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米国における「健康食品」機能性表示の変遷

現在、日本で検討されている「健康食品」の機能性表示については、米国のダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)の表示制度を参考にするという。その制度とは、1994年に成立した栄養補助食品健康教育法(DSHEA:DietarySupplement Health and Education Act)だが、施行から20年の間には、表示違反、有害成分の含有などさまざまな問題が噴出しその都度修正が行われている。制度施行から10年目、消費者支援団体がこの制度にどう対峙していたのか、また健康食品(栄養療法)に人々は何を期待していたのか、当時を少し振り返ってみる。

消費者の9割、サプリメントに医薬品と同等の規制望む
 (※2004年5月記事)

栄養補助食品ははたして安全か---。
食の安全性が世界的に求められる中、米国においても栄養補助食品の規制強化を求める声が、消費者支援団体の間で高まっている。消費者のための月刊誌「コンシューマー・リポート」(2004年5月号)では危険な栄養補助食品12種類の製品名を挙げているが、同誌が1995年にとり上げた製品がいまだに掲載されている。毎年、安全性の保証なしに約1000種類の新商品が店頭に並ぶものの、消費者の9割がサプリメントに医薬品と同等の規制を望んでいるという調査報告も最近出ている。

「栄養補助食品健康教育法(DSHEA)は軟弱」と消費者支援団体が指摘

アメリカで消費者の91%は、栄養補助食品も医薬品と同じように、安全性と効果を立証してから発売すべき――と消費者が規制強化を求めていることが、消費者支援団体で、月刊誌「コンシューマー・リポート」の出版元である、消費者同盟が6月に発表した意識調査で明らかになった。 消費者同盟のプログラム・ディレクター、チャールズ・ベル氏はその中で、こう指摘する。

「政府に対し、サプリメントの安全性について規制強化を求める声が消費者の間で高まっている。現在のサプリメント規制=栄養補助食品健康教育法 (DSHEA)=は軟弱だ。現にダイエットハーブのエフェドラが人体に有害だと問題視されてから、販売禁止になるまでに10年もかかっている。

その間に死亡報告を含め数え切れないほどの有害報告が出ていた。エフェドラは現在の規制が失策であることのシンボルといえるだろう。同じような悲劇を繰り返さないためにも、政府は規制強化に乗り出すべきだ」

DSHEA規制、メーカー側の自主規制にすぎない

1994年に成立した栄養補助食品健康教育法(DSHEA)は、栄養補助食品に対し発売前の安全性および効果の科学的な裏付けを義務付けていない。 医薬品ならば、安全性と効果の立証は発売前の必須条件だ。それが、薬と同じように人間が服用する栄養補助食品だと、安全なのか、本当に効くのかがあいまいなまま発売できる。

また、健康に害のあることが分かっても、米食品医薬品局(FDA)への報告をメーカーに義務付けていない。消費者から「飲んだら体調が悪くなった」という苦情があっても、FDAに報告するかしないかはあくまでメーカー次第。危険な商品の取り締まりが難しくなっているのはこのためだ。

DSHEAという法律が存在していても、事実上はほぼメーカー側の自主規制。こうした現状に不安をいだく消費者は少なくない。

医薬品と同様に効果を科学的立証を望む声

全米で5月12日から17日にかけ、大人1221人を対象に実施した消費者同盟の意識調査によると:

・不十分なサプリメント規制は自分そして家族の健康にリスクを及ぼす…81%
・医薬品と同じように、市販する前に安全性と効果を科学的に立証すべき…91%
・医薬品と同じように、健康への悪影響があった場合の報告を義務付けるべき…96%
・医薬品と同じように、健康への悪影響に関する情報をラベルに表示すべき…96%
・これまで通りの規制でかまわない…19%

前出のベル氏は「サプリメントに対し消費者が不安をいだいているのは明らか。本来ならば販売禁止になるべき疑問のあるいくつかのサプリメントが今も市販されている。このような危険なサプリメントの販売禁止を容易にし、新製品が出回る前にきちんと安全性を検討するシステムが必要」と強調している。

上院・下院議員らが規制強化法案を提出

こうした消費者の声を背景に、消費者支援団体の間ではサプリメントの規制強化法案を支持する動きが高まっている。リチャード・ダービン上院議員が提出した法案「S.722」と、スーザン・デーヴィス下院議員らが提出した法案「HR 3377」だ。
いずれも、下記の規制強化が盛り込まれている。

