2022年7月22日(水)〜29日(金)、東京ビッグサイトにて「ウエルネスライフジャパン2022」が開催された。同展示会セミナーより、福田一生氏(潟Eェルファーマ代表取締役)の講演「CBDとウエルエイジング〜CBDの国内市場の動向と抗加齢医学の専門医からみる可能性」を取り上げる。
ここ数年、日本で認知とマーケットを広げているCBD(オイル)。興味を持つ健康関連企業や消費者多いが、CBDの原料の抽出元が「大麻」ということで懸念を抱く人も多い。
CBDに関わる国内の法律に「大麻取締法」がある。法律は1948年の敗戦時にGHQによって作られたものだが、1950年代まで日本では「大麻チンキ」という医薬品名で咳止めや痛み止めとして薬局で売られていた。
しかしその後、世界各国で大麻研究が進むにつれ、精神を高揚させる成分はTHC(テトラヒドロカンナビノール)であり、CBDには健康被害がないとWHOでも認めるようになった。
現在、日本の厚労省も「成熟した大麻草の茎または種から抽出されている」もので「THC(テトラヒドロカンナビノール)を含まないもの」であれば取り扱いに問題はないと許可している。
ただしCBDは加工品のため、どこから作られたか、本当に安全かどうかは見た目だけで判断できないという問題がある。
厚労省の抜き打ち検査で時にTHCが検出
時に、厚労省が製品への抜き打ち検査を行い、THCが検出されたという報道もある。今のところ刑事事件になった事例はないが、対象事業者は信頼を失い、大きな損失を抱えることにもなり兼ねない。
CBDを扱う場合、まずは厚労省が策定しているガイドラインを十分に理解し、原料はどこで・どの部位から・どのような企業や生産ラインによって抽出されているのかなど十分調査する必要がある。
またメーカーに関する書類とTHCが含まれていないことを第三者機関で調べて証明したものなどを使い、正しく手続きすることが必要となる。
国や事業者によって検査基準が異なっていたり、検査機器の中には粗悪なものもある。それが原因で自分たちでは基準をクリアしていると思っていてもTHCが検出されることもある。
CBD市場、2022年には3兆円超え
CBD市場については、世界では2018年で650億円であったが、2021年は2兆円、2022年には3兆円を超えることがほぼ確定、36倍と市場を大きく伸ばしている。
さらに2028年は9兆円マーケットになることが予測され、世界中でニーズが高まっていることは間違いない。
現在は北米市場が最大で、ヨーロッパ、タイなどが追っている。日本は、2019年40億円のマーケットであったが、2020年は100億円、2021年は230億円、2024年では880億円を突破することが予測されている。
「大麻方」の法改正が思ったより早く進みそうで、法改正が正式になったら、市場は加速度的に拡大しそうだ、と福田氏。
法改正で機能性表示食品や医薬品の登場も
現在CBDはどちらかというと健康意識の高い人が利用し、伊勢丹、楽天、コスメキッチン、アマゾンなどで販路が拡大している。
すでに楽天だけで月に10億以上売り上げているが、アマゾンも今年の5月から日本での販売を解禁した。アマゾンの本国アメリカでも実は解禁されていないのに、日本で先駆け解禁されたのは日本市場への期待が高いからではないか、と福田氏。
CBD製品としては食品(リキッドオイルやグミなど)、サプリメント、喫煙具(ベイプ)がよく売れているという。
実はCBDは化粧品としても相性が良いが、開発や臨床に時間がかかるため現時点では後発となっている。しかしリップクリームやスカルプケア商品、マッサージオイル、スポーツケアなど徐々に広がっている。
法改正が実現すれば、機能性表示食品や医薬品が登場することは間違いない。現時点でヒト臨床試験がほとんど行われていないが、近い将来有効なデータが取れれば機能性表示は確実になりそうだ、と福田氏。
「医療大麻」解禁や国産大麻の栽培も
法改正についてはすでに数回有識者会議が行われ、2022年の9月にも会議で「大麻全体ではなく成分ごとに規制していく」という動きがありそうだ、と福田氏。
大麻取締法の部位規制を廃止し、THCだけを規制物質として制限し、THCの使用罪を設ける(どれくらいの仕様で罪となるか、ヨーロッパの厳しい基準値を元にすることを検討)などして、有効成分であるCBD等の大麻抽出物については、医療分野を含め利用拡大を認める方向で法律が整備されることが見込まれる。
さらに大麻栽培やTHC検査のためのルール作り。これらが近い将来実現すれば、以前から期待されている「医療大麻」の解禁はもちろん、国産大麻が栽培できるようになる可能性もある。
例えば建築の外装素材やアパレル繊維としても活用される可能性がある。何より法改正が実現すれば、規制緩和が進み大手企業の参入が確実になり価格競争(価格の低下)と市場拡大が期待できる。
大手企業が参入すれば、リラックスドリンクやエナジードリンク、スナック類など一般食品への利用が始まり、CBDの認知と普及はさらに加速する。
今は比較的高額であるが、リーズナブルな一般商品に変わっていくであろう。医療では特に「禁煙外来」や「アンチエイジング」「睡眠」「心療」「認知」の分野での使用が期待される。
日本はストレス社会なので、そもそもCBDとは相性が良い。しかも日本では戦前大麻は広く活用されていた実績もある。法改正も良い方向で動いているため、今後のCBD市場の成長を楽しみにして欲しいとまとめた。