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ゲノム編集魚、はたして安全でサステナブル(持続可能)か?
~ゲノム編集魚が商品化されているのは世界的にも日本だけ

2025年2月21日(金)、衆議院第1議員会館第5会議室にて「ゲノム編集魚は安全でサステナブルなのか~リージョナルフィッシュ社への公的支援のあり方を問う院内集会」が開催された。この中で、印鑰智哉氏(OKシードプロジェクト事務局長)や分子生物学者の河田昌東氏がゲノム編集魚の市況や問題点を報告した。

遺伝子組み換えサーモン開発の米国企業、株価暴落で経営破綻

「栄養価も食感も悪く、レストランでは全く売れなかった」。印鑰氏(OKシードプロジェクト事務局長)はそう語る。
遺伝子組み換えサーモンの開発で知られる米国アクアバウンティー社。サーモンが夏にしか大きくならないよう遺伝子を組み換えた。が、市場での評価がさんざんで株価は暴落、米国連邦議会からも公的資金の援助を拒否され、遂に経営破綻。2024年12月には事業の完全放棄を余儀なくされたという。

現在、日本では京都大に本社を置くリージョナルフィッシュ社が世界に先駆け、ゲノム編集魚の開発を進めている。しかしながら、同社もアクアバウンティー社と同じ轍を踏むことになりはしまいか。

リージョナルフィッシュ社は2019年4月に設立。当初社員15名で、京都大と近畿大による研究技術を用い、大学ベンチャーとして発足した。そして同年10月、日本政府がゲノム編集食品に表示の必要はなく届出さえすれば流通しても良いとした。

だが、「ゲノム編集食品は世界的に問題になっている。今EUがその議論をしているが、流通などとんでもないという人もすごく多い。流通するなら必ず表示しなければいけないと言っている」と印鑰氏。

2021年6月、同社は5系統のゲノム編集の魚を届出、現在これら全てが流通している。同年12月には、京都府宮津市のふるさと納税の返礼品にもなった。

ゲノム編集魚、ネット上で販売も高額のためほとんど売れていない

問題はゲノム編集食品の長期摂食による人体への影響だが、市場にはどれほど出回っているのか。「京都府宮津市にゲノム編集魚の養殖場がある。京都本社から今、九州全体あるいは他の地域へと全国に広がっている可能性が高い」と印鑰氏。

「実は今、ゲノム編集魚の養殖が日本全国に広がっている可能性があるがよく分からない。知る方法がない」(同氏)。ゲノム編集の養殖は水産省に届出するだけで良く、その実態がよく分からないという。

実際のゲノム編集魚の市況についてはどうか。
「若干先行したゲノム編集のトマトはいくつかのスーパーで売ってる。ゲノム編集の魚はスーパーで売ってないと思う。売っているのはオンライン上。宮津市のふるさと産物店で売っているゲノム編集のトラフグ焼きのセットは4パックで32,000円。高級食だが、筋肉の付き過ぎを抑制する遺伝子を壊しているため食感が違う。真鯛もちょっと違和感がある。普通の養殖より高い」。実際は、ふるさと納税の返礼品だが、高額のためほとんど売れていないようだと印鑰氏はいう。

ゲノム編集魚が商品化されているのは世界的にも日本だけ

なぜ、こうしたゲノム編集食品がEUをはじめ、世界的に敬遠されているのか。

「ゲノム編集の魚が商品化されているのは世界的にも日本だけ。マッスル真鯛、トラフグにヒラメ、九州大学で開発されている共食いサバもおそらく近いうちに商品化される」と分子生物学者の河田昌東氏(遺伝子操作食品を考える中部の会代表)はいう。

マッスル真鯛は筋肉隆々の鯛で、ゲノム編集により成長ホルモンを抑制するミオスタチンという物質を作る遺伝子を壊している。そのため成長ホルモンが抑制されずに働き続け筋肉隆々の鯛になる。これは京都大学が開発し、2021年5月に届出、近畿大学が養殖している。特徴的なのは、体長が20% 短いこと。