1)健康への悪影響が判明した場合、期限を決めてFDAへの報告をメーカーに義務付ける。
2)刺激性のある成分を含んだ栄養補助食品を新たに発売する際は、医薬品と同じように、市販前に安全性を裏付けるデータを厚生局に提出することを メーカーに義務付ける(すでに市販されているものについては、法施行から2年以内に安全性を立証しなければいけない)。
3)必要に応じてリコールを実施する権限を厚生局に与える。
4)健康への悪影響およびほかの薬との相互作用によるリスクをラベルに表示する

FDAへの報告義務を強調

4月には、インスティテュート・オブ・メディシンとナショナル・リサーチ・カウンシルが「栄養補助食品:安全性評価の枠組み」というタイトルの提案書を発表した。

提案書によると、アメリカにおける栄養補助食品の年間売り上げは約160億ドルで、毎年平均1000種類の新商品が市場に出ているという。現在、市販されている栄養補助食品の数はおよそ2万9000種類。大半は問題ないものの、危険な商品も出まわっていると指摘する。

ちなみに、DSHEAが成立した当初、市販されていた栄養補助食品の数はわずか4000種類にすぎなかった。

そうした状況を受け、提案書は、人体への悪影響が判明した場合、FDAへの報告をメーカーおよび配給会社に義務付ける法律の必要性を強調。今のところ、報告はメーカー側の任意となっていることから、実際に報告された悪影響のうちFDAに報告されているのは1%にも満たないだろうと、提案書は警告している。

ラベルにはトラブルを報告するトールフリーの電話番号、メーカーだけでなく配給会社のネームと住所も掲載すべきと提案している。 消費者支援団体は、FDAおよび連邦議会に対し、同提案の受け入れを強く呼びかけている。

処方箋なしのステロイドサプリメント販売禁止へ

そして最近、消費者支援団体の運動が実ったケースが、処方箋なしのステロイド・サプリメントの販売禁止だ。ステロイドホルモンの前躯体を成分にしたサプリメントを規制薬物扱いとし、購入の際には医師の処方を必要とする法案が6月はじめ、下院で可決された。運動能力向上、筋肉増強を謳ったサプリメントに含まれているアナボリック・ステロイドなどに、血栓症、肝臓障害、心臓発作、脳卒中を発症するリスクのあることが指摘されたからだ。

しかし、老化防止サプリメントとして人気の「DHEA」は対象からはずれている。「DHEA」もステロイドホルモンの前躯体で、アナボリック・ステロイド などと同じようなリスクが指摘されている。消費者支援団体および医療専門家らは、「DHEA」が対象外になっていることに大きな疑問を寄せている。


CAM利用者の7割が”免疫力の強化”に期待〜米国代替医療の進捗状況
 (※2002年3月記事)

90年代、ネットでの情報開示が進んだことなどから、無保険者の多い米国では有効な代替医療を模索する動きが起きていた。そうした国民の意識の高まりに対し、米国政府は1998年に米国NIH(国立衛生研究所)に代替医療(CAM)の研究推進を目的とした機関、NCCAMを設立し、大幅な予算を計上した。現在までの米国における代替医療の進捗状況を報告する。

※CAM = カイロプラクティック、ハーブ・栄養療法、中国漢方、アロマテラピー、 心理療法、音楽療法など西洋医療以外の伝統伝承医療を指す。

1990年代からCAMを支持する研究結果が急増

近年、アメリカでは“Complementary and Alternative Medicine(代替療法=CAM)”への患者や生活者の視線は高まる一方となっている。だが、代替療法の評判や宣伝のみが一人歩きし、詳細で正確な情報が後回しとなっている感もある。代替療法への盛り上がる期待に対し最近まで、連邦政府、州、各地域自治体などの対応は、安全性の確証も無い治療から公共を守るためCAMへのアクセスを制限するものだった。しかし、1990年代からCAMを支持する研究結果が急増したことから、CAMに関する正確な情報の開示やトレーニング、指導教育を求める声が高まる。

代替療法の中には有効性の高さが納得され、有名病院でも採用されているものがある。また反対に安全性に疑問が残り、危険であると指摘されるものもある。どれが有効でどれがそうではないかを医療関係者がはっきり把握し、生活者に伝えることこそが、CAMの評価を高め、さらに発展させていく礎になると考えられる。

2000年3月、補完・代替療法ポリシー委員会(WHCCAMP)発足

こうしたことを背景にして、クリントン元大統領時代の2000年3月、大統領令13147号を基に、20人のメンバーからなるホワイトハウス補完・代替療法ポリシー委員会(WHCCAMP)が発足。現在のブッシュ大統領に受け継がれている。

同委員会の主な業務は、1)米保健省を通して、消費者に対するCAMの効果を最大限にする法的、行政的な提言を提供すること。

またその使命は、1)CAMに関わる医療関係者の指導トレーニング、2)CAM製品に関する情報収集、3)医療関係者へのCAMに関する的確で有効な情報の提供、4)CAMサービスへの適切なアクセスに関するガイダンスなどとなっている。

