AGEsの増加、ライフスタイルと密接に関係
新型コロナウイルスパンデミックにより消費者や市場にはどのような変化があったのか。この2年間の市場の変化を「糖化」という観点から八木氏は解説。
日本生活習慣病予防協会により、2021年5月に「コロナ禍における生活習慣と健康状態の変化に関する調査(全国の20歳から69歳の男女3000人の調査)」が行われた。
それによると「外出時間の減少」や「ストレス過多」「運動不足」「歩数の減少」などが懸念された。
また同協会が行った健康診断などを行う内科医に行った調査によると、「健康診断や人間ドックでヘモグロビンA1c、 BMI値、中性脂肪血糖値などの数値は全体的に悪化している」と報告。ストレスや運動不足、カロリー摂取過多などが、コロナにより増大しているという。
糖化で最も問題となる「AGEs」の増加は、ライフスタイルと密接に関係している。飲酒習慣が週4日以上、睡眠時間が6時間以下で、AGEsは増加することはコロナ前から分かっているが、コロナ禍の生活はAGEsを増大させる=糖化をすすめる生活、といっても過言ではない、と八木氏。
糖化ストレス対策の機能性表示食品、現在11品目が受理
コロナ禍の生活が2年目となる本年(2021年)の消費調査では、栄養食品やプロテイン粉末、血圧計などの消費が伸びており、消費者の意識が少しずつ変化していることが確認できる。しかし残念ながらその中に糖化ストレスケアのものは多くは見当たらない、と八木氏。
八木氏らの研究チームは、コロナ以前から「抗糖化」という概念を世の中に普及させようとさまざまな活動を行ってきた。
「抗糖化」という言葉は薬機法に抵触する可能性があり、現在は「糖化ケア」という言葉に統一し「糖化ストレスの抑制」を普及させていく活動している。
ちなみに、糖化ストレス抑制の方法は以下の4つ。
1、食後高血糖を抑制する
2、糖化反応を抑制する
3、生成したAGEsの分解を促進させ排泄も促進させる
4、食品由来Age ESの吸収を抑制させる
糖化ストレス対策の機能性表示食品は現在11品目受理されている。現時点でのヘルスクレームは「糖化ストレスを軽減して肌の潤いを保持する」だが「肌の弾力を維持する機能」など新たなヘルスクレームの可能性が期待されている。
ちなみにこれらの機能性関与成分はマンゴスチンエキス、トマト由来成分など。他にも市場で糖化ストレスケアのニーズは拡大傾向にあるという。
AGEs、白髪や脱毛の原因になる可能性
髪の老化と糖化の関係は近年明らかになってきている。女性が髪の老化を強く実感しはじめるのは40代から体内のAGEsは明らかに増えている。
毛髪中のAGEs量を測定すると特に先端部や頭頂部にAGEsは多く蓄積し、AGEs毛先のパサツキや枝毛だけでなく、毛乳頭細胞などの活性酸素増大や炎症の引き金となり、毛周期を乱すことで白髪や脱毛の原因になる可能性があるという。
AGEsは、見た目の老化(肌老化)だけでなく、体内にも蓄積し弾性繊維の硬化、骨粗しょう症、関節症、糖尿病合併症、不妊、動脈硬化、認知症などの原因になることはよく知られている。
そのため血糖値の上昇を抑えAGEsの発生を抑制する「食べ方」が推奨される。代表的なものに「ベジファースト」がありブームにもなった。
ここ数年、野菜だけではなく主食である炭水化物には「タンパク質」をうまく組み合わせることでベジファースト以外でも食後血糖値の抑制に効果があることが分かってきている。
八木氏らの研究によると、例えばヨーグルトファースト(200gのプレーンヨーグルト)は乳酸やホエイペプチドによって血糖値の上昇が遅延されることが報告されている。
また、レモンファースト(レモン果汁15〜30g)はクエン酸の効果で食後血糖値の上昇が抑制されることもわかってきている。
発酵食品、血糖値の上昇を抑える
他にも、ご飯だけを食べるより25グラムの牛肉と合わせ牛丼にした方が血糖値の上昇を抑制されること、うどんもかけうどんを食べるより「温泉卵トッピング」や「サラダうどん」にすることで、食後血糖値の上昇が素うどんよりも緩やかであることが分かってきている。
やはり「食べ合わせる食品の栄養成分(特に酸、タンパク質、食物繊維、脂質)」が重要だ、と八木氏。
さらに、発酵食品が血糖値の上昇を抑えるのに有効であることはすでに知られているが、和食の肝である「出汁」にも食後血糖値の上昇抑制効果、AGEs抑制作用がることが確認できているという。
カルボナーラ、ステーキ、ピザなどの加熱加工食品にはAGEsが多いとされているが、実際に測定すると、例えばクッキーとクラッカーでは意外にもクラッカーの方にAGEsが多いなど、必ずしも推定される通りではない結果も出ており、調理方法や食べ方の工夫でAGEsは減らせる可能性が高いことが分かってきている。
今後、糖化ケアは「疾病予防」だけでなく「健康対策」「美容対策」としてより身近なものになっていくのではないか、と八木氏はまとめた。