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ビタミンA、摂取量で「骨折」要因に 日本では、2001年4月より「保健機能食品制度」が発足し、現在までに12種頬のビタミンと5種類のミネラルについて、製品に栄養機能の表示が認可された。このうち、ビタミンAに関しては、妊婦および妊娠適齢期の女性の過剰摂取については奇形児が誕生する可能性があるとされ、注意が促されていたが、最近の報告では、摂り方によっては「骨をもろくする」原因にもなりかねないということがいわれている。
奇形児誕生の可能性で、適正量めぐり議論
ビタミンAは人の成長に欠かせない栄養素で、目や免疫システムの健康を維持す るが、過剰に摂ると有害になることが知られている。例えば、1日25000〜50000 IUか、それ以上を長期間摂取すると、関節の痛み、吐き気、食欲不振などを起 こすとされる。 また、妊娠中の女性の過剰摂取は警告が発せられており、1日 10,000IU以上摂取した場合、奇形児が誕生する可能性があるなど、これまでに適正量を めぐる論議が重ねられてきた。
とはいえ、一方でビタミンAは健康な皮膚や髪の毛、骨の成長に欠かせない有益なビタミンであることも立証されている。 しかしながら、その後、1日3,000μgRE(10,000IU)以上の摂取で奇形児生誕の可能性が示唆、また肝細胞の壊死を促進するなどの有害作用があるとされ、妊婦は1日、7,500μgRE(25,000IU)以上の摂取は避けるよう専門家が勧告。米国では多くの企業が1980年代後半より3,000μgRE(10,000IU)/カプセルで製品化するよう自主規制を行ってきた。 また、97年7月には、National Institute of Child Health and Human Developmentのジェームス・ミルス研究者らが、神経管障害児を出産した548人の妊婦など、1、500人あまりを対象に産後1-5ケ月に電話アンケートを行い、妊娠中のビタミンA摂取を1日2,000-3,000μgRE(8,000−10,000IU)にすると胎児に発生する障害が低下するとの報告を行った。 ビタミンA値、高すぎても低すぎても骨折の危険性増大
ビタミンAの適正量については、胎児の健康に影響するとあって、これまで慎重な検証が積み重ねられてきた。 とかく、摂取量をめぐって論議の絶えないビタミンAだが、これに新たな論点が数年前より加わりつつある。ビタミンAの過剰摂取は骨折 を招く危険性が高いという。ビタミンAの摂り過ぎは、カルシウム吸収に重要なビタミンDの効力を阻害することが示唆されている。 ボストンの研究グループによるもので、34歳から77歳の閉経期後の女性7万人 を調べたところ、1日に2,000μgRE(6,660IU)以上のビタミンAをサプリ メントや食品から摂ったグループは、1日500μgRE摂取のグループに比べ腰部 骨折の危険性が2倍になったという報告もある。ビタミンAをサプリメントで摂っているグループは摂らないグループに 比べ、腰部骨折の危険性が40%高かったという。 また、New England Journal of Medicine'03/1月号に掲載された記事に よると、40〜50代の男性でビタミンA値が高い場合、さらに高齢になってから 骨が弱くなる恐れがあるということが報告されている。 スウエーデンの研究グループによるもので、49歳から51歳の男性2,322人を30年間 調査したところ、調査開始時にビタミンA値が最も高かったグループでは平均値 のグループに比べ、後で骨折する割合が1.6倍高いことが分かったという。 また、最近の報告では、ビタミンA値が高すぎても低すぎても骨折の危険性 が増大することが判ったという内容の報告が、American Journal of Medicine'04/8月1日号に 掲載されている。それによると、ニューヨークの研究グループが、National Health and Nutrition Examination Survey Epidemiologic Follow-up Studyから、 50歳から70歳の女性2,799人のデータを分析したところ、血中ビタミンA値が平均 のグループと比べ、最も低いグループでは骨折の危険性が90%高く、最も高い グループでは2倍となっていたことが分かったという。
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