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肥満が導くメタボリックシンドローム(Met.S)
心筋梗塞や脳梗塞の発症リスク10倍以上に

平成18年7月4日、日本記者クラブ(東京都内幸町)で「メタボリックシンドローム〜食育の必要性と治療指針」(主催:東洋医学フォーラム)が開催された。当日、寺本民夫教授(帝京大学医学部内科)が日本で増えつつあるメタボリックシンドロームの現況について講演した。

肥満から糖尿病、さらに動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞へと発展

「1980年から90年にかけて日本人のコレステロールレベルが急激に上がっている。日本の30代、40代でメタボリックシンドロームが非常に増えている。相当注意しなければいけない」---。
寺本氏は講演の中でそう指摘した。メタボリックシンドローム(以下略:Met.S)は筋梗塞、脳卒中へと繋がる恐れがあるという。

Met.Sとは、高脂血症や高血圧、糖尿病、肥満などの発症が重複し、動脈硬化が生じやすくなる病態をいう。動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳梗塞の発症へと繋がる恐れがある。前述の症状が比較的軽症でも3,4つ重なると発症リスクは10倍以上になるといわれている。現在、日本のMet.S人口は1920万人ほどとみられている。
Met.S対策については、高脂血症や高血圧、糖尿病などが、肥満に起因することから、まず体重減少を目指すことだ。寺本氏は「21世紀は肥満との戦いの世紀」と指摘する。

世界の長寿国といわれてきた日本だが、近年栄養過多による中高年層の肥満化が進行している。中国やインドでも同様の現象で、疫学的変遷がアジア地域でみられるといわれる。対策としては、肥満大国といわれる米国の肥満解消策が手本になるかもしれない。

米国では、昨年1月に「2005年版アメリカ人の栄養ガイドライン」が公表された。増え続ける肥満人口に歯止めをかけ、医療費削減という目標のために、ガイドラインでは「摂取カロリー削減」「果物・野菜・全穀物の摂取奨励」「定期的な運動」の3つを掲げた。日頃の「食」による健康管理では、とくに、高食物繊維食である全穀物と魚の摂食を推奨している。

全穀類を摂ると体重の増加を防ぐ

食物繊維を豊富に含む全粒粉を使った食品は米国でも健康管理に有用であると評価が高い。 全粒粉を使った食品は体重の増加を防ぐという研究報告もある。American Journal of Clinical Nutrition'03/11月号に掲載された記事によると、 ハーバード大学の研究グループらが、1984年、38歳から63歳 の74,000人の看護婦を対象に、1984年、 1986年、1990年、1994年に食生活に関するヒアリング調査を行った。

結果、全粒粉を使った食品を多く食べるほど、摂取量の少ないグループに比べ体重増加が 殆ど見られなかったという。
また12年間の調査では、最も多く摂取したグループ は最小グループに比べ、体重増加が平均1.52kg少なかったことが分かったという。

全穀類を摂るとII型糖尿病の危険性を下げる

また、全穀類を摂るとII型糖尿病の危険性を下げるという研究報告もある。 American Journal of Clinical Nutrition'03/3月号に掲載された記事によると、 フィンランドの研究グループが、40歳から69歳の男女4,300人の 食習慣を10年にわたって調べたところ、シリアル、玄米、オオムギ、オート ミールのような食物繊維が豊富な全穀類を最も多く摂ったグループは、II型 糖尿病の罹患率が35%低いことが分かったという。

未精白穀類は食物繊維を多く含み血糖値の上昇を緩慢にすることから、糖尿 病の予防に貢献することはこれまでにも数多く報告されている。特に、 糠(ヌカ)の部分には食物繊維が多く含まれ、糖尿病対策に良いとされる。

ハーバード大学の研究グループが、38歳から63歳までの女性7万5千人を対象 にした1984年からの10年間の研究の分析でも、糠を多く含む未精白穀類を多 く摂ったグループは血糖値低下により糖尿病の危険性が38%減少したという ことが報告されている。
この他にも、未精白穀類の効用としては、血圧降下作用や卒中のリスク低下など も報告されている。


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