載された研究では、うつ病患者のω-3系脂肪酸血中濃度が目立って低いことが報告されている。また、Archives of General Psychiatry誌'99/5月号に掲載された研究では、躁鬱病患者30人に1日10gの魚オイルを4ヶ月間与えたところ、64%に症状の回復が見られたという。 ごく最近のものでは、Journal of Lipid Research'05/6月号に掲載 された記事によると、Tel Aviv Universityの研究者グループが、鬱病に罹ったラット の脳と正常ラットの脳を比較したところ、鬱病に罹ったラットはアラキドン酸(ω−6系脂肪酸)の濃度がかなり高く、ω−3系脂肪酸値が低いことが分かったという。 他に、近年問題視されている児童の注意力欠如多動障害(ADHD)についても、のどの渇き、多い尿、毛髪の乾燥など必須脂肪酸欠乏と同様の症状が見られること、ADHD患者のω-3系脂肪酸とω-6系脂肪酸の血中濃度が低下していることなどが報告されている。
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