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8月28、29日の両日、東京女子医科大学弥生記念講堂(東京都新宿区)で”第三の医学-統合医療の新しい潮流”をテーマに「第3回JACT大会'99」が開催された。2日間で健康・医療従事者を中心におよそ8百人が来場し、日米における代替医療の最新報告に熱心に耳を傾けた。今大会は特に「統合医療の実践」をメインに、気功、太極拳、ヨガ、アロマテラピーなど各種代替療法を実演、健康・栄養食品の展示を行い、医療応用への可能性を探る一歩踏み込んだ内容となった。特別講演としては、初日にJACT渥美理事長の「相補・代替医療を軸としたシルバーコミュニティー構想」、米国より来日したスクリップスクリニック病理学部門名誉会長・ロバート M.ナカムラ氏の「米国における栄養補助食品と薬草治療の現状」、(財)日本健康・栄養食品協会理事長・細谷憲政氏の「健康補助食品と健康強調表示」などが組まれた。また2日目には世界的な心臓外科医としても知られる元ニューヨーク医科大学臨床外科教授の廣瀬輝夫氏が「米国の代替相補医療の現状」について講演。この他、シンポジウム”JACTは理想実現のために何をなすべきか”、公開討論会”市民はCAMに何を期待しているか”など開かれ、日本における代替医療の将来像について活発な意見交換が行われた。

医療ビッグバン”に向けて礎石作りを行う必要がある

開会にあたってJACT渥美理事長は「医療というのは患者のためにある。国民のための統合医療を確立したい」と挨拶し、さらに今大会では、JACTの今後の方針をもう少し明確にしたいとし、次のように述べた。「アメリカでもそうだが、世界的にオルタナティブ・メディスンの大きな流れが起こっている。

そうした流れに日本の医療体制がはたして対応できるかどうか。JACTはそのための礎石作りを行いたい。今後の医療ビッグバンに向けて、研究、教育、行政などへの制度改革を提案していく必要がある。その時にJACTが代替医療をどう位置付けるかが大きな課題となる」。

また、会員が7月の時点ですでに500名を超えたことを報告、「学術的な情報を得たい、あるいはJACTの実際の活動に携わってみたいなど、多様な会員の要望に応えるために今後さまざまなサービスを行いたい」と述べ、学術部会、企業部会、一般市民部会の3つの事業部会の設立を提案した。

さらに、各種委員会の発足についても明確にし、学術委員会として、健康補助食品専門委員会、国際代替相補大学設立準備委員会、健康療法専門委員会の設立を予定しているとした。この他、編集委員会、会員委員会、2000年6月に予定している第4回JACT大会準備委員会の発足などについて述べた。 また分科会についても、がんの代替医療分科会、健康補助食品分科会、健康療法分科会を発足させたいと展望を述べた。

北海道、大阪、福岡などにJACT支部会発足

7月以降、JACTの活動はさらに全国的な広がりへと発展し、支部会発足の声が各地から挙がっているが、北海道、名古屋、福岡、大阪などで支部会発足が具体的にまとまりつつある。

渥美理事長はこうした支部会と連携し、情報交流を深めるとともに、国際間においても、2000年2月にタイ国日本代替医療視察団の派遣、3月に米国の代替医療の現状視察、4月にハワイでの第5回米国代替医療シンポジウムへJACTとして参加を予定するなど、積極的な情報交換に務めたいと語った。

この後、引き続き「相補・代替医療を軸としたシルバーコミュニティー構想」と題して渥美理事長が講演。「日本の高齢化は非常に進んでおり、2010年には65歳以上の高齢者が人口の25%を占めるようになるといわれる。また2025年には老人の医療費が4倍に高騰するといわれる。現在、国民の医療費は年に5%増加しており、医療経済が破綻するのは目にみえている」と述べ、代替療法を実践する健康医療センターの必要性を強調。愛知県健康プラザ、岩手県テクノハウス、南飛騨国際保養地、富山県健康プラザ、さらに海外の施設としてスタンフォード相補医療クリニック、ケント地域医療センター、カリストーガー温泉保養センターなどの施設を紹介し、有効活用についてスライドを用いて解説した。

欧米式のライフスタイルがさまざまな疾患をもたらした

渥美理事長の挨拶および講演に続いて、(財)日本健康・栄養食品協会の細谷憲政理事長による「健康補助食品と健康強調表示」、スクリップスクリニック病理学部門名誉会長のロバートMナカムラ氏による「米国における栄養補助食品と薬草治療の現状」と題した講演が行われた。この中で、細谷氏は日本の栄養問題の取り組み、協力、研究、政策とも世界に立ち遅れていることを指摘、食品の有効性についての明確な表示が今後望まれるとした。

またナカムラ氏は、米国医療界における代替医療の位置付け、漢方・薬草療法の現状と問題点などを報告、「欧米式のライフスタイルがさまざまな疾患をもたらしている」とし、疾病の引き金となる食事内容について、「精製された穀物、精製された糖、食物繊維の不足」を挙げ、穀物、野菜、豆類を多く摂ることを奨め、「栄養」管理の重要性を説いた。

