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HIV・SARS・C型肝炎、都市に広がる感染不安 1月29日、津田ホール(東京都渋谷区)で都民講座「大都市をとりまく健康への脅威と医学研究の最先端」が開催された。当日、東京都臨床医学総合研究所(感染生体防御研究部門)の小原道法氏らが、SARS・C型肝炎などへの対処法について講演した。鳥インフルエンザによるヒトへの感染が懸念される中、新感染症時代への対策が急がれる。
ボーダレス時代、断ち切れないウイルス禍
昨年、中国をはじめ、世界的に猛威を振るった新型肺炎SARS。新世紀に入って、忽然と姿をあらわしたこの新型コロナウイルスは感染力が強く、死亡率は10%を示した。WHO(世界保健機構)によると、患者数は8422人、累積死者は数916人(2003年8月7日現在)にのぼった。 昨年7月5日、WHOがSARS終息宣言をし、その後、新たな流行指定地域は特定されていないものの、今年に入って、中国広東省で32歳の男性がSARS感染の疑いで入院するなど、依然、警戒がとけない。 そして、今年1月12日、日本国内の養鶏場で鶏のインフルエンザ感染が発覚。その翌日にはベトナムでも鶏からヒトへの感染が確認されるなどボーダレス(垣根のない)時代を象徴するかのようなウイルス禍が続いている。さらに、アメリカでもBSE問題が噴出するなど、感染不安の連鎖が断ち切れない。 03年のHIV感染者は過去最高に
新たなウイルスの出現で影が薄くなりつつあるHIV(エイズ)だが、昨年献血10万人あたりの陽性件数では過去最高を示すなど、依然、根深い浸透をみせている。
C型肝炎、日本では200万-300万人 また、現在世界で約2億-2億5千万人が発症しているといわれるC型肝炎も深刻な問題の一つになっている。C型肝炎は血液を介して感染する疾患で、日本では200万-300万人が感染しているといわれる。 感染経路は、輸血がほとんどで、80-90%が持続感染し、10-15年で肝硬変に、さらに数年後には肝がんへ進行していくといわれる。「C型肝炎ウイルスはこれまでに報告されたことのない、非常に高率にがんを起こす発がん物質であることがわかっている」(小原氏)。ただ、「現在、日本では新たな感染者が非常に少なくなってきている」(同)ことが救いでもある。 新感染症時代、どのように備えればいいのか 新感染症時代の幕開けともいえるような、こうした事態に我々はどう対処していけばいいのか。 HIVの防止については避妊具の装着がすすめられていることは周知の通り。C型肝炎に関しては、抗ウイルス薬であるインターフェロンと他の薬剤との併用による効果的な治療法が確立されつつある。しかしながら、SARSや鳥インフルエンザに関しては、未だ有効なワクチンはなく、世界各国で研究・開発を急いでいる状況だ。 SARSは、患者のせきや痰や体液などによる接触感染(2-7日、最大10日間程の潜伏期間を経て発症。潜伏期あるいは無症状期における他への感染力はなく、あったとしても極めて弱いと考えられる。そのため、マスクの装着で感染を防ぐことができるとされている。 またSARSへの、さらに積極的な対応策としては、消毒が効果的といわれる。「我々のごく身近にある消毒用エタノールやうがい薬として一般に市販されているイソジンに対してSARSは非常に感受性が高く、ウイルスは簡単に消滅する。エタノールでは約40万分の一に、イソジンでは約1000万分の一にまで落とすことができる」(同)。現段階では、こうした予防法で、帰宅した際に手洗いやうがいを行うことが薦められる。
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