バックナンバー > '00/1月記事
糖尿病や卒中などのリスク、"日頃の適度な運動"で減少
健康を維持するためには、栄養成分の摂取とともに、”日頃からの適度な運動”が重要なファクターとなっている。 日本では、ここ数年ダンベル体操やウォーキングなどによる適度な運動が肥満や糖尿病の改善に役立つとしてブームになっているが、こうした手軽にできる運動の疾病予防効果とはどのようなものなのか。最近の特に女性を対象とした世界の調査結果を報告する。
1日1時間または少なくとも30分の運動で糖尿病のリスク減少
1月29日、「生活習慣病と食物繊維」をテーマに公開講演会(主催:日本食物繊維研究会)が開催された。その中で「ダンベル体操」の発案者として知られる鈴木正茂教授(筑波大学体育科学)がダンベル体操による疾病予防についてふれ、「1日15分の短時間運動だが、基礎代謝の増大、糖と脂質のエネルギー代謝の増大をもたらす」とし、肥満や糖尿病への改善に有効であると述べた。また肥満や糖尿病の改善における運動の重要性については「運動を主役に、食事を補佐役とするのが合理的」とした。 最近の研究でも、糖尿病の改善のために運動の重要性を指摘する調査結果が報告されている。ハーバード大の研究チームは、40〜65才までの女性70,102人を対象とした心臓病と癌の調査データ(Nurses' Health Study )を1986年から8年間を分析した結果、出来れば1日1時間または少なくとも30分、足早に歩く運動をすれば成人型糖尿病のリスクが減少すると発表している(Journal of the American Medical Association'99 10/20号)。 それによると、調査当初健康体であった対象者のうち、1,419人が調査期間中に糖尿病と診断されたが、運動量が多い人ほど糖尿病のリスクが少なく、運動時間でみると週21.7時間以上の女性は週2時間の女性と比べ、リスクが46%も少ないことが判ったという。
運動時間を増やせばそれだけ糖尿病のリスクも減少するということだ。では運動時間と運動量との関係はどうなのか。
こうした結果に対し、研究チームは「運動をすることで体重が減り、また糖分がエネルギーに分解されるため、糖尿病になり難くなる」としており、出来れば1日1時間または少なくとも30分足早に歩く運動を毎日することが望ましいと指摘している。 日頃の運動で女性の卒中による死亡のリスクが半減
また日頃の運動が、中年以降の女性の卒中による死亡率を50%減少させるという調査結果も出ている(Stroke誌2000 1月号)。
それによると、50歳以上の女性のどの年齢層においても、運動量が増えるに従い、卒中による死亡のリスクが減少することが判明し、頻度、激しさの度合、期間などの数値から運動量を計った結果、最も運動量の多い女性は卒中による死亡のリスクが約50%も低いことが認められたという。
運動は女性の胆石手術の必要性を減少
運動が胆石のリスク軽減に役立つことも明らかになっている。
胆石は、胆汁、コレステロール、カルシウム、その他が胆嚢内に結集して固まったもので、無痛の場合もあるが、激痛が起きた場合は手術の必要がある。 5%から10%の少しの減量でも健康状態に好影響 運動についてはまず減量ということが期待できるが、これによる疾病予防の意味合いも大きい。マサチューセッツの研究チームが、大幅な減量でなくとも、たとえ5%から10%の減量であっても長く維持すれば健康に大変効果的であるという調査結果を報告している。 それによると、軽度、中度、重度の肥満症の35〜64才の男女の肥満度指数、高血圧、高コレステロール血症、成人型糖尿病、冠動脈心臓病、卒中のリスクについて調査した結果、10%の減量を保持するだけで肥満症1000件の内、心臓病のリスクは12〜38件、卒中は1〜13件軽減され、高血圧症になる年数が4.1年から2.9年に減少、高コレステロール血症と糖尿病の年数もそれぞれ0.3年、0.5年減少し、平均寿命は男性2〜7ヶ月、女性2〜5ヶ月伸びたという。 糖尿病や肥満、高血圧など、いわゆる生活習慣病といわれる疾病に対しては、やはり”日頃からの適度な運動”を生活習慣にすることが効を奏するようだ。
|
Copyright(C)GRAPHIC ARTS CO.,LTD. All rights reserved.
|