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なぜ、キレるのか〜脳の働きと食生活との関係 7月17日、有楽町マリオン朝日ホール(東京都千代田区)で公開講演会「子どもの心と体の健康を考える」(主催:日本ケロッグ梶jが開催された。当日、「なぜ、子どもがキレるのか-食生活と子どもの心の心身の健康について-」と題して、福山私立女子短期大学教授の鈴木雅子氏が講演を行った。
「キレる」、「ムカつく」は脳の栄養不良
確かに、最近は社会性の欠如した、キレた大人たちの暴走が目立つ。
何が、彼らをそうさせるのか---。
その結果、4)、5)のグループは野菜や海藻、牛乳の摂取が少なく、ジュース類やスナック菓子、インスタント食品を多く摂っており、半数以上が朝食を食べていないという状況にあった。また、情動が不安定で、根気がなく、常にイライラして、カッとしやすいという傾向にあった。
昨年度の公立小中高校生の「暴力行為」、過去最多に
こうした「食」と「情動」との相関が、15年前、鈴木氏の調査で指摘されたが、現状はどうか---。 また、厚生労働省は9月より、注意力や集中力に欠け、落ち着きなく、イライラして、動き回るといった情動障害で学校になじめない児童生徒が目立ってきたとし、6歳から15歳の児童生徒3,000人を対象に、「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」についての全国調査を行うことを発表した。これは6ケ月間の子ども達の行動を4段階で評価するというもので、来年3月に調査結果を公表する予定だ。
なぜ、かくもキレやすい、情動障害の児童生徒が増えているのか。 朝食の欠食は「脳の栄養失調状態」招き、脳の機能低下に
講演の中で、鈴木氏は、劣悪な「食」で「脳が栄養不良」状態になり、理性、判断力など情動が不安定になっているとした。だが、飽食といわれる現代にあって、なぜ脳が「栄養不足」になるのか。
脳の活動のため必要なブドウ糖は、米や麦、イモ、豆類などに多く含まれる糖質あるいは砂糖などがその供給源となる。朝食の欠食は、ブドウ糖ばかりか、ビタミン・ミネラルなどの栄養素も得られない。つまり脳が一時的に「栄養不良」状態になる。 こうした状態が長らく続くと、情動障害ばかりでなく、脳の機能低下を招くことが海外でも報告されている。1919年に、戦時中(第一次世界大戦)、食べ物が十分でなかった5歳半-14歳までの6,500人の子ども達を対象に行った調査でも、普通の食事を摂った子どもに比べ、栄養不良児は伸長や体重が劣り、集中力、記憶力、注意力など知力が低いことが明らかになっている。 また、1974年に、世界保健機関(WHO)で、「食」と「精神状態」との相関について、「発育盛りの子どもたちは軽い栄養不足でも、知的遅れと精神状態の不安定さがみられる」と警告している。 砂糖はブドウ糖の供給源、摂り過ぎでB1不足の懸念も 脳の活動のためにブドウ糖が必要で、穀類や砂糖がその供給源となることはわかった。確かに、ネズミの餌にブドウ糖を与え、記憶力を調べる迷路実験を行ったところ、餌を食べた2時間後に、記憶力と学習能力がピークに達したという研究報告もある。 だが、問題視されているのがその摂取量。砂糖が細胞内でブドウ糖へと分解される際、糖代謝酵素の補酵素としてビタミンB1が使われる。そのため、砂糖の摂取量が多くなると、ビタミンB1不足が進み、イライラや意気消沈、集中力の低下など情動障害が生じる。また、身体的にも肥満や糖尿病、むし歯、筋肉の弱化、骨密度の低下、近視などを招くおそれがあることが指摘されている。 現在、日本では1日の総カロリーの50%を炭水化物から摂ることが薦められている。炭水化物に分類される砂糖は、総カロリーの8%の摂取で、全体的にみると、摂り過ぎということでもない。今年4月施行の「第6次改定日本の栄養所要量」でも、「砂糖の1日の摂取許容量」といったものは特に定められていない。
しかしながら、個々人の摂り方はさまざまで、特にジュース類(1缶250mlに約20〜40グラムの砂糖が含まれる)など多飲する子供たちの場合、砂糖の摂り過ぎで血糖値が上がり、インスリンが大量に分泌され、低血糖症になり、イライラや集中力低下などの情動障害を招くことを懸念する声もある。
食品添加物など化学物質も「情動」に影響
この他、情動障害や脳の機能低下に関連しているものにどのようなものがあるか---。
