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キレる少年たち!背景に「近代食の欠陥」

全国的に、ナイフを用いた少年たちの傷害事件が頻発しているが、こうした傾向に対し「加工食品を中心とした近代食の影響」と警鐘を鳴らす有識者が少なくない。3月3日のテレビ朝日「Jチャン」でも、子供たちが低血糖傾向にあり、精神不安から、衝動的になりやすいと説いた。

暴走する少年達に低血糖症の兆候

「食生活に異変!」と題して放映された同番組で、相次ぐ少年たちの傷害事件は食事の欠陥によるところが大きいとの指摘がなされた。昭和30年代半ばより加工食品が急速に増え、現在食品のおよそ6割を占めるに至っているといわれるが、食品から食物繊維や微量元素などが欠落し、血糖の正常なコントロールが出来なくなっている。

番組では、特に現代の子供たちは砂糖の摂り過ぎで、低血糖症を起こし、精神的に不安定な状態にあるとした。砂糖は急速に血糖値を上げるが、その際膵臓からインシュリンが分泌され、血糖値を正常にコントロールしようとする。しかし、あまりに砂糖が過剰に摂取されるため、インシュリンが過剰に分泌され、そのために血糖が逆に低くなるという現象が起きる。これが低血糖症といわれるもので、米国では10人に4人がこうした症状が見られるといわれる。いわば「近代食」がもたらした食禍ともいえる。

「加工食品の氾濫」が少年たちを狂暴にする

番組に出演した広島県福山市立女子短大の鈴木雅子教授は、少年たちのそうした傾向は、「80年代の校内暴力の延長線上」と見ており、現代の子供達を「飽食の時代」の申し子と位置付けた。

これまでに、鈴木教授は80年代に福山市と尾道市で中学生1,027人を対象に、食事と精神面への影響について調べている。野菜や魚を、またカップラーメンなどのインスタントラーメンなどの摂取状況と精神面との関係を調査しているが、その際、食事内容に偏りなど問題がある生徒ほど、「だれかをイジメている」、「飽きっぽい」など精神面でも不安定になりやすい傾向を示すことが分かったとしている。

これは日本ばかりでなく、すでに1975年に米国でもベン・F・ファインゴールド医師らが食品添加物などの化学物質が子供たちの心身に悪影響をおよぼしているとの見解を示している。

問題は、「豊かな食生活」の上に築かれた「現代型栄養失調」である。食糧が不十分な状況下での「栄養失調」ならいざ知らず、食が十分足りた上での栄養失調であるだけに事はやっかいだ。自体の本質が見過ごされやすい。つまり、加工過程で削ぎ落とされたビタミン・ミネラルといった生体維持に欠かせない微量元素が現代人に欠けた状態になっており、さまざまな疾病を誘発している可能性がある。さらにいえば、「豊かな食生活」を支えている合成化学物質がさまざまな弊害をもたらしていることも一方で考えられる。

昭和30年代前半の食生活が理想

現代人の食傾向が今後もそうした状況にあり続け、食の影響による低血糖などが現代の少年達の暴走を招いているとするならば、加工食品をできるかぎり食卓から排除するなど、食を根底から改善しない限り、今後も少年達の反逆はおさまりようもないであろう。

番組では、「野菜が豊富で魚の内臓まで食べるような1960年代の食生活が理想」とした。つまり高度経済成長の始まる昭和30年半ばまでの食事に戻すべきといういうことだ。

確かに、30年半ば以降日本の食生活は大きく変容した。保存料・着色料・品質向上剤といった何百種類の化学添加物がその頃からふんだんに注ぎ込まれた。食が経済至上主義の論理の中に組み込まれ、いつのまにか形骸化した加工食品に食卓を牛耳られる格好になった。

日本の健康食品業界が産声を上げたのもちょうどその頃。歪みをみせ始めた近代食に警鐘を鳴らしながら、欠陥の補充に努めてきた。しかしながら、500数種類の合成添加物がもたらす相乗毒性の前にはささやかな抵抗といったところか。

そういえば、4年前にベストセラーとなった衝撃の書『41歳寿命説』で著者の西丸震哉氏は「現在30代の人たちは40代で寿命が尽きる」と説き、長生きしたければ、日本人は昭和30年半ば以前の食生活にはもどすべきと提唱していた。

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