ビタミンAの有用性については、1950年代頃より着目されていたといわれる。
1970年代に入って米国ジョンズホプキンス大学のソマー博士らのグループが低開発国の乳幼児に与え、効果を確認。乳幼児の死亡率が3分の1に減少したとも報告されている。
しかし、その後、1日10,000IU以上の摂取で奇形児生誕の可能性が示唆、また肝細胞の壊死を促進するなどの有害作用があるとされ、1日、25,000IU以上の摂取は避けるよう専門家たちは勧告してきた。そのため、米国の企業の多くは1980年代後半より10,000IU/カプセルで製品化するよう自主規制を行ってきた。
再度、「ビタミンAの過剰摂取は健康に悪影響」と専門家
ビタミンAの誘導体であるβカロチンについては、フィンランドと米国における投与試験で「肺がんへの有効な作用はみられない」との否定的な結果となり、関係者に衝撃を与えた。しかしながら、ごく最近の米臨床がん研究協会(デンバー)による2,200人の医師を対象にした投与実験では、「普段、ほとんど野菜、果物を摂らない男性についてはβカロチンの栄養補助食品は有効」とされた。ただし、これについても「普段の食事からじゅうぶんなβカロチンが摂られている場合は逆に害になりかねない」という、見解が付け加えられた。
こうした過去の投与実験の結果もあり、専門家の間ではビタミンAの適正量のついての評価が定まらなかった。NIHの今回の適正量8,000-10,000IUという発表はこれまでのビタミンAの摂取量に終止符が打たれるかとおもわれたが、一方で異議を唱える声も挙がっている。
グロリア・デ・マッサロ博士は昨年ネズミを使った実験で、肺機能が正常化へと向かうことを確認した。しかしながら、「人による臨床実験での確認がまだなされていない」とし、ビタミンAの過剰摂取を戒めるコメントを寄せている。また、前述のウイリアム・ソマー博士も「ビタミンAの取り過ぎは決して健康に良い影響を与えるとは思えない」という慎重論を8月13日付のロサンゼルスタイムズに寄せている。