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新型コロナウイルス感染予防と治療のための栄養療法
〜国際オーソモレキュラー医学会、ビタミンC、D、亜鉛など推奨

2020年3月3日(火)、国際オーソモレキュラー医学会は「新型コロナウイルスに関する報道関係者向け説明会」を開催。柳沢 厚夫氏(国際オーソモレキュラー医学会会長)が「新型コロナウイルス感染予防と治療のための栄養療法」と題して講演した。

栄養素を分子レベルで投与、病気を予防・治療

1994年に設立された「オーソモレキュラー医学会」はカナダのトロントに本部を置き、現在22カ国が参加している。現在3代目となる会長は柳沢氏が務めている。日本の会員数は1200名で、主に医師・看護師などのヘルスケア従事者が参加している。

オーソモレキュラー医学とは「人間の体の中に自然に存在するビタミン・ミネラル・アミノ酸などの適切な栄養素を分子レベルで最適な量を投与し、病気の予防や治療をする医学である」と柳沢氏。

「オーソモレキュラー」は、ノーベル平和賞を2回受賞したライナス・ポーリング博士(米国)が1968年に提唱した、ギリシャ語の「Ortho(正しい)」と「Molecular(分子)」という単語を組み合わせた造語である。オーソモレキュラー医学では、単なる健康維持ではなく病気の予防や治療を積極的に行う栄養医学を目指している。

オーソモレキュラー医学会、新型コロナウイルスに関する声明を発表

現在世界中で問題になっている新型コロナウイルスについては、有効なワクチンや抗ウイルス製剤が現時点で承認されていない。そのため、「うがい・手洗い・外出を控える」が予防や感染拡大防止の基本となっている。

現状、無症状の人から重症の人まで幅広く、特に高齢者や基礎疾患のある人は重篤な状況に陥りやすく、発症は個々の免疫力にかかっているとされている。

そうした中、オーソモレキュラー医学会では新型コロナウイルスに関する声明を発表した。アンドリュー・ソウル編集長を中心に、世界中から42人の栄養療法の専門家である編集委員に情報収集や記事作成を依頼、集まった情報や記事を全編集委員で推敲、24〜44時間で全世界に配信している。

ビタミンCを3g以上、ビタミンD3を2000IU、亜鉛20mg、セレン100μg、マグネシウム400mgを推奨

柳沢氏は1月26日に配信した記事「ビタミンCがコロナウイルス感染を防ぐ」を紹介。感染予防と重症化を防ぐためのサプリメントや推奨量として、「ビタミンC3g以上、ビタミンD3を2000IU(1日5000IUでスタートし3週目から2000IUに減量)、亜鉛20mg、セレン100μg、マグネシウム400mg」とした。

摂取目安量の根拠について、ビタミンCは、「1gを1時間ごとに6回、以後1日3回投与することで風邪とインフルエンザの症状が緩和。また、ビタミンC1gを1日3回投与することで症状の予防ができた」という1996年に出された論文に基づいているとした。

ビタミンD3(1日5000IUでスタート、3週目から2000IUに減量を推奨)については、慈恵医大の分子疫学研究室の浦島教授の研究で「ビタミンDにはA型インフルエンザの罹患率を減少させる作用がある」(2010年論文)とした。

他にも、米国のエール大学で行われた「血清ビタミンDとウイルス性上気道感染症の発生率の調査」などから、血中のビタミンD濃度が38ng/ml程度あることが大切ということが解明されているとした。

一般的な成人の血中にビタミンDがどの程度あるのか調べたところ(慶應義塾大学医学部付属病院の女性勤務者571名の血清ビタミンD測定値)、日照時間が長い夏の後でもビタミンDが正常値である成人女性は30%以下で、70%以上にビタミンDの低下や欠乏が見られたという。

ちなみにビタミンDは紫外線を浴びることで生成される。食品ではキノコ類や魚類の内蔵に含まれている。新型コロナウイルスが北海道でオーバーシュートしたこととビタミンDの血中濃度の関係も示唆されている。ちなみにビタミンD2000IUは50μgに相当する。