米国ではドクターの2分の1が代替医療に好意的

初日の午後からは順天堂大学医学部の酒井シヅ教授による「伝承医学--歴史と現状--」、慶応義塾大学特選塾員の三木亘氏による「アラブ・イスラム医学とその周辺」と題した講演が行われた。

講演をはさんで、ヨーガ指導者の成瀬雅春氏により、ハタ・ヨガによる呼吸法、瞑想法などが披露。また帯津三敬病院院長の帯津良一、稚子夫妻による気功が実演。それぞれ、気の流れを円滑にすることによる心身の癒しの行法が紹介された。

帯津良一氏は「がん治療におけるCAMの役割」と題しても講演を行い、「2年前、サンフランシスコ州立大学を訪問して西洋医学の先生に代替療法にどういう感じを抱いているか質問した際、3分の1が好意的、3分の1が無関心、3分の1が嫌悪感を持っているというものだった。ところが現在は2分の1の先生が好意を持っている。まさに、大洪水のように代替医療が広がっている。これは世界的な流れ」と述べ、日米ともここ1、2年の間に代替医療が急速に浸透している状況を語った。

代替医療は全人的な医療。消え去ることはない

初日プログラムの最終は、シンポジウム”JACTは理想実現のために何をなすべきか”が行われ、来場者と対話形式で 意見交換が行われた。
この中で、ソニーPCL(株)の井深 亮氏は臓器移植について問題を提起し、移植された他者の遺伝子と自己のそれとの間で生じ兼ねない自己矛盾について指摘。これに対して、「明確になされないまま行われてきた」(阿岸氏)、「環境との関わりもあり、すぐには結論の出ない問題」(渥美理事長)など遺伝子レベルにおける医療のあり方にまでおよんだ。また渥美理事長からの「WHOは健康の要因としてスピリチュアルな部分もとり入れるようになり、かなりの進歩と思うが」という質問に対し、帯津良一氏が「医療においては心のあり方が重要されるべき」とホリスティック医学の考えを示した。

会場からはJACTへの期待として、「今の医療は生活からかけ離れている。医学の枠の中での生活を押し付けているようなところがある。より良い生活の中からの健康作りを提案して欲しい」といった声も挙がった。 初日、閉会に際して、ナカムラ氏は「代替医療は消え去ることはない。全人的な治療だから」とまとめた。

気功による反応、近代医学的検査でも確認

大会2日目は、日本臨床アレルギー研究所所長で元日本東洋医学会会長の宮本昭正氏が「西洋医学からみた東洋医学の知恵」と題して講演。西洋医療と東洋医療の特徴をスライドで対比し、「東洋医学は全人的な医療であり、疾病の予防や不定愁訴の多い老人医療に優れている」とし、「東洋医学も西洋医学も同根であり、今後は東西融合の医療が好ましい」とまとめた。

またこの後、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター所長の阿岸鉄三氏が「気功のパラダイムからみた西洋医学」と題して講演。「西洋医学をやっている多くの人達は外気功を認めようとしないが、もしそれがあるとしたら西洋医学の立場からどのようにみえるかというところから出発した」とし、「気功師が頭に手をかざすと患者の80〜90%で反応が起きることが近代医学による検査でも確認された」と気功の有効性が他覚的に認められたことをスライドで紹介した。

講演をはさみ、太極拳とアロマテラピーの実演がおこなわれた。太極拳ではNPO法人日本健康太極拳協会理事の石田尚身氏が楊名時太極拳の実技を披露。またアロマテラピーは日本化粧品技術者会の鈴木一成氏が「心と身体をいやす香りの神秘」をテーマに、不眠症、うつ病の改善など各種ハーブやアロマテラピック・オイルの持つ作用を紹介した。

また、招待講演として元ニューヨーク医科大学臨床外科教授の廣瀬輝夫氏が「米国の代替相補医療の現状」と題して米国におけるオルタナティブ・メディスン(代替療法)の官民一体となった盛り上がりを伝えた。この他、講演は浜松医科大学名誉教授の大原健士郎氏による「精神心理療法」、(株)宗画房代表の渋谷広見氏による「情報化時代のアートセラピー」、大阪府立看護大学学長の小島操子氏による「介護における心の癒し」が行われた。

代替医療が慢性疾患に大きな意味を持つことは疑う余地がない

2日目の大会の締めくくりとして、公開討論会”JACTはCAMに何を期待しているか”が行われた。歯科医の福岡氏からの「歯科治療に代替医療を取り入れると、痛みを緩和できる」といった声や、会場から「現代人の多くは肉体より精神的な疲労で問題をかかえている。心の問題も取り上げて欲しい」などの要望が挙がった。

またナカムラ氏は、「代替医療は西洋より東洋のほうが進んでいる。米国には鍼灸、ヨーガ、アロマテラピーが一堂に会して意見を交換し合う組織というものはない。それぞればらばらで独立したまま。代替医療が慢性疾患に大きな意味を持つことは疑う余地がない。JACTで代替医療のガイドラインとか表示を進め、保健医療にあてはめて償還を得られるようになればいいと思う」と今後の活動に期待を寄せた。 JACT大会は今回で3回目を終了したが、「次回は2000年6月を予定しており、さらに各種代替療法の有効性の立証について各論を深めていきたい」(渥美理事長)としている。

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