腸内細菌叢が乱れるとホルモンバランスが崩れる
ヒトの腸内には1,000種類、100兆個以上の腸内細菌が住んでいるといわれている。
腸内細菌はビフィズス菌などの善玉菌、大腸菌などの悪玉菌、善玉にも悪玉にも変わる日和見菌の3種類があり、そのバランスは2:1:7。この腸内細菌のバランスが崩れると、さまざまな疾患の引き金になるとされている。
腸内細菌を崩す一番の原因は食事。脂肪分の多く食物繊維の不足した食事は腸内細菌叢を乱す。他にも、運動不足や抗生物質の投与、過度なストレス、加齢などが腸内細菌叢を乱す原因となる。
腸は、食物の消化吸収や排泄、ホルモン分泌を行っており、食事をすると腸管ホルモンのインクレチンが膵臓に届き、その刺激により膵臓からインスリンが放出される。また食欲を抑えるホルモンYKKが分泌され、脳に届くと満腹感を感じる。
こうしたメカニズムも、腸内細菌叢が乱れると、ホルモンバランスも崩れ、その結果、糖尿病や肥満を招きやすくなる。
人工甘味料、腸内細菌のバランスを乱す
実際に、糖尿病になったマウスの腸内細菌は悪玉菌が多く、そうしたマウスの腸内細菌叢を正常マウスの腸内に移植すると、正常なマウスも次第に糖尿病になることが報告されている。またその逆もあり、将来的にこの手法がヒトでも使われる可能性もあるとされている。
糖尿病治療は食事制限が基本で、カロリー制限のため人工甘味料を使うことも多い。しかし、この人工甘味料が逆に腸内細菌のバランスを乱すことが近年の研究で明らかになっている。そのため、とくに糖尿病患者は人工甘味料を避けた方がよいことが指摘されている。
ふだんの食事では、食物繊維や発酵食品を多く摂ること。また適切な運動も大切で、そうした食事と運動の規則正しい生活を続けていると、4週間ほどで腸内環境は良くなるといわれる。
玄米は食物繊維が多く含まれ、糖尿病治療に有用とされる。玄米には微量元素のクロミウム(クロム)も多く含まれる。糖尿病に関する最新の研究で、クロミウムピコリネートが血糖値管理に有望と、Journal of Trace Elements in Medicine and Biology誌2015.9月号が報じている。
Federal University of Rio Grande do Norte研究チームによるもので、2型糖尿病患者71人を対象に、クロミウムピコリネート投与群(600マイクログラム/日)か、プラセボ投与群に分けた。
4カ月後、クロミウムピコリネート群はプラセボ群に比べ、空腹時のグルコース(ブドウ糖)濃度が有意に低下していた。また、食後のグルコース(ブドウ糖)濃度もクロミウムピコリネート群は有意に低下していたことが分かったという。
また、Nutrition, Metabolism and Cardiovascular誌2015.5月号が、カロチノイド色素は2型糖尿病リスク低下に有用と報じている。
カロチノイド色素は緑黄色野菜に多く含まれるが、University Medical Center Utrecht、Dutch National Institute for Public Health and the Environment研究チームが、37,846人のデータを分析したところ、ベータカロチンの摂取増により糖尿病リスクが22%減少することが分かったという。