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ビタミンをめぐる最近の話題〜がんに無効・有効で議論

ビタミンEあるいはベータカロチンを多量に摂取しても心臓発作を予防する保証にならない---。こうした記事がCirculation'03/8月19日号に掲載された。 ボストンの研究グループによる報告で、1982年から開始された研究、Physician’s Health Studyに参加した被験者を13年間追跡調査したところ、カロチノイドやトコフェロールが心臓発作の危険性を低下させることの十分な裏付けが得られなかったという。ここにきて、こうしたE、C、ベータカロチンといった米国で愛用者の多い抗酸化ビタミンの有効性をめぐって専門家の間で無効・有効の白熱した議論が交わされている。

さらに慎重で計画性にすぐれた研究が必要

ビタミンははたして疾病に有効なのか----。
これまでもっぱらいわれてきたビタミンの疾病への有効性に関して見直しを迫るような議論が米国で沸騰している。 とくに、がんへの有効性については、米国政府の諮問委員会で、初期治療および予防の権威が集まったUnited States Preventive Service Task Force(USPSTF)がビタミンに関するこれまでの研究を数10件ほど分析したところ、“不正確あるいは矛盾する”研究が多く、ビタミン摂取とがん予防の関連性を示す証拠は殆どない、という結論に達したと報告している。

Annals of Internal Medicine誌によると、USPSTFではビタミンA、C、Eなどの抗酸化ビタミンについて、慎重に組み立てられた計画性のすぐれた大規模研究はほとんど行われていないとし、例えばEについては、1件の大規模研究では、前立腺がんの危険性を下げる可能性があると認められるものの、それ以外では、様々な結果が出ていると指摘。また、ベータカロチンについては、ヘビースモーカーには逆にがんのリスクを高めるという研究報告も出ているという。

医学誌「The Lancet」'03/6月14日号でも、クリーブランド・クリニック財団の研究グループが、主要研究15件、被験者のべ22万人を分析した(うち7件がビタミンEのみ、または他の抗酸化剤との組み合わせ、8件がベータカロチンのみ、または他の抗酸化剤との組み合わせを扱ったもの)ところ、ビタミンEは心臓病などによる死亡を減少させず、卒中の罹患率も下げていないことが分かったと報じている。また、ベータカロチンについては心臓病死の割合を0.3%、その他の死因を0.4%増大させていることがわかったと報じている。

ビタミン・ミネラルを一緒に摂るとがんによる死亡率が低下

抗酸化ビタミンの有効性をめぐって、こうした肯定・否定の議論が白熱している。
肯定論では、タフツ大学の研究グループの6年間に渡る研究では、ビタミンEグループと対照グループでの心臓病死数は変わりないが、ビタミンEグループでの生存期間は対照グループに比べ長かったという報告もある。

また、最近のもので、ビタミンとミネラルサプリメントを一緒に摂取すると、がんによる死亡率を下げるというフランスの研究グループの報告もある。研究では、35歳から60歳の被験者1万3千人を調べており、半数に、1日ビタミンC120mg、ビタミンE90mg、セレニウム100マイクログラム、亜鉛20mgを、残りにはプラセボ(偽薬)を与えた。7年の研究の間、男性が103人、女性が71人死亡しており、心臓病による死亡率への影響は見られず、また、女性のがん死亡率にも変化はなかったが、男性の場合、がんの罹患率が31%、死亡率は37%と低くなっていることがわかったという。

一方、ビタミンについては、サプリメント摂取より食事からの摂取のほうがより効果的であると主張する専門家も多い。イスラエルの研究グループの報告によると、1つの果物の中には多種の抗酸化物質が含まれ、その組み合わせにより最良の効果が発揮されるという。果物からベータカロチンやリコペン、その他多種のフラボノイドを摂る方が、より相乗効果がもたらされるという。

食事からだけのビタミンC摂取では心臓病への影響みられず

実際にビタミンの有効性についてはどうなのか。最近の報告を幾つか挙げてみる。Journal of the American College of Cardiology'03/7月号では、食生活にビタミンCを補給すると心臓病の危険性を低下するという研究報告を掲載している。

ボストンの研究グループによるもので、女性8万5千118人を対象に16年間追跡調査を行った(*研究期間中1千356人が心臓病に罹患)ところ、ビタミンC剤を摂取したグループでは心臓病に罹る危険性が28%少ないことが分かったという。この中で、研究者はサプリメントを使用せず食事だけからのビタミンC摂取だと心臓病罹患にそれほど影響を与えていなかったと報告している。

ビタミンC濃度高いと、ピロリ菌感染の危険性低下

また、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究グループは、9歳から20歳のLDL([悪玉])コレステロールが高くなる危険因子を持つ15人を対象に調べているが、被験者に6週間の食事プログラムを受けさせ、ビタミンC500mgとビタミンE400IUの併用あるいはプラセボのどちらかを与えたところ、心臓病のリスクを下げることがわかったという(Circulation'03/8月12日号)。

この他、胃潰瘍の原因とされるヘリコバクター・ピロリ菌とビタミンC濃度との関連性について、サンフランシスコの研究グループが1988年から1994年の間に6千746人のデータを集め分析したところ、ビタミンC濃度が上がると、ピロリ菌感染の危険性が低がることが分かったと報告している(Journal of the American College of Nutrition'03/8月1日号)。

ビタミンE、フリーラジカルによるダメージを半減

また、ビタミンEと老化に関与するフリーラジカルについて、Biological Research for Nursing誌は、フロリダ大学の研究グループが、60歳から75歳の被験者59人を定期的に運動させるグループ(トレッドミルや自転車漕ぎなど60分間、週に2度)とそうでない対照グループに分け、毎日ビタミンE(800IU)を与えるグループとプラセボグループに分けて16週間後をみたところ、ビタミンEを摂取していたグループはフリーラジカルによるダメージが半減していることが分かったと報告しているという。

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