2000年7月から2002年2月までCAMに関連する政府方針への提言を求める

そこで2000年7月から2002年2月までの間に10回の会議を開き、医療関係者、医学教育者など様々な専門家から、CAMに関連する政府方針への提言を求めた。また同時に、民間の医療機関、消費者などからも公開討論会を通して意見を集めた。こうした末の最終報告が今年3月に発表されている。ただ、委員会はまだ様々な懸念を残している。

この中で200を超す様々な治療法がCAMと一つにまとめられているが、安全性および有効性がほぼ証明されているもの、ほとんど研究成果が出ていないものなどさまざまでそうしたものをひとまとめにして結論を出すことは危険であるという意見もある。

CAMを利用する理由、“免疫力を高める”が7割強

アメリカにおけるCAMの躍進が目覚しいものであることはこれまで多くの医療機関や報道機関が報告してきたが、あらためて同報告書でもCAMの現状が分析されている。例えば、がんとCAMでは、がん患者の63%が何らかのCAM療法を利用している。男性患者より女性患者の方が利用度は高く、放射線療法や化学療法と併用している患者が増えている。

また、患者2千人を調べた別の調査では、75%が最低1種類のCAM療法を使ったことがあると回答。療法の種類では、栄養療法が63%と一番高く、その後マッサージ(53%)、ハーブ(44%)と続く。

CAMを利用する理由については、“免疫力を高める”が73%でトップ。またがんの種類では乳がん患者が最も多くCAMを利用している。

他に、慢性の痛みとCAMでは、Astinが行った最近の調査によると、CAM療法を使用している患者で最も多かったのが腰痛疾患だった。続いて首の痛みを訴える患者の利用度も高かった。痛み治療で見ると、一般医療よりCAMの方が利用度は高いことが分かっている。例えば、慢性の痛みでは、52%対34%、頭痛は51%対19%、さらに関連して鬱病でも34%対25%、不安感42%対13%、不眠症32%対16%などと、どれでもCAMを選ぶほうが多くなっている。

CAMを実践するきっかけ、「一般医療が効かないため」が50%

HIVとCAMの分野では、1千675人のHIV患者を調べた最近の調査によると、CAMで最も多く使われているのが栄養療法のビタミンC多量投与の63%、続いて総合ビタミン・ミネラルサプリメント投与(54%)、ビタミンE投与(53%)、ガーリック(53%)となっている。

また、相談をするCAM医師では、マッサージ療法が最も多い49%。次に鍼療法の45%、栄養士(37%)と続き、アクティビティではエアロビクスが最多の63%で、祈り(58%)、マッサージ(53%)、瞑想(46%)と続いている。さらにAstin調査では、CAMを実践するようになったきっかけとして、回答者の50%が、一般医療が効かないと答えている。友人・知人の薦め、一般治療で起きた副作用を回避するためと続いている。

一般医療とCAMは、融合というより協力体制で

CAMの将来性として、報告では一般医療との統合を視野に入れている。例えば、American Hospital Associationによると、2000年の調べでCAMを取り入れている地域病院は16%で、1999年の11%から増大している。ただ、統合という考え方はまだ始まったばかりで、科学的基礎に裏打ちされていないCAM療法が多いこともあり一般医療と融合させ実践させていくという道のりはまだ遠いと思われる。

統合の前にコラボレーション(協力)という考え方が進んでいる。この考えでは、CAMと一般医療2つの完全な統合は必要とせず、クリニックやネットワークの中でお互い患者を紹介していこうというもの。さらに、患者の症状、容態によって診断や治療法の意見交換を行うという。

参考までに今年3月に報告された代替医療に関するホワイトハウス諮問委員会の最終報告書 の概要は下記の通り。同報告書では、討論を重ねた提言を以下のようにまとめている。

@政府機関は、臨床研究、基礎研究、CAM研究に対する資金援助の規模を拡大して受け取るべきである

A認可を受ける必要のない製品の研究に対する第3セクターの投資を促進するため、政府、議会は法令的、行政的報奨を成立させるべきである

B政府、民間、非営利セクターは、健康を促進するセルフケアを向上するCAM療法の研究を支援すべきである

CCAMに関連する未開拓分野で理解を拡大するため、新しく革新的な研究を、政府、民間、非営利セクターが支援すべきである

DCAM臨床研究に参加する被験者は、一般医療の臨床研究被験者と同じ保護を受けられるべきである

ECAMと一般医療従事者、研究者、研究機関、政府機関などの中で対話の強化を図らなければならない

FCAMについての知識が豊富で、的確な研究結果を入手できる臨床研究者や医療従事者を拡大するため、CAM研究や研究トレーニングの公的、私的リソースの基本組織強化を図るべきである

