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団塊の世代が高齢化、前立腺がん罹患が増大
65歳以上の「命を落とすがん」で第1位

7月4日(土)、日本医師会会館で、前立腺がんの予防・治療をテーマに「第18回日本医学会公開フォーラム」が開催された。この中から、2人の演者の講演を取り上げる。

毎年およそ1万人ほどが前立腺がんで死亡している

「1年間で発見されやすいがんで前立腺がんが今年からトップになった」。当日、「PSA検査の意義」と題した講演で、伊東一人氏(群馬大学大学院医学系研究科泌尿器科学准教授)が日本における前立腺がん罹患の現況を述べた。

団塊の世代の高齢化が進み、年々前立腺がんの罹患人口が増大している。現在、日本では年間で約10万人に前立腺がんが見つかっているという。

50代男性にとって前立腺がんは「命を落とすがん」の第5位、65歳以上では第1位になっている。死亡数も右肩あがりで、毎年およそ1万人くらいが前立腺がんで死亡している。近い将来、年間1万5000人以上が前立腺がんで命を落とすという予測もされている。

PSA検診で、死亡率が約21%低下

こうした前立腺がんにどう対処すればいいのか。
前立腺がんはきちんと治療すればがん制御効果が非常に高い、そのため早期発見が非常に重要、と伊東氏はいう。

その早期発見のための検査がPSA検診である。PSAとは前立腺特異抗原のことで、前立腺がんになると尿や血液からPSAが高い数値で検出されるため、一般的には血液検査でスクリーニングすることができる。

日本泌尿器学会は、スウェーデンで行われた「イエテボリ研究」からこのPSA検診が有効であると認めている。

この研究では、PSA検診を受けている群といない群を比較したところ、受けている群のほうが死亡率が約21%も低いことが報告されているという。300人受診で、1人の前立腺がん死亡を避けられる計算になることから、PSA検診はがん検診の中でも非常に効率的な検査と位置付けられている、という。

アメリカでは前立腺がんの死亡率が45%低下

アメリカでは1980年代からPSA検診が行われるようになったが、2010年時点で前立腺がんの死亡率が45%下がり、これは検診の効果と考えられている。またPSA検診は死亡率の低減に役立っているが、現段階では発展途上で、将来的にはテーラーメイド検診に役立つともいわれているという。

例えば、20〜30代で早くも微小の前立腺がんができるが、これが生活習慣や食習慣などの危険因子にどれくらい曝露することでがんとして発症するか、あるいは潜在がんのままか、といったこともわかるようになるという。

また40〜50代でも一度PSA検診をしておくと、将来のがんの危険率を予測することができるようになる。現在60歳以上の男性も、PSA値を継続的に検査しておくことで、自分の危険度を把握し対策することが可能だという。

大豆たんぱくやセレン、 ビタミンEの摂取でリスクを抑制

また、野々村 祝夫氏(大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学 泌尿器科 教授 )は「前立腺がんとは」と題して講演。

前立腺がんは、早期には症状もなく排尿にも影響がない。しかしながら、骨に転移しやすいため早期発見は非常に重要とし、前立腺がんの特徴として、高齢者のがんで高齢化により著しく増加している、男性ホルモンに依存して増殖するが進行は比較的緩慢、などを挙げた。

また、食生活の欧米化も前立腺がんの要因とし、加工肉やカルシウムの過剰摂取、喫煙などを挙げた。前立腺がんを抑制するものとしては、 大豆たんぱく質やセレン、 ビタミンEの摂取が有用とした。


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