現在、米国でダイオキシンやPCBなどの環境ホルモンが脳神経に異常を与えるという研究報告が次々に発表され始めているが、日本に環境ホルモンの恐怖を紹介したシーア・コルボーン博士も化学物質が脳にダメージを与える可能性を指摘している。汚染の進む米国の五大湖の魚を食べていた母親が生んだ子供たちの知能を15年間調査したところ、臍の緒にPCBが多く含まれていた子供ほど知能が低くなっていたという。臍の緒を通じて化学物質が胎児に入り込み、脳に損傷を与えた可能性が考えられている。 セロトニンの分泌欠如が情動障害もたらす
ところで、情動をつかさどる脳の情報伝達機能とはどのようなものか。 概要はこういうことだ。脳はニューロンという神経細胞の集まりで、ニューロン間にはシナプスという間隙があり、ここで、神経伝達物質が放出され、電気信号がその先のニューロンに伝わる。この神経伝達物質にはアセチルコリン、アドレナリン、ノルアドレナリン、ギャバ、ドーパミン、セロトニンなど(一説によると数百種類あるといわれるが、相互作用についてはまだ十分解明されていない)があり、脳機能の活性化に重要な役割を果すとされている。 最近ではセロトニンが、脳の働きを鼓舞したり、気分の落ち込みや鬱症状に深く関与するとされ注目されており、セロトニンの神経間の伝達を調整する医薬品としてSSRI(脳内薬品)が話題になっている。 セロトニンはトリプトファンという必須アミノ酸から作られるが、ネズミにトリプトファンの欠乏した食事を与えた実験で、5週目の終わりには脳内のセロトニンが減少することが確認され、セロトニンが減ったネズミは正常なネズミと比べて痛みを感じやすくなっていたという研究報告もある。
セロトニンについては、8月15日、朝日新聞(朝刊)の「私の暴力論」と題したコラムの中で、北海道大教授で脳科学者の澤口俊之氏が触れている。 「健全な脳を作る」ために必要な栄養素とは
それでは、「脳の健全化」のために、どのような栄養素を摂る必要があるのか。 ビタミン・ミネラルの適切な補給は「脳の健全化」のために必要だ。カリフォルニア州立大学の研究グループが、6歳から12歳の児童40人にビタミンやミネラルを十分に与え、他の40人に偽薬を与えたところ、ビタミン・ミネラルを与えたグループは偽薬グループと比べ、反社会的な行動が47%少なかったという報告もある(The Journal of Alternative and Complementary Medicine'00/2月号)。
とりわけビタミンB群は情動のコントロールに欠かせない。B1以外に、B2(リボフラビン)も不足すると鬱症状を招くとされる。またB6はアミノ酸の一種であるトリプトファンの代謝に関与し、不足すると、神経過敏やいらだちなどを招くとされる。
ブドウ糖の補給源として白米や砂糖は貴重だが、はたして精製したものがベストといえるか。
では、「ブドウ糖の補給に優れ、ビタミン・ミネラル、さらには食物繊維が十分摂れる」食品とは一体どのようなものか---。 「脳の健全化」のために、どれほど「未精製穀類」が効率のよい食品かがわかる。そのため玄米や七分つき、胚芽米や麦などビタミン・ミネラル、食物繊維がほどよく含有されている食品が「脳の健全化」のために薦められる。 さらに、日本が世界に誇るブレインフード(頭脳食)として挙げられるのが「納豆」。「脳の健全化」のためだけでなく、「優れた脳」を作るためにも必要な食品といっていい。大豆にはレシチンが含まれているが、消化の際、コリンという物質になり、記憶回路の活性化に関連するアセチルコリンという神経伝達物質を作る材料となる。さらに、神経の興奮を抑制するカルシウムやマグネシウム、神経細胞の活性化に欠かせないビタミンKやなどのミネラルも納豆には豊富に含まれる。 米国に、知能指数が200を超える日系三世のマイケル・カーニーという天才少年がいる。この少年は4歳の時に知能指数が200を超え、6歳で高校を卒業し、10歳で南アラバマ大学を卒業してギネスにも登録され、米国中の話題をさらったことがある。このマイケル君の大好物が「納豆ごはん」で、母親はマイケル君を身ごもっていた時から、和食中心の食事と納豆を摂っていたという。 また、この他に、ビタミンCや魚油に含まれるDHAやEPAなどが(ただし、不飽和脂肪酸のため酸化して過酸化脂質になりやすく、過剰摂取は活性酸素を発生させる原因にもなるともいわれる)脳の機能強化に役立つとされる。
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