G安全かつ有効で安価なCAM医師を紹介できるデータベースを、公的、私リソースは常に更新し支援すべきである

HCAM療法関係者の指導・トレーニングは、公共の安全、健康促進、有資格でベテランのCAM医師の紹介、CAMと一般医療従事者との共同体制を強化するよう行われるべきである

I政府は、CAM医師や製品の安全性や有効性などの情報に、迅速かつ正確にアクセスできる体制を整えるべきである

JCAM医療関係者への指導・トレーニングに関する情報も公開し患者などが簡単にアクセスできるようにすべきである

K米国の消費者が利用するCAM製品は安全かつ一貫して標準をパスしているべきである―の他に、米保健省はニュートリション、ストレス管理、運動を学齢児童に指導する全米キャンペーンを開始すべきである、危険な副作用を消費者に知らせる重要なステップとして、議会はダイエタリーサプリメント・メーカーに対しFDAに登録するよう要請すべきである、議会は連邦取引委員会に予算を計上しCAMの誇大宣伝や違法広告を取り締まれるようにすべきである――
など計30以上の提言がなされた。


ネガティブ報道でゆれるサプリメント業界、統一基準作りなど再構築へ
 (※2002年2月記事)

ここ数年、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズといった米大手メディアのサプリメントに関する記事は安全性に疑問を投げかけるものなどネガティブな報道が目立つ。当然、サプリメントの売上げにも影響を及ぼしている。とはいえ、サプリメント業界も黙ってはいない。統一基準作り急ぐなど反撃に転じつつある。最近の米メディアの報道と対するサプリメント業界の最新動向を報告する。

人気ハーブのネガティブ報道でサプリメントブーム沈静化へ

90年代に入って、米国で代替医療への関心が国民の間で高まり、サプリメントを用いた手軽な栄養療法は多くの利用者を獲得した。さらに94年のDASHEA(健康栄養補助食品教育法)施行による規制緩和で、米サプリメント業界は追い風を受け我が世の春を謳歌した。市場は以後、毎年2ケタ台の成長率を遂げるが、この伸張に横槍が入った。米医師会など正統派西洋医療サイドからの代替医療の検証を求める声が次第に強まっていったのだ。

中でも、代替医療の中核であるサプリメントによる栄養療法は薬剤との相互作用も懸念され徹底検証が必要と警鐘が鳴らされた。そこで、真っ先に米国で人気を博していたセント・ジョンズ・ワートやガーリック、イチョウ葉などの人気ハーブが俎上に乗せられ、抗HIV薬、避妊薬などの効果を阻害することが指摘された。そしてこれを米大手メディアがこぞって取り上げたため、サプリメントブームは一気に沈静化へと向かっていった。

ラベル表示の虚偽が発覚

アメリカのサプリメントブームに陰りが見えはじめたのは2000年頃。それまで、ビタミン、ミネラル、ハーブを「(健康の)マジックブレット」とはやし立てていたマスコミが、次第に「効果を裏付ける科学的な根拠は」という世間の疑念を敏感に感じてか、記事のトーンを変えていった。さらにダイエットハーブ「フェンフェン」で死者が出るといったニュースも手伝い、報道の主流はサプリメントの効果を疑問視するものへと向かっていった。

また、昨年あたりから、ラベル表示の信ぴょう性に問題あり―というネガティブ報道も各紙紙面を賑わせた。2001年2月20日付ワシントンポスト紙にこんな記事が掲載された。「無作為に選んだ27ブランドのマルチビタミンを調べたところ、9件が含有量および純度で、ラベル表示に偽りのあることが明らかになった」そして、「今回の発覚はあくまでも氷山の一角にすぎない」と、消費者に警告を発した。

目につく「過剰摂取の危険性」報道

ハーブについて業界統一の品質検査の基準を設けるべきだという声も高まっている。現在のところ、研究所によって検査方法が異なるため、メーカーによって品質管理にばらつきがあるという。

これについては、コロラド州に拠点を置くThe international Nutraceutical Association は同協会のホームページ― http://www.inanetwork.com/index.html―で、業界向けに開発した検査方法を紹介している。

また「過剰摂取の危険性」についての報道も目立つ。ワシントンポストは2001年7月10日付で、ビタミンDの過剰摂取は腎臓および肝臓に有害―というニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に掲載された報告書を紹介している。さらに記事の中で、ビタミンサプリメントのラベル表示がしばしば不正確で危険であることも指摘している。