マグネシウムとセレン、細胞内のさまざまな代謝に深く関わり、健康な免疫機能を維持

亜鉛の摂取目安量は1日20mgだが、日本人の子供、老人、女性で亜鉛の摂取量が減少していることが指摘されている。亜鉛も免疫に関わる重要な微量栄養素で、フランスの2つのクリニックで、感冒で来日した患者に「プラセボ」もしくは「ビタミンC1g +亜鉛10mg」を5日投与したところ、投与群で優位な症状早期改善が認められたことが報告されている。

また、マグネシウムとセレンは細胞内のさまざまな代謝に深く関わり、健康な免疫機能を維持する、また抗炎症にも必須の栄養素である。

こうした栄養素を推奨目安量、通常の食事から摂取することができるかについて。ビタミンCについては3g/日はレモン30個、またはパプリカ20個に相当する。そのためサプリメントの摂取が望ましい、と柳沢氏。

ビタミンDの125μg/日は紅鮭(切り身大)4切れ→50μg/日継続1.5切れに相当する。また冬でも太陽を1時間浴びることや、キノコ類など様々な食材で補うことである程度カバーできる可能性がある。

亜鉛は牡蠣のむき身2個、セレンはマグロ切り身5切れ、マグネシウムは納豆8パックに相当するが、納豆だけでなくさまざまな豆類、イモ類、カカオなどにも含まれているのでバランス良い食事でカバーできる可能性が十分ある。

理想的な献立例としては、朝食に焼き鮭・納豆・青菜のおひたし・油揚げの味噌汁・ごはん、昼食にマグロの刺身定食、夕食に牡蠣鍋、そしてビタミンCのみサプリメントで補充するのが良い。またこれに海藻類を足すことで、良好な腸内フローラの育成にも役立つ。

インフルエンザや肺炎などあらゆるウイルスにビタミンCは有効

さらに、「医療機関に入院した場合のコロナウイルスおよび関連疾患へのビタミン C 点滴療法について」で、ビタミン C はある程度大量に投与することによってコロナウイルス重症者を助けることができるであろう、ということ。

オーソモレキュラー学会では、従来の基本治療に加え高濃度ビタミンC点滴とサプリメントの投与を推奨している。具体的に軽症者にはビタミンC点滴12.5g、重症者には25gのビタミンC点滴を行う。

これは2017年に発表されたビタミンC投与に関する論文に「重症の敗血症患者の院内死亡率は40.4%だが、これにビタミンC6gを併用することで死亡率が8.5%と1/4以下にまで低下する」というものがあり、すでに米国ではこの療法に関する臨床試験が行われている。

また、中国の武漢大学付属中南病院では、新型コロナウイルスによる重症肺炎患者の治療に1日24gのビタミンC点滴を併用する試験を開始していて、実際に回復例も確認されたという。

ビタミンC摂取の有効性については「証明されていない」という意見もあるが、新型コロナウイルスは「新型」であるためビタミンCだけでなくまだ何も証明されていない。ただウイルスである以上、これまでの経験で対応できる部分もある。

これまでの経験とは「インフルエンザや肺炎などあらゆるウイルスにビタミンCは有効だ」ということ。

先が見えない感染拡大状況の中、「安全な栄養療法」を取り入れる

もちろんビタミンCはCOVID19を治すわけではない。しかし、ビタミンCは免疫システムをサポートし、高め、感染症状を緩和し、重症度を下げることに役立つ。

「手洗い・うがい・外出を控える」ことに加え、安全な栄養療法を加えることで健康レベルを高く保つことを心がける必要がある。具体的には、少なくとも1日3gのビタミンCを何度かに分けて摂取すること、と柳沢氏。

会場からは「ビタミンCの摂取について、普通の食事から摂れない量をあえて摂取することが本当に健康に良いのか疑問」という質問が上がったが、これに対し柳沢氏は「人間と猿以外の動物は体内でビタミンCを大量に作れるシステムを持っている。

人間もオーガニックな食事と十分な睡眠とストレスフリーな生活ができるのであれば、普通の食事から摂取できる量でカバーできると思うが、そうではない以上サプリメントで補うというのは選択肢の一つではないか」と回答した。

先が見えない感染拡大状況を鑑みると、「うがい・手洗い・外出を控える」に加え、「安全な栄養療法」を取り入れるという選択肢を加える必要があるとした。


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