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小麦ふすまのフィチン酸、大腸がん予防に期待

2月5日、東大安田講堂で「第10回日本臨床腫瘍研究会〜抗がん剤は効かないのか」が開催された。当日、国立がんセンターの中央病院の西條長宏氏と大阪府立成人病センター研究所の石川秀樹氏の両氏が、がん予防のための食事改善などそれぞれ専門の分野から講演。石川氏はこれまで悪者扱いされていた小麦ふすまのフィチン酸の効用を取り上げ注目された。

海外の臨床試験成績を国内のがん治療の指標にしている

この中で、国立がんセンターの西條長宏氏は「抗がん剤は効くのか効かないのか」と題して講演、「現在、死因のトップはがんで3.7人に1人の割合で死亡している。現在、我が国では70種類ほどの抗がん剤が用いられている」とし、「我が国で汎用されているがんの治療法の大半は国内での臨床試験の結果に基づいたものではなく国外の成績の受け売り」と評した。

フィチン酸の腫瘍への作用に着目、長期にわたる「小麦ふすま」栄養介入試験を開始

また、大阪府立成人病予防センターの石川秀樹氏は、「発がん予防と臨床試験」と題して、年々増加傾向にある大腸がんに対する小麦ふすま(食物繊維)による食生活上での予防を講演。「これまでにもいろいろな栄養学的調査で小麦ふすまが大腸がんに有効との成績結果が出ている」とし、長年にわたる小麦ふすまによる研究成果を披露した。

氏が試験に用いた小麦ふすまはビスケット状のもので、1枚に食物繊維が約14.6%含有。1日に摂取する量は18枚で、ビスケットの追加により全体で20-25gの食物繊維が摂取できる。

また小麦ふすまを採用したもう一つの理由として、「小麦ふすまに含まれるフィチン酸ががんに有効ではないかと考えたため」(同氏)とした。フィチン酸は鉄やカルシウムと結合し、体内の吸収を阻害するものとしてこれまで悪者扱いされていたが、鉄は油の酸化を促す作用があるため、フィチン酸がこれを抑制する効果があるとした。動物実験でもフィチン酸を投与すると、腫瘍発生の抑制が見られたという。

試験は1993年6月に着手され、途中、阪神大震災などのアクシデントにも見舞われたがおよそ8年間にわたり内視鏡で観察が行なわれた。対象になったのは40-65歳の大腸がんでも危険性が高い多発性大腸腺腫患者231人で、試験は現在も継続中とした。

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