同紙は同年1月30日付記事で、「まだはっきりとしたことは分かっていない」と前置きした上で、大豆サプリメント服用によるイソフラボンの過剰摂取と、乳がんに罹る率の上昇の可能性にも触れている。過剰摂取がらみといえば、70歳の看護婦が昨年5月、アルツハイマー病に関する臨床
試験中に、アミノ酸の一種「methionine」を過剰に服用し死亡したニュースが記憶に新しい。女性は、手違いで実際に服用するはずの摂取量を10倍近くも上回る「methionine」入りのオレンジジュースを、飲まされた可能性があるとして、現在、捜査を行っている。

「黄斑変性病(AMD)」にビタミンとミネラルの混合サプリメントが効く

マスコミ報道の影響で失速を余儀なくされているサプリメント業界だが、多くのネガティブ報道の中にあって幾つか朗報も届いている。加齢が原因といわれる目の病気「黄斑変性病(AMD)」にビタミンとミネラルの混合サプリメントが効く―というニュースだ。AMDの好発年齢は60歳以上、高齢者における視覚障害のナンバーワン要因といわれ、アメリカで患者数は現在、約800万人と推定される。今のところ発病の原因は分からず、治療方法は確立されていない。

そこで、国立衛生所(NIH)が全米の眼科専門施設11カ所で6年間にわたり、55歳から80歳の3600人を対象にサプリメント服用効果について調査を実施。結果をまとめて昨年末、「加齢による眼病研究(AREDs)」の表題で発表した。AREDsによると、中度のAMD患者が、ビタミンC500mg、ビタミンE400IU、βカロチン15mg、亜鉛80mg、銅2mgを服用した場合、症状の進行を約25%抑えることができるという。

しかし、効果が見られたのはあくまでもすでにAMDに罹った患者のみ、しかも症状の進行を遅らせる点では有効だが、残念ながら完治にまでは至っていない。同研究発表の直後に、Bausch&Lomb社がAREDsとまったく同じ含有量の複合サプリメントを「Ocuvite PreserVision」の商品名で発売。ワシントンポスト紙らが研究報告の発表記事の中で商品を紹介した。

また、the National Institute an Agingが強い関心を示している、動植物のレシチン中にあるビタミンB複合体「コリン」について、サイエンスニュースが昨年11月に報じたところによると、サプリメント「コリン」が、脳の働きを高め、妊娠中に服用すると生まれてくる子供の脳の働きも高まる―と、マウス実験の結果をもとにまとめている。

汚名返上に乗り出したサプリメント業界

ポツポツと朗報が流れてくるものの、大半はネガティブ記事。すっかり鎮静化してしまったサプリメント旋風にテコ入れしようと、業界が汚名返上に乗り出した。奮闘ぶりを幾つか紹介しよう。

「The Dietary Supplement Education Alliance(DSEA)」が昨年6月、ビタミン、ミネラル、ハーブといったサプリメントの正しい知識を広めようと結成された。メンバーは、the American Herbal Products Association、Corporate Alliance for Integrative Medicine、National Nutritional Foods Association、New Hope Natural Media/Penton Media、Virgo Publishingといった業界の顔がずらりと並ぶ。

結成そうそう開設したDietary Supplement Information Bureauを通じて、効き目、安全性、規制などあらゆる角度からサプリメントを認知してもらおうと、消費者教育キャンペーンを展開中だ。同事務局のホームページ(www.supplementinfo.org.)には貴重な情報が満載されている。

基準を満たした商品に、品質保証シール貼付も

また「ラベル表示に偽りあり」のネガティブ報道を受けて出たのが、The National Nutrition Foods Association。非営利の調査団体「NSF International」が介入し、統一した検査基準に基づいてサプリメントの品質を管理するプログラムをスタートさせた。消費者に優良商品がひと目でわ
かるよう、基準をパスした商品には、品質保証シールが貼られる。

他にも、業界団体ではないが、ConsumerLab.com社は商品のラベル表示と実際の中身が一致しているかを調べ、問題のなかった商品を同社のホームページ( www.consumerLab.com)で、紹介するなどの取り組みを行っている。ただし、問題商品の掲載はしていない。

また、業界の政治的な動きとしては、病気治療の一環でサプリメントを服用した場合、医療費として税控除の対象とするという内容の法案を昨年、議会に提出した。また、業界および消費者団体の強い働きかけで、議会は昨年11月、食品・医薬品局(FDA)傘下にあるCenter for Food Safety and Applied Nutrition (CFSAN)へのラベル表示取り締まり強化予算50万ドル、FDAへの有害サプリメント報告システムの改善予算150万ドルをいずれも承認した。


