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「眼鏡をかけると近視が進む」は都市伝説にあらず
〜屋外で浴びるバイオレッドライトが近視抑制のカギ

2019年12月18日、慶應義塾大学三田キャンパスにて「第10回慶応義塾生命科学シンポジウム」が開催された。この中から、坪田一男氏(慶應義塾大学医学部眼科教室 教授)の講演「アンチエイジングアップデート」を取り上げる。

「良い医療」を提供するほど日本円が海外に流出する

坪田氏は、慶應大学医学部からベンチャー企業をスタートアップさせることにここ数年注力している。

2018年、世界の時価総額上位企業から日本企業は姿を消している。日本国内で時価総額トップのトヨタでさえ、世界43位という状況である。

この現実は医療界にも影響を与えている。例えば、坪田氏が白内障や緑内障などの手術で「良い医療」を提供するためには医薬品や医療機器の多くを海外製に頼らざるを得ず、日本円が外国に大量流出しているという。

医療界全体では、一年間で医薬品が約3兆円、医療機器が約1兆円海外に出ているという。

つまり「良い医療」ほど日本円が海外で出ていくことになるが、この問題の背景には「日本の大学ではイノベーションが生まれにくい」ということがある、と坪田氏。

約5年前から、政府の方針で「大学でこそイノベーション=産業創生」が責務とされるようになった。慶応義塾大学でも「産業創生」に力を入れるようになり、この2〜3年で着実に成果が出てきている。

とはいえ、日本で大学から生まれる産業は5%程度で、米国の60%以上という数字と比べるとその差はあまりに大きい。

子供の近視、バイオレットライトと関係

坪田氏が主宰するベンチャー企業である「坪田ラボ」は近視・老眼・ドライアイといった視覚分野でビジネス展開している。

この領域で昨年から話題になっているが「子供の近視は生活習慣病であり、屋外でしか浴びることのできないバイオレットライトと関係している」ということ。

坪田ラボの調査では都内の小学生の75%が近視、中学生の94.9%が近視で、パンデミックといっても過言ではない状態だという。

もちろん近視は日本の小・中学生だけでなく、アジア全体では80%が近視とされ世界中で問題になっている。

ちなみに中国では昨年「青少年近視予防法案」が成立した。「近視=めがね」で強制すれば良いと軽く考える人も多いが、将来的に網膜剥離や失明のリスクが高くなり、QOLを著しく低下させる。そのため、近視の予防や対策を真剣に考えるべき、と坪田氏は訴える。

1日2時間の外遊びが近視を予防する

子どもに近視が増えている理由については「幼少期に外遊びが少ないことと関係している」と坪田氏。

1週間に14時間(1日2時間)の外遊びの時間がある子どもは近視になりくい、あるいは1日2時間の外遊びが近視を予防する、という研究論文や疫学調査も多数報告されている。

これは屋外でしか浴びることのできない「光」である「バイオレッドライト」が近視を抑制するから、と坪田氏。

例えば、「ひまわり」には「目」がないが、光を受容して光の方向に花を向けることができる。そもそも地球が誕生したのは46億年前だが、そのあと生命が光を感受できるようになったのは25億年前、さらにそのあと生物が進化し「目」を獲得したのは5億年前である。

人間の目にもさまざまな光受容体があるが「非視覚系の受容体」というものが5つあり、「光を受けることが必要な機能」として存在している。

眼鏡をかけると近視が進む

つまり、光を受容することで活性するレセプターや神経・遺伝子などがあり、「光」を医薬品のように治療に活かせる可能性も十分ある。

また、「眼鏡をかけると近視が進む」という都市伝説があるが、これは必ずしも都市伝説とはいえず、ガラスはバイオレットライトを通さないため、眼鏡をしているだけで近視が進むリスクは確かにあるのではないか、と坪田氏。

現在、坪田ラボはメガネチェーン店である「ジンズ」とコラボして「バイオレットライトを発する、かけるだけで近視を予防するメガネ」を開発している。おそらく2023年頃には流通する見通しだ。

これからも坪田ラボ、また慶應大学医学部発ベンチャーは、社会問題を解決しながら事業展開するCVS経営によって社会にイノベーションを起こせるように務めたいと坪田氏は話した。


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