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戦前の日本人の優秀性、未精製米の賜物か
玄米の効用、今秋より実態調査をスタート

2015年7月26日、アルカディア市ヶ谷で日本綜合医学会主催の第一回東京講演会が開催された。教育と食養が日本を救う、というテーマで、中山尚夫氏(市立伊勢綜合病院 医師)らが講演。「日本精神と食養の支柱」について、各講師が和食の効用について語った。

食育の前に正しい「食養」を

近年、「食育」という言葉がよく使われるようになったが、やはりその本質は「食養」というものに帰一するであろう。正しい「食養」こそ、講演会のテーマである、日本精神を育むもととなる。

講演で、中山尚夫氏は、日本人が伝統的に摂ってきた、穀物や大豆、魚、緑茶といった食材の健康効果について挙げた。

日本人の主食である穀物は、近年、「炭水化物は糖化をもたらし、老化を促す」と喧伝され、糖質制限が流行ったが、中山氏は、糖質制限食は死亡リスクを有意に増加させると指摘。

このことは、2013年に国立国際医療研究センター病院の能登洋医長らの研究で明らかになっている。能登氏らの研究チームが糖質制限食に関する492の医学論文を分析したところ、糖質摂取量の割合が最も少ないグループの死亡率は最も多いグループの1.31倍で、糖質制限食を5年以上続けると死亡率が高くなると報告している。

日本人の玄米菜食の実態調査を今秋スタート

炭水化物に問題があるとすれば、それは白米の過食であろう。白米は外皮の糠や胚芽を取り除いたもので、ビタミンや微量栄養素のミネラルが欠落しており、栄養学的にはほとんどカスであると多くの専門家が指摘している。

米糠のような食物繊維を豊富に含む玄米の場合、白米と違って食後に血糖値が急に上昇することもない。そのため、糖尿病の発症リスクが抑えられる。

当日の日本綜合医学会の講演で、渡邊昌会長は自らが糖尿病を発症したが、玄米菜食と運動で改善したことから、玄米食の効用を説き、今秋くらいから玄米食のコホート研究をスタートしたいとした。

渡邊氏は、厚労省の多目的コホートを25年前に創設している。こうしたコホート研究で、白米を食べ過ぎると糖尿病になるという論文はあるが、玄米か白米かの区別がなかった。そのため、玄米食についての実態調査を行い、その有用性を明らかにしたいとした。

GHQが未精製米を排除、パン食を普及

ところで、玄米食は明治時代の軍医である、石塚左玄が効用を説き、その後、二木式健康法で知られる二木健三氏やマクロビオティックの桜沢如一氏が世界的に広めた。現在、その流れで、日本CI協会、世界正食協会、久司マクロビオティック、日本綜合医学会など、1万人以上の人々が玄米菜食を実践しているといわれる。

実は、戦前の日本人は多くが、白米ではなく、3分搗きのような未精製米を摂っていた。そうした日本人の精神力や民族としての優秀性は未精製米により培われたものではないか、とさえいわれている。

戦後、日本人の精神性の高さに脅威したGHQは占領政策の一環として、教育とともに、日本人の「食」を変えることに着手し、パン食や牛乳を普及させた。

米国では10年ほど前から急速に和食に傾倒

こうした米国も、実は70年代、心臓病や糖尿病といった慢性疾患の増加に苦しめられていた。そのため、米上院議員で大統領候補にもなったマクガバン議員を中心に、世界の食事と健康との関係について2年ほどかけて徹底調査を行った。

その結果、糖尿病に代表される文明病は栄養のアンバランスから生じた代謝病であり、ビタミンやミネラルといった微量栄養素の欠落によりもたらされたものと結論付け、食事改善に取り組んだ。

その後、国民に高食物繊維・低脂肪食の摂取を薦め、野菜や果物を1日に5皿分以上摂る「5 A DAY」運動を産官学連携で展開、さらに徹底した禁煙運動を推進し、次第にがん死人口が減少傾向へと向かっていった。

さらにこれに弾みをつけるため、2005年版の「アメリカ人の栄養ガイドライン」で、初めて全穀粒の効用を挙げ、加えて魚食を薦めるなど、日本食への傾倒をあらわにした。

これらの栄養政策で、現実に米国ではこの20年ほどの間にがん死が22%減少している。

このように、米国は10年ほど前から、米国民の栄養指針に和食を取り入れる方向性を明確にし、まさに今「食」の大転換が起きつつある。

戦後、GHQが日本人から排除した未精製穀物を、米国は今国民に推奨するという皮肉な現象が起きているが、日本でも玄米への国民的な回帰運動が早晩起きるかも知れない。


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