サプリメントバブル終焉か、サプリメントをめぐる米メディア報道に異変
 (※2001年8月記事)

ここ最近、サプリメントへの購買意欲をそそる記事を見なくなった。メディアといえば、ハーブの安全性に問題あり、医薬品との併用が危ない、効き目を裏付ける証拠なしといったネガティブな報道ばかり。代わりに「サプリメントではなく、できるだけ食事でとるように」といった記事が目につく。これまで、サプリメントの効能を書きたててきた米メディアがまるで手の平を返したようだ。

米有名紙が栄養補助食品業界の低迷を報道 

「米国栄養補助食品業界は売り上げ低迷の治療法を求め奮闘している」―と、今年2月11日付ロサンゼルス・タイムズ紙が報じた。1994年に栄養補助食品の販売規制を緩和した栄養補助食品健康・教育法(DSHEA)が成立して以降、順調にサプリメントの売り上げは伸びていたが、昨年、はじめてマイナス成長を記録。サプリメントブームに陰りがみえてきたと指摘するメディアは多い。タイムズ紙の分析によるとサプリメント離れの理由は以下のようなものだという。

1)効き目および安全性について科学的な裏づけが十分にないサプリメントに疑いを抱き始めた消費者が増えた。
2)いくつかの科学的な研究報告で、エキナセアをはじめ人気ハーブの効き目および安全性に疑問符がついた。
3)民間の消費者団体が、サプリメント表示と実際の含有量が異なる粗悪商品が出まわっていると警告した。
4)錠剤ではなく、ビタミンやミネラルを加えた機能性食品(食材)に消費者の関心が移行した。
5)人気サプリメントのグルコサミン、コンドロイチン、コラーゲンの原料が牛であることから、狂牛病への恐れが心配された。

これは、決してサプリメント叩きを目的とした記事ではないが、読者にとってみれば間違いなくサプリメントへのマイナスイメージが残る。さらに、米国ではダイエット素材のエフェドラを含んだダイエットサプリメントの副作用の訴訟も広く知られ、「今は、とりあえずハーブはやめておこう」といった雰囲気が蔓延しつつある。

現実に、ハーブ人気ベスト5と騒がれた、エキナシア、ガーリック、イチョウ葉、ジンセン(朝鮮人参)、セントジョンズウォートなどの売り上げも低下しており、量販店での昨年のハーブ総売り上げは14%ダウンとなった。これら稼ぎ頭の売り上げ低迷で市場全体の活力が低下している。

こうした報道は、ロサンゼルス・タイムズだけではない。今年5月15日付のワシントンポスト紙も「ハーブ業界低迷」と書きたてている。こちらも、セントジョンズワートの昨年売り上げは45%、イチョウ葉は30%減少と、低迷を指摘している。

'94年のDSHEA以降、業界はまさにサプリメントバブルといった状況にあったのかも知れない。業界には追い風が吹き、市場は活況を呈し、急成長を遂げた。しかし、代替医療としての有効性の検証で薬剤との相互作用が指摘されるに至って、マスコミの追撃も厳しくなり、消費者のサプリメントへの購買意欲が急速に冷え始めた。

賛否両論、評価の定着しない状況がさらに消費者に混乱与える

'94年のDSHEA成立でサプリメントブームに火がつき、それを歓迎ムードで報道していたメディアが今、手の平を返したようにサプリメントに懐疑の目を向けているのが、最近の報道から読み取れる。1998年、米国立衛生研究所(NIH)がハーブ、ミネラル、ビタミンの安全性および効果を調べる研究所を開設し本格的な調査に乗り出し、ハーブと併用した際に薬剤の効き目が薄れるなど相互作用が指摘されたことが大きな要因となっているようだ。

かつてハーブ・フレンドリーだったメディアは、薬剤との相互作用を大きく取り上げサプリメントに対し「規制のない野放し状態」といった口調で叩き始めた。また、スケプティカル・インクワイアー誌1・2月号は「サプリメントはまるでジキルとハイドのようだ」とも言っている。

米国で人気の豆腐を1例にあげ、ある研究報告が「心臓疾患予防に効果大のワンダーフード」と絶賛したかと思えば、別の研究報告は「食べ過ぎると脳の働きが悪くなり記憶力が減退する」と言う、消費者は混乱するばかりだと指摘する。

