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機能性表示食品が1年で300、数年でトクホ超えも
2016年市場、1,000億円を超えの前年比327%予測

2015年4月、健康食品の機能性をラベルに表示できる制度が誕生した。1994年に米国で施行されたダイエタリーサプリメント制度を参考にしたもので、米国とは20年の開きがあるが、米国はこれにより店販での売り上げが急増し、通販市場に迫った。はたして日本でも同様の現象がみられるのか。2016年10月20日(木)、大田区産業プラザで、「ケアメディカル産業展2016」が開催され、同展示会セミナーで、中澤 忠之氏(薬事法ドットコム)が機能性表示食品制度の現況を語った。

米国では健食市場急伸も、医薬品との相互作用問題で失速

現在、日本の健康食品の市場規模は1兆5千億〜2億円といわれている。

昔から、通販チャネルが強い分野だが今もおよそ通販が70%、店頭が30%とその比率はほぼ変わっていない。

ネットの普及で、通販チャネルは今後もさらに伸張が予想され、店頭は苦戦を強いられるとみられている。

そうした中、昨年4月に機能性表示制度がスタートし、さまざまなヘルスクレーム(健康強調表示)のラベル表記が可能となった。これにより、店頭での接客の際の説得話法に幅ができ、店頭販売にも弾みがついた。

この機能性表示制度は、1994年施行の米国のダイエタリーサプリメント制度を参考にしている。米国では、この制度により、それまで市場規模の大半を通販が占めていたが、そこに店販が急速に迫っていった。

米国の健康食品業界は毎年2ケタ台の伸びで、ハーブ・サプリメントの売り上げのみならず、そうしたものを利用した栄養療法やカイロ、鍼灸、アロマテラピーといった代替医療も脚光を浴び、一大ムーブメントとなった。

米国がこうした制度を施行したその背景には年々高騰する医療費を抑えたいという思惑があった。NIH(米国立衛生研究所)でも、代替医療のエビデンス検証に本格的に乗り出し、とくにガーリックやセント・ジョンズ・ワートなどハーブ・サプリメントの有用性の徹底検証を行い、国民の健康管理に利用するという機運が高まっていった。

ただ、その一方で問題視されたのが、医薬品との相互作用。患者が治療の際に医師に使用している健康食品を告げない、あるいは医師サイドが健康食品の知識が十分でないといったこともあり、医薬品と併用した際の副作用の問題が持ち上がってきた。

健康食品市場が急拡大する一方で、こうしたことを懸念する声が医療サイドから挙がってきた。それにより、健康食品市場の伸びが鈍化するということがあった。

また、急伸する健康食品市場を横目に、医薬品業界は安価な健康食品の利用で医薬品マーケットが縮小することに頭を痛め、 とくに当時、急伸していた天然の抗鬱剤といわれたセント・ジョンズ・ワートを槍玉に挙げ、抗HIVや避妊薬との相互作用の問題を指摘した。

こうしたことから、一気に急伸した健康食品市場も失速状態に至った。はたして、日本の店販、健康食品市場もこうした経過を辿らないかという懸念がある。

日本の健食市場で、店販が通販を抜く日

実際のところ、日本の機能性表示食品の市場動向はどうなのか。

昨年6月に機能性表示食品の第1号商品が発売され、昨年の12月までの約半年で市場は約306億円まで伸びたといわれている(生鮮食品除く93品の調査)。

機能性表示食品の登場は、店販市場の拡大に弾みをつけた恰好だが、それでもまだ、通販市場には遠くおよばない。

中澤氏によると、これまで健康食品の販売においては、薬事法以外に、景表法でも不当なものの虚偽広告が取り締まられてきた。

この景表法の取り締まりが、ここ数年厳しくなった。もちろん、きちんとしたエビデンスがある内容であれば景表法で引っかかることはほとんどないが、そうした流れが機能性表示食品制度の誕生につながったという。

ちなみにトクホはスタートから25年経過し、約1250以上の商品が登録されている。しかし機能性表示食品はスタートから1年でゆうに300を超えており、あと数年でトクホを抜くのは間違いないとみられているという。

ところで、日本の機能性表示食品制度は、先述したように、1994年に米国で施行されたDSHEA法(健康栄養教育法案)を参考にしている。

日本の健康食品は通販チャネルが7割を占めるが、米国もDSHEA法が施行される前はほぼ同様の状況であった。

しかしその後、店販が通販の市場規模を上回り、さらに米国の健康食品市場は年間5兆円規模までに拡大した。

日本の機能性表示食品制度と米国のDSHEA制度は非常によく似ていることもあり、今後日本も米国と同様、店販が通販を抜くことも十分あり得る、と中澤氏はいう。

とはいえ、すでにネットでの購入に慣れた消費者が店頭に大挙するということも考えにくい。大幅値引きなどの訴求でネット通販に対抗する以外にやはり手はないという現実があるのも確かである。

2016年機能性表示食品市場、1,000億円を超えの前年比327%予測

また、2016年10月5日〜7日に開催された「食品開発展2016」のセミナーでは、機能性表示食品市場の動向について、兜x士経済より説明があったが、 健康食品市場は昨年2兆1529億円規模となり、機能性表示食品の占める割合は1.4%という。

ちなみに、今年1年で商品も200商品以上販売されるとされ、2016年の機能性表示食品の市場規模は1,000億円を超える見込みで前年比327%が予測されている。

トクホ商品はスタートから25年経過しているが、昨年の市場が3826億円で2016年もほぼ横ばいとみられている。商品数は1000以上になり、健康食品市場の17.9% を占めている。機能性表示食品は20年も待たずして、遠くない将来この商品数、市場規模に匹敵するものになると予測されている。

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