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大腸がん予防、野菜・果物(食物繊維)の摂食以外にも
適度な運動やアルコール過飲・肉食を控えるなど

10月4日、渋谷公会堂で、第6回21世紀の食と健康フォーラム「食から考える健腸生活〜プロバイオティクス最前線〜」が開催された。当日、大腸がん予防における日頃の食管理やライフスタイルについて石川秀樹氏(健保連大阪中央病院消化器科部長)らが最新の研究報告を行なった。

大腸がん増加、「食物繊維の摂取量の減少」以外にも原因

厚労省の人口動態統計をみると、がん死因の中で、大腸(結腸・直腸)がんは、肺がん、胃がんに続き3番目に多い。とくに女性は、平成15年にがん死因のトップになるなど、食やライフスタイルの欧米化で大腸がん罹患が年々増えている。

「食生活によるがん予防」と題して講演した石川氏は、近年の日本人の「食物繊維の摂取量の減少」が、日本人の大腸がん増加に直接繋がったわけではなく、アルコール過飲、豚肉・牛肉の過剰摂取、運動不足などが促進因子に、さらに肥満や喫煙なども要因となっていることを指摘した。

石川氏が、大腸がんを防ぐ食生活やライフスタイルとして挙げたのが以下の項目。
1)適度な運動(1日15分程度の速歩と週1回程度の比較的強い運動)、2)アルコールの過飲を慎む(男性は1日に1合、女性は1日0.5合まで)、3)豚肉・牛肉は平均1日80gまで、 4)野菜を適量食べる、5)適度な乳酸菌飲料の摂取、6)肥満にならない、7)禁煙。

大腸がん罹患にさまざまな要因が絡んでいることが石川氏より指摘されたが、食物繊維の摂食が健康管理に重要な役割を果たすことには変わりない。 果物や野菜、穀類などの食物繊維が不足した肉・乳製品を中心とした食事は結腸がんのリスクを高めることも報告されている。

38歳から63歳の女性7万6千402人を対象にしたNurses'Health Studyを分析した研究で 赤身の肉、脂肪、精製された穀物を主体とした食生活を送るグループは、果物や野菜、 魚、未精白穀物中心の食生活グループと比べ、結腸がんに罹る危険性が46%高いことが 判ったという報告もある。

また、Journal of the National Cancer Institute'05/6月15日号に掲載された記事によると、 フランスの研究者グループが、European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition(EPIC)研究データをもとに、結腸がんと食生活の 関連性を分析したところ、脂肪の少ない赤身の肉(ポーク、ビーフ、子牛、ラム) を毎日100g食べる毎に、結腸がんの危険性が49%したが、魚を100g/日食べる毎に、危険性は 半分になることが分ったと報告している。

大腸がん予防、食物繊維に効果ナシという報告も

しかしながら、一方で食物繊維に結腸がん予防の有効性が見られないという研究報告も最近出ている。 The Journal of the American Medical Association'05/12月号に掲載された記事では、 Harvard School of Public Health研究者グループが、これまでの研究 13件(被験者725,000人以上)を分析したところ、食物繊維の結腸がん予防の全体的 な有効性は無いと結論付けている。

他にも、Journal of National Cancer Institute誌'00/11月号に よると、ハーバード・メディカル・スクールの研究チームが、136,000名を超す医療 従事者を対象に1980年から16年以上にわたって行われた調査結果を分析したところ、 野菜や果物の摂取はがんや心臓疾患、糖尿病には予防効果を発揮したものの、 結腸及び直腸がんについての予防効果は認められなかったと報告している。

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