USニュース・アンド・ワールド・リポート誌2月12日号も、大豆におけるジキルとハイドの二面性に触れている。
「大豆食品を食べるとガンや心臓疾患への予防効果はあるかもしれない、しかし、大豆に含まれる植物性エストロゲンを抽出して作った100ミリグラムのサプリメントが、ホルモン療法にかわるナチュラル療法といえるかどうかは疑問だ。むしろ成分が濃縮されたことでがんに罹る危険は高まるだろう」というジョージ・ワシントン医大のエイドリアン・ファ・バーマン教授のコメントを掲載。食品としてならば健康によくても、成分だけ抽出してサプリメントにする作業を加えたことで「もう自然ではない」というニュアンスだ。

サプリメントと薬剤との相互作用問題に大手薬局チェーン店も対策

とかくハーブと医薬品の相互作用をとりあげた記事が多く目につくが、VIM&VIGOR春号でも「ナチュラルだからといってハーブが安全だと思ったら大間違い。副作用もあるし、医薬品との併用は非常に危険。服用する前に医者にきちんと相談して」という内容の記事を掲載し、その中で、「排尿を促進するゴールデンシール、リコリス、パセリと心臓または血圧の薬」「エキナシアとステロイド、免疫抑制剤」「ガーリック、生姜、イチョウ葉とアスピリン、ビタミンE、血液をサラサラにする医薬品」「ジンセンと心臓疾患の薬」「カバ、バレリアンと抗うつ剤」「セントジョンズウォ ートと抗うつ剤、避妊ピル」の併用はいずれも危険と注意を促している。

またサプリメントと医薬品との併用の危険回避にCVSをはじめ大手薬局チェーン店が乗り出したと報じたのは5月1日付ワシントンポスト紙。
顧客が記入したサプリメントおよび医薬品の利用歴を、薬局のコンピューターに打ちこむと、併用に問題がある場合は、コンピューターが危険信号を発し、併用による障害を防ぐことができるという。現在、最大手のCVS、ジャイアントの2社は、ファースト・データ・バンク社が開発した、併用による相互作用データをまとめたソフトウエアーを顧客管理に利用しているという。

こうした米国のメディアの動向を総括すると、あまりに医薬品との相互作用が強調されているのが気にかかるところではある。ハーブ療法のような代替医療ブームにことさらに警鐘を鳴らしたがる医師会の介入が背後に見え隠れするというのはうがった見方であろうか。

問題視されているのは医薬品と併用した場合の、医薬品を作用を弱める作用についてであり、本来予防医学としてのサプリメントの単独使用については過剰摂取や妊娠時の摂取などに留意すれば健康維持・増進に十分な役割を果すものであるということは否定しがたい。

ビタミン、ミネラルも適正摂取量が話題に

こうしたハーブのネガティブ報道に対し、一方、ビタミン、ミネラルはどうかというとあまり記事が目につかないというのが現状。絶賛するわけでもなく、かといって問題ありと叩くでもなく、メディアの関心はいたって低い。

ただ、サプリメント報道全般を通じていえるのが、「体に必要な栄養は食事で摂るのがベスト。どうしても食事で摂れない場合に、サプリメントで補って」といった食事よりの記事が大半を占めている。ビタミン、ミネラルについては、「足りないのもよくないが、摂り過ぎも体に悪い。果たしてどれくらいとるべきか」といったことが話題の中心になっている。

7月9日付ロサンゼルス・タイムズ紙は、ミネラルの摂取量を掲載しているが、ビタミンと違い、ミネラルの大半は1日に必要な摂取量(DRI)が決まっていない。そこで同紙は、健康維持には1日にどれだけ摂ればいいのか主なミネラルについて以下のようにまとめている。

・ クロミウム 50から200マイクログラム
・ 銅  1.5から4mg
・ 鉄  15から30mg
・ マグネシウム DRIガイドで310mg
・ ポタシウム 1600から2000mg
・ セレニウム 55から70mcg(過剰摂取は有害)
・ ジンク  12から15mg

こういった米メディアの動きを見ていると、90年代半ばに始まった毎年2ケタ台の伸び率を誇っていたサプリメントブームは、どうやら終焉を迎えたとの感が強い。頼みの綱は、現在NIHの代替医療センター(NCAM)が実施しているサプリメント研究の結果がどう出るかといったことであろうか。それでメディアの風向きも変わるかもしれない。


米国栄養補助食品業界を活性化したDSHEA法、最終改正案まとまる
 (※2000年2月記事)

1994年に米国で栄養補助食品健康教育法(DSHEA)が施行された。これには医療費高騰の抑制策の一環としてダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)の利用を消費者に促すといった意味合いも少なからずあった。

施行後、米国栄養補助食品市場は代替医療ブームと重なって、毎年2ケタ代の伸張率を示し、好機に湧いた。しかしながら施行後、次第にDSHEAの不備が目立ち、改正が求められるようになった。これまでに進められてきたDSHEA改正の概要を報告する。

