ノロウイルス感染、2001年以降3年連続トップ
ノロウイルス。あまり聞きなれないウイルス名だが、ここにきて、このウイルスによる食中毒被害がTV・マスコミを賑わしている。
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実は、このウイルス、それまでは「小型球形ウイルス」と呼ばれていた。それが2002年より国際的に「ノロウイルス」と改められ、日本の厚生労働省も2003年以降、このウイルス名を使うようになった。
ノロウイルスは約30年以上前に確認されているが、感染・増殖機序はいまだ不明とされている。とはいえ、感染力は非常に強く、10−100個のウイルス摂取で感染、「ボランティアに実験的に感染させると、約50%のヒトが発症し、小腸絨毛の萎縮や上皮細胞の脱落などの病理組織学的変化が認められ、これにより下痢が引き起こされる」という。
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ノロウイルスの主な特徴としては、乳幼児から高齢者にいたる幅広い層に小腸部位で感染し、下痢や嘔吐、嘔気、腹痛等をもたらす。また、と
きに発熱、頭痛、筋肉痛を伴う。発病までの潜伏期間は通常1〜2日で、症状が1〜3日続いた後、治癒し後遺症は残らない。
ノロウイルスによる食中毒の発生状況をみると、夏にはサルモネラ、腸炎ビブリオによる食中毒が多く発生しやすいが、12月〜2月にかけてはノロウイルスによるものが俄然多くなるといわれる。厚生労働省の食中毒統計では病因物質別の患者数で2001年以降3年連続でノロウイルスの感染患者数がトップ。2003年では全体の38%を占めている。
十分な洗浄・加熱処理で拡大被害に対処
感染経路については、主に以下の3つが挙げられる。
1)ノロウイルスに汚染されたカキや二枚貝を生で摂食した場合。
2)調理従事者などの手がノロウイルスに汚染されており、それにより汚染された食品を食べた場合。
3)食べ物を介さずに人から人へ直接ウイルスが感染する場合。
感染経路がわかれば、有効な対策も講られる。以下がその主なものだ。
1)加熱処理〜カキ等の二枚貝は内臓(中心部)まで十分に加熱、また食品、布
巾、食器類等加熱できるものは85℃で1分間以上の加熱を行う。
2)手洗い〜料理する前に、石鹸で手指の十分な洗浄を行う。
3)食品〜野菜等の生食食品は流水でしっかり洗浄する。
4)吐物やふん便の処理〜ふん便、吐物をきちんと処理。マスクとゴム手袋を着用し、
周りに汚染させないようにする。食品取扱者、調理者はふん便を食品に付着させな
い様に注意する。さらに徹底するためには、市販の次亜塩素酸ナトリウム液を
60倍程度に希釈し(塩素濃度1,000ppm)5〜10分間浸し、再度塩素濃度200ppmで
浸すように拭く。
5)調理器具・床の消毒〜次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)で浸すよ
うに拭く。
平成15年5月「食品安全基本法」制定、同年7月に食品安全委員会設立
今回のシンポジウムは日本食品衛生協会が、厚労省が行っている、ウィルス性食中毒や貝毒やカビ毒、人畜共通感染症、食品添加物の安全性確認方法等、食品の安全に関する科学研究の成果を一般公開するために行われたもの。平成11年より毎年開催し、今回で6回目となる。
基調講演「食の安全とリスク分析」では、内閣府食品安全委員会委員長の寺田雅昭氏が、「食品は、本来、安全なものと考えられていたが、近年、食品の安全性に対する安心・信頼感が揺らいできた」とし、BSE(牛海綿状脳症)や輸入野菜の残留農薬の問題、さらに食のグローバル化の拡大や遺伝子組換えなどの新たな技術の登場で食を取り巻く状況が一変したことを挙げ、新たな食品安全行政の必要から、平成15年5月に「食品安全基本法」が制定、同年7月に食品安全委員会の設立へと繋がった経緯を述べた。
食品安全委員会は科学的知見に基づき客観的・中立公正にリスク評価(食品健康影響評価)、リスクコミュニケーション(関係者相互間の意見・情報の交換)、緊急事態への対応を行うことを主目的としており、7名の委員と専門事項を調査審議する延べ200名程の専門委員を擁する16の専門調査会で構成されている。
これまでの、主なものでは、BSEや鳥インフルエンザ、アマメシバに関するものがあるが、BSEについては、イギリスでの状況を報告するとともに、日本においては、10月26日にプリオン専門調査会を開催し、審議を開始したことを明らかにした。
また、鳥インフルエンザについては、「食品を通じて人に感染が起きたという報告がないにも関わらず、国民が鶏卵、鶏肉に対して、いたずらに不安感を持つに至った」ことから、正しい情報の積極的な提供に努めた、とした。