マッスル真鯛は成長ホルモンの抑制遺伝子が壊されるため成長ホルモンが作り続けられるが、通常よりもさらにたくさん作られるという問題があり得る、と河田氏。

ラットを使った論文に、ミオスタチン遺伝子を壊すとIGF-1が大量に作られるとある。ミオスタチンとIGF-1は相互作用がある。しかしながら、京大の論文ではIGF-1についてほとんど触れられていない、という 。

男性の前立腺がんや女性の乳がんが起こり得る

なぜIGF-1が問題か、というと発癌性があることが分かっているためだ。「IGF-1は、男性には前立腺がん、女性には乳がんを引き起こすことが定説になっている。遺伝子組み換えのシャケはアメリカでの生産を終えたが、シャケに成長ホルモンを一生作り続けるような遺伝子組み換えを行っていた。この安全審査の申請書をチェックしたところ、IGF-1がたくさん生じていることが分った」と河田氏。

小さい時だけ成長ホルモンが作られるはずが、ずっと作られるようになるため、どんどん大きくなる。これを食べ続けると乳がんや前立腺がんになる恐れがある。メスのマウスを使った実験でも、ミオスタチン遺伝子を壊すと筋肉がどんどん増殖され、1GF-1が異常な強さで働くという論文もある、という。

こうしたことがあるため、IGF-1が作り続けられているのか、あるいは量的にどうなのかということを、ちゃんとチェックする必要がある、と河田氏。

トラフグにヒラメ、ゲノム編集で自律神経失調症に

また、ゲノム編集されたトラフグとヒラメについてはレプチンの受容体を壊しているという。レプチンは脂肪細胞で作られ脳に作用する。ゲノム編集ではレプチンの受容体の遺伝子を壊しているため、レプチンが存在していても働かなくなる。

レプチンは脳細胞に働き、記憶力や行動力、血圧の調整などさまざまな体の機能に関わるが、特に自律神経の調節に大きな働きをする。「大雑把に言うと、レプチンが壊れた動物は自律神経失調症になる。人間でも大きな病気だが、魚にとっても重篤な病気と言ってよい」と河田氏。これが養殖区域で繁殖している分にはまだしも、台風などで環境中に逃げ出した場合、大きな問題になりかねない。

魚のメスは、大きなオスを求めて交尾し繁殖する。レプチンを壊したオスにメスが寄ってきて交尾し、受精卵を作る。結果、生まれた魚が環境に大きな影響を与えることが予想される、と河田氏。

ゲノム編集で共食いしないサバを開発中、サバ缶にも影響か

今、健康に良いということでサバ缶が流行っている。サバを養殖して安定供給したいということであろう。九州大学がゲノム編集で共食いしないサバを開発中である。サバは密触させると共食いする特性があるが、サバをプールの中で過密状態で繁殖させるとやはり共食いするようだ、と河田氏。

九州大はこれを共食い遺伝子(AVTRV1a2)と名付け、この遺伝子を壊す研究をしている。この共食い遺伝子は脳に働くが、これを壊したら密触しても共食いしなくなったという。

このAVTRV1a2遺伝子はストレス対応で働く。人も動物も魚も、細胞中に一定濃度の塩類があり、浸透圧で環境中と細胞の濃度のバランスをとっている。魚は塩濃度の違うところに行くと浸透圧を調整し、カリウムをたくさん取り入れたりナトリウムを排出したりする。AVTRV1a2はそうした遺伝子でもある。

この遺伝子を壊すと、環境中に放出された場合、違う塩濃度のところに行くと体内の浸透圧が調節できなくなる。魚にとっては大きな問題で、一定の塩濃度のプールで養殖している分にはいいが、やはり環境の問題も考えないといけない、と河田氏は指摘する。

ともあれ、ゲノム編集魚が大海へと放たれた世界、この未知数の領域への想像力が今、ゲノム編集食品の開発者に求められている。ゲノム編集魚、はたして安全でサステナブル(持続可能)なのか?


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