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増えるガットフレイル(胃腸の虚弱化)、食物繊維の摂取でQOL高める
〜働く世代の37%が消化管症状を抱える(3000人規模調査)

2026年1月20日(火)、一般社団法人国際栄養食品協会(AIFN)主催による学術セミナー「第2回 最新研究で知る腸内革命の今(睡眠・ストレス編)」が開催された。この中から、内藤 裕二氏(京都府立医科大学大学院医学研究科 生体免疫栄養学講座 教授)による講演「ガットフレイルとQOL、睡眠相関」を取り上げる。

パーキンソン病、便秘と関連

ガットフレイルとは、「胃腸の働きの虚弱化」を示す、内藤氏が命名した新しい概念である。内藤氏は日本ガットフレイル会議を設立し、研究活動を行っている。 講演では、一般労働者3,000人を対象にしたアンケートで、ガットフレイルが睡眠障害や労働生産性に関与することを紹介した。

冒頭、内藤氏は次のように指摘。「私が医師になった頃、消化管の難病といわれる潰瘍性大腸炎やクローン病、パーキンソン病は非常に少なかった。しかし今ではパーキンソン病は日本で非常にポピュラーな病気になってきている」

パーキンソン病は、高齢化と共に発症しやすく、体の震えや筋肉のこわばりで手足が動かしにくくなるといった症状が特徴だ。パーキンソン病の6割ほどが、腸から発症する「ガットファースト・パーキンソン病」と考えられており、こうした神経難病を発症する患者は10年以上前から自律神経障害や便秘で悩んでいることが分かっている、と内藤氏。

パーキンソン病の患者の脳内をPET画像で見ると、ミクログリアといわれる細胞が活性化し炎症を起こしており、これが便秘と密接に関係している。早期パーキンソン病患者は、便秘のあるなしで脳内の炎症の程度が違うことが明らかになっている。

また、パーキンソン病患者の血液から特異的な炎症細胞を検出することができるが、中でもTH1やTH17といわれる細胞が便秘と共に増え、神経炎症と相関していることも分かっている。

つまり、脳内に炎症を起こす原因は「腸内にあるかもしれない」ということが分かってきている、と内藤氏。ガットフレイルに起因する病気に現代人は蝕まれつつあるという。


環境汚染物質もガットフレイルの要因に

ガットフレイルを引き起こす要因は腸内細菌や食べ物や運動要因や薬剤だけではない。環境要因も関与する。「毎日のように我々が、口から摂取しているマイクロプラスチックやPFAS(化学物質)、PM2.5のような環境汚染物質もガットフレイルの要因になっていることも最近分かってきている」と内藤氏。

ガットフレイルは今日本で多いCKDといわれる腎疾患の増悪因子にもなっている。また、心不全やサルコペニアやフレイル(加齢による心身の衰弱)とも関連してるということが分かってきている。

内藤氏らは、現状どれくらいの人々がガットフレイルで苦しんでいるか、3000人を対象にアンケート調査をした。調査は腸内細菌や睡眠、労働生産性やQOLを調べ、お腹の状態が悪いことが何に影響してるか解明するためのもので、対象は4対6と女性がやや多かった。

その結果、働く世代の11%が下痢で悩み、37%が消化管症状を抱えていることが分かった。つまり3人に1人以上がお腹の症状を抱え、プロバイオティクスや下剤を飲んだりしていることが分かった、と内藤氏。


ガットフレイル、睡眠や労働生産性に影響

また、普段からお腹の症状を抱えてる人々は睡眠障害を示唆するデータがあるが、こうした人々の労働生産性が低いことも分かっている。

これは会社にとっては非常にマイナスで、大体の試算で便秘の人を1人雇うだけで300万円ぐらい会社は損してるという計算が成り立つ。日本の社会は先進国で最下位に近いぐらい労働生産性が低いことが指摘されている、と内藤氏。

ちなみに、どのような症状が1番QOLに影響を与えるかという解析では、便秘が最も影響を与えていることが分かっている。便秘は、睡眠や労働生産性に影響を与えている可能性があり、調査の13.7%が深刻なガットフレイルで、QOLが低下していることが分かったという。


食物繊維、多く摂ると睡眠が改善

ガットフレイルの人々は「肉類や加工された果物が好き、芋類の摂取が多い」ということも分かってきたと内藤氏。一方、健康な人々はヨーグルト、コーヒー、大豆・大豆製品を摂取する傾向が見られたという。

内藤氏らは、2017年から長寿の秘密を探るコホート研究を行っているが、昨年はフレイル(加齢による心身の衰弱)においては食物繊維の摂取が重要であるとした。例えば、食物繊維の摂取が増えると睡眠が良くなるということもデータで明らかになった。

内藤氏らが食物繊維がフレイルと睡眠障害の間に何らかの媒介する関与があるのではないかと、メディエーション分析(媒介分析)を行った。その結果、食物繊維の摂取とフレイルの間には直接的な関連があるということも分かった。

食物繊維の摂取不足は何らかの原因でフレイルの増悪因子になり、食物繊維を多く摂ると睡眠が改善し、間接的にフレイルにも影響を及ぼすことが統計的にも明らかになったという。


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