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健康寿命のカギを握る「テロメア」、ストレス緩和で活性
適度の食事や運動、「体内時計」を調整し、がんや疾患発症を抑制

2015年2月14日(土)、早稲田大学先端生命医科学センターで、第1回時間栄養科学研究会のシンポジウムが開催された。時計遺伝子Clockが発見されたのが今から17年前。その後、「時間生物学」の研究が急速に進み、「時間栄養学」「時間運動学」といった学問領域が脚光を浴びるようになった。シンポジウムから3人の演者による最新の研究成果を報告する。

寿命短縮に関わる「テロメア」

香川靖雄氏(女子栄養大学 医科学教室 教授)は「時計遺伝子からテロメアへ」と題した講演で、時計遺伝子には2種類ある、と解説。

時計遺伝子は日々の身体活動の調整を行うが、我々のDNA染色体の両端について、染色体を保護している「テロメア」の管理下にある時計遺伝子は寿命の調整を行っている。

つまり時計遺伝子には、日々の身体リズムを司るものと、寿命の短縮に関わる「砂時計」のようなタイプのものとが存在するという。

「テロメア」は寿命の伸張と深く関わる。「テロメア」は生まれた時には1万塩基の長さを持つ。しかし細胞が代謝するたびに短くなり、1年で50塩基短縮する。最終的に「テロメア」がなくなると寿命が尽きる。

朝食の欠食や睡眠不足は、時計遺伝子の乱れを起こし、「テロメア」にも影響を与える。日々「テロメア」を短縮させることになり、数十年後の糖尿病リスクや認知症のリスクを増大させることになるという。

「テロメア」は、寿命短縮や疾病発症とも関わっており、「テロメア」の長さを測ることで、寿命の予測もある程度可能となる。

寿命短縮や疾病リスクを抑制するカギは「テロメア」にあり、時計遺伝子を正常に作動させるためにも、食事や運動、睡眠など「適量」を心がけることが大切と香川氏は指摘する。

瞑想で「テロメア」が活性

寿命に関わる「テロメア」だが、古今東西の歴史をみると、平均寿命が30-40歳代の時代でさえ70〜80歳代まで生きた人たちがいる。そこにはある共通点がある。それは「宗教家」であるということ。宗教家は規則正しく、食べ過ぎない生活をし、適度に体を動かす。また瞑想を行うが、このことが「テロメア」の維持に貢献しているのではないか、と香川氏。

禅宗などの僧侶は長生きで、それが精進料理によるものともいわれてきたが、食事内容に関わらず長生きしている宗教家は世界各国に存在する。その共通項はというと「瞑想」ということになる。

実際に、ハーバード大学で学生に毎日瞑想をさせたところ、8週目にしてテロメラーゼ(テロメアの長さを保つ働きをする酵素)の顕著な発現と「テロメア」の活性が見られたという。

生活習慣を正せば、約5年で「テロメア」は伸長する

「テロメア」はストレスでも短縮する。日々のストレス耐性が強くなると、「テロメア」の活性度も上がる。宗教家に次いで、芸術家も長寿が多いが、好きなことに没頭していてストレスに強い、また瞑想状態で作業していることなどが「テロメア」の短縮軽減に貢献していると考えられる。

ただ、これまでの生活習慣の乱れから「テロメア」の短縮を余儀なくされている人々も多い。しかし、生活習慣を改善し、規則正しい生活や食事をすると約5年で「テロメア」が伸長するというデータもあると香川氏はいう。

また、時計遺伝子は「運動のタイミング」とも関連することが近年わかってきている。森谷 敏夫氏(京都大学大学院人間・環境学研究科 応用生理学研究室 )は「生活習慣病予防・改善における運動の役割」と題して講演。

適切なタイミングで運動することによって「筋肉の再合成」などが効率的に行われることが解明されつつあり、これを「時間運動学」と呼ぶという。

例えば、1日3食を食べる一般成人では、肥満予防の一番適切な運動のタイミングは夕食前であることがわかってきている。また単純に肥満予防の効果だけを考えれば、朝夕に関係なく食後に運動をするというのが最も太りにくいことがわかってきているという。


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