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遺伝子組み換え食品、機能性表示食品の現状
「食」の安全・安心、機能性表示認可の今

2016年5月27日(金)、東京テクニカルカレッジで、「第20回 TTCバイオカフェ」が開催された。 この中で、遺伝子組み換え食品の認可状況が報告された。近年、「食」については機能性表示についても話題になっている。「食」の安全・安心、そして「食」に期待される機能性。その表示認可の現状とは。

自然交配による理想の作物、育種に10年かかる

遺伝子組み換え作物(GM作物)が登場したのが1995年。日本に入って10年以上が経過する。 世界人口の急増や気候変動に備えて「持続可能な農業生産」を謳い、効率の良い品種改良で、食糧の増産・確保を目指した。

そうしたGM作物の現状について、小松 晃氏(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能研究部門)が「伝子組み換え作物が国内に入り10年以上が過ぎた現在の状況、そしてこれからどうなるの?」をテーマに講演した。

GM作物は自然交配ではなく、いわゆる人為的な遺伝子の書き換えを行う育種である。利点は、種の交配による品種改良は大変な時間とコストがかかるが、それを大幅に短縮できること。

例えば、「美味しく、形がよく、病気に強いトマト」を品種Aと品種Bの交配から作ろうとすると、交配を数万回繰り返した末、10年ほどかけてようやく理想のトマトになる。

これまでの交配による育種では、目的とする作物を作るのに膨大な時間と労力を要する。これを短時日で行う方法として「遺伝子組み換え技術」が生み出された。

ただし、これまでにない、例えば、小麦の遺伝子を米に組み込むといった、人為的交配であったことから、長期摂食における安全性、アレルギーや毒性の問題などが長らく議論の的となってきた。

また、遺伝子組み換え作物と雑草の交配により枯れない雑草が繁殖する可能性、野生種と無差別に交雑した場合の環境への悪影響、組み替え飼料を食べた家畜由来の食品による健康被害の可能性、なども指摘されてきた。

悪影響が証明された事例は一つもない

そうした懸念もあるが、日本では、一つ一つの組み換え作物が、多様性への影響や安全性が100以上のチェック項目によって評価され、そうしたものしか使用(栽培)が認められていない。当然、健康に影響を与えるようなものは認可されていない。

さらに、「食品安全基本法」や「食品衛生法」、「飼料安全法」などで、食品としての安全性が厳格に管理されているという。

現在、国内で使用が承認されている遺伝子組み換え農作物で、隔離ほ場で栽培実験が行われたものはイネ、トウモロコシ、ダイズ、ワタ、セイヨウナタネ、テンサイ、アルファルファ、カーネーション、クリーピングベントグラス、バラの10作物、合計88件のみ。使用が承認されたものはクリーピングベントグラスを除く9作物157品種。このうち日本で商業栽培されているのは「バラ」のみである。

一方、食品として承認されているのは、トウモロコシ、ダイズ、ワタ、セイヨウナタネ、テンサイ、アルファルファ、ジャガイモ、パパイヤの8作物304品種。安全性の管理は非常に厳格で、むしろ自然の作物より安全性に優れているといえるレベルではないか、という。

この10年、世界各国で遺伝子組み換え農作物の栽培地は急速に拡大している。1998年の時点では8カ国しか栽培されていなかったが、2015年には28カ国にまで増えている。

基本的に、国内において遺伝子組み換え作物は必要で有益なものしか開発実用化されていない。また安全性が確認されたものしか市場には出ていない。これまで市場に出ている組換え作物で悪影響が証明された事例は一つもない、とした。

新たに表示認可、「便通を改善し、腸内環境を整える」など

GM作物と共に、「食」にまつわる話題では、近年「健康食品」の機能性表示が議論されている。

2016年5月31日(火)、日本橋社会教育会館で、第90回「食と環境のセミナー」が開催され、この中で、内藤 瑞恵氏(消費者庁食品表示企画課 課長補佐)が「機能性表示食品の表示と現状について」と題して講演した。

1994年に米国で、サプリメントへの機能性表示を許可したDSHEA法(栄養補助食品・教育法案)が成立した。これを参考に、日本でも機能性が認められる健康食品のラベルに機能性表示が認可されるという制度がスタートしたのが2015年6月。

制度開始から1年経った、2016年5月31日時点の機能性表示食品の届出状況については、公表件数308件、うちサプリメント形状の加工食品が145件、その他加工食品が160件、生鮮食品が3件。このうち東京、大阪、愛知の3都道府県で204件を占めているという。

機能性表示制度によって新たに表示可能となったものは、
「内臓脂肪をはじめとし体脂肪を減らす機能がある」
「便通を改善し、腸内環境を整える機能がある」
「血圧低下作用があり、血圧が高めの方に適した機能がある」
「手元のピント調整機能を助ける機能がある」
「肌の潤いに役立つ機能がある」
「丈夫な骨を維持する機能がある」
「膝関節の曲げ伸ばしを助ける機能がある」など。

一方、不適切な表示例として指摘されているのは、「明らかに疾病の予防に当たる」もの。
例えば、「動脈硬化を防ぐ」「骨粗鬆症を予防する」「インフルエンザを予防する」「血液をサラサラにする」「低下した肝機能を改善する」など。

他にも、健康の維持と増進を超えた表現。例えば、「皮膚、爪、髪が丈夫で美しくなる」「朝食べれば夕食までの摂取カロリーを抑える」といったもの。当然、科学的根拠に基づかない機能性の説明もNGである。

この1年、機能性表示を希望する事業者側に、新制度のルールがだいぶ浸透してきている。そうした手応えを消費者庁サイドでは感じているという。

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