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医療費削減なるか、加工食品の栄養表示義務化
〜2020年3月末迄に加工食品の栄養表示を

2018年10月30日(火)、中央区月島社会教育会館にて「第29回 食と環境のセミナー」が開催された。この中から、迫 和子(公益社団法人日本栄養士会 専務理事)の講演「義務表示となった栄養成分表示のポイント!」を取り上げる。

介護が必要になる要因、5割が「認知症・衰弱・骨折による転倒」

2020年3月31日までに食品表示法における新制度での栄養表示を行わなければならない。食品関連事業所は今から後1年5ヶ月で栄養表示の義務化に対応しなければならないことになる。

この制度の施行により、事業所にどんなメリットがあるのか、短期的にではなく、現在の準備期間も含め、少し時間をかけながら制度の実現と育成に力を注いでほしい、と迫氏。

まずはこの制度がどれだけ社会の役に立つものであるか。俗に「2025年問題」といわれるが、団塊世代が後期高齢者になると、日本の医療費はますます逼迫することが予測される。

介護が必要になる要因の3割が生活習慣病、5割が「認知症・衰弱・骨折による転倒」、つまり8割が「食習慣」によって改善できるものである。

しかし国民の多くが、自分がどんな食品をどれだけ食べればいいかわかっていないし、どんな栄養が足りていないか、どんな栄養が過剰になっているかにもほとんど気をつけていない。その理由の背景に加工食品の普及があると迫氏は指摘する。

透析患者、一人出ると自治体維持の存続に大きく関わる

生鮮食品であれば、見ただけでどんな栄養素がどのくらいの量摂取できるのかは概ね見当はつく。しかし加工食品の場合それが難しい。

ライフスタイルの変化により、生鮮食品と比較しても加工食品のニーズは極めて高い。加工食品の利便性やニーズは今後、少子高齢化社会が進みますます求められるであろう。

加工食品が国民の健康維持増進に果たす役割は極めて大きい。しかし国民はその加工食品からどのような栄養素がどれくらい摂取できるのかについて、現在の表示方法では理解できない。この現状を改善するために栄養成分表示の義務化が行われるのと迫氏。

医療費の問題で付け加えると、予備軍も含め2000万人を超えるとされる糖尿病の医療費については頭に入れてほしいと解説。糖尿病になっても、投薬は行わず食事療法と運動療法指導だけであれば医療費は年間約15万円程度(自己負担額は4万5000円)、もし薬が1種類追加されたら年間約32万円(自己負担額は9万円)となる。

そしてインスリン注射が始まると年間約44万円(自己負担額は13万2000円)、そして、人工透析が加わると急激に医療費は跳ね上がり年間の医療費は約500万を突破する。

しかし高額療養制度が活用できるため、自己負担額は12万円程度で済む。1人500万円(年間)もの医療費を負担しなければいけない医療保険、また小さい地方自治体は透析患者が一人出るか出ないかが、制度や自治体維持の存続に大きく関わる。

栄養表示は「わかりやすく・読みやすく・丁寧に」

糖尿病になりいきなり透析になることはほとんどなく、最初は食事管理が肝要だ。すると糖尿病初期や予備軍の人、全く関係な人にとって栄養成分表示は非常に大切な役割を果たす。

栄養表示は「わかりやすく・読みやすく・丁寧に」行うことが必須で、消費者が「正しい選択」をできるよう、そしてその結果「企業も潤う」ように行われるべきだ、と迫氏。

栄養成分表示のガイドラインでは対象商品を「容器包装に入れられた一般用の加工食品と添加物」としている。さらに「邦文を持って、読みやすく、理解しやすいように、正確に行う」ことを明記している。

また容器包装を開かなくても見れるように、見やすい場所に8ポイント以上の大きさで、また背景の色と対照的な色で記載するようになど細かい指示が掲載されている。まずはガイドラインを読み込み理解しすることが大切だ、と迫氏。

「値段より表示を見て」食品購入を

実際の表示値を得るには分析、または計算、参照などの手法をとる必要がある。いずれの方法でも、表示された含有量に合理的な根拠があることが大切で、そのためにも公的なデータベースから原料の栄養成分値を入手し、その食品の栄養成分を算出したり、または信頼できる分析機関に分析を依頼するなどしなければならない。

まだ、制度が開始された後、その表示が正しいかどうかのチェックをどのように行っていくかについては検討中の部分や課題も多いが、いずれにせよ消費者庁や地方自治体によって、表示の追跡調査は行う予定で、違反や表示ミスがあれば必ず行政指導が入るだろう、と迫氏。

新制度を理解し、正しく表示を行うのは容易ではない。しかし、ここ数年でようやく「値段より表示を見て食品を購入する」という消費者も増えている。

消費者のニーズに応え、消費者が自分の健康維持増進に必要な食品を選択できるように、またそれによって企業が潤うように、この制度をうまく活用して欲しいとまとめた。

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