DSHEAの欠陥が露呈、消費者から疑問噴出

年間130億ドルの売上を計上、さらに躍進が期待できる米国栄養補助食品業界だが、曖昧な商品情報など消費者や専門家の不満は絶えない。そうした業界や消費者の間の混乱を解消する目的で、1994年に、栄養補助食品健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act:DSHEA)が成立した。

しかしその後、同法の欠陥が露呈するばかりで、「何を購入したらよいのか」「製品には何が入っているのか」「安全性は確保されているのか」など、消費者からの疑問は依然として減ることはなかった。

専門家から見直しを求める声

DSHEA法施行10年計画の一環として、米食品医薬品局(FDA)はDSHEAの再構築を進めている。米国の栄養補助食品はDSHEAにより、法的な意味での位置付けが確立されたといえる。これにより、栄養補助食品は、疾患の診断、治療、予防を指摘あるいは示唆する表現ができないという条件付きではあるが、安全性や効果についてFDAの審査を受けることなく市場に投入できるようになった。

これは確かに画期的なことではあるが、一部の栄養補助食品の中には有害な化学物質が含まれている物もあり、副作用の事例が報告されたことから、栄養補助食品に対する安全性や有効性の厳しいチェックを要求、DSHEAの見直しを求める声が専門家の間から起こり、DSHEA法施行計画は予想以上に厳しい道のりを歩むこととなった。

FDAが治療、予防などにおける表現基準を設定

2000年2月、FDAがFederal Registerに掲載、公にした「Rules and Regulations」は約50ページにもわたった。その目的は、栄養補助食品に関して「体の構造あるいは機能に影響する製品の有効性に関しその宣伝文句を規制」するためだ。この規制では、診断、治療、緩和、予防を示す宣伝文句の判断基準を設定している。

遡ること1998年4月、FDAは栄養補助食品の有効性に関しFDAの事前検査を受けずに行える表現を確認、これらの表現と、診断、治療、予防する製品の表現と区別する規制事項の概要案を取りまとめている。

ここでは主に、DSHEAが許可する「structure/function(組織構造/機能)」表現と禁止する疾患関連表現に対する基準を明確にしようとした。また、「disease(疾患)」については、「体の組織、器官、部位の正常構造あるいは機能に偏り、不全、停止が生じ、1つ以上の特徴的症状によって明示される」ことを「disease(疾患)」と定義した。

概要案では特定の疾患の効能表現は不許可

概要案が指摘する表現・表示の例は以下のようなもの。

1)特定の疾患、あるいは疾患の部類で製品が影響を与える場合。許可されない表現は、「がんの発病から守る」「関節炎による痛み、こわばりを減らす」など。許可される表現は、「組織構造/機能−表現は「尿道の健康を促進させる」「心臓機能を維持させる」など。

2)特定の疾患あるいは疾患の部類で、医療関係者あるいは消費者によって認められる1つ以上の兆候または症状に影響を与える製品。許可されない表現は、「コレステロールを低下させる」「関節の痛みを減らす」など。許可される表現は、「ストレスやイライラを減らす」「放心を改善する」など。

3)医薬品や治療方法を代用する製品。「ハーバル・プロザック」といった製品名は許可しない。

4)疾患あるいは感染者の体の反応に役割を果たす製品。許可されない表現は、「体の抗ウィルス作用を支える」「感染に抵抗する体の力を支える」など。許可される表現は、「免疫システムを支える」など。

5)疾患に影響を与える製品。例えば、許可されない製品名は、「Carpaltum(手根管症候群『carpal tunnel』>をほのめかす)」「Rayaudin(指虚血現象『Raynaud’s phenomenon』を示唆)」など。許可される製品名は「Cardiohealth」「Heart Tabs」など
――その他。

概要案への23万件にのぼる意見を調整

この概要案に対し、FDAは23万5千件以上の意見を受け取った。栄養補助食品業界からの意見は、ほとんど概要案のラベル表示の規制に反発するものだった。FDAはそれらの意見を再検討、その中から問題点を3つに絞り、意見調整を行う聴聞会を1999年7月に開催した。

その問題点とは以下である。
1)「disease」の定義についての最終調整。
2)疾患関連表現の審査基準で、更年期障害、性機能の低下、老化によるのぼせなどの自然症状をどう扱うか。
3)疾患をほのめかす「組織構造/機能」表現を許可するかどうか。

これら3点の意見をとりまとめ、概要案に修正を加えた。

「disease(疾患)」の定義や自然な症状に関する基準に改訂加える

最終調整を加えた最終ルールは概要案におおよそ沿ったものだが、重要な改訂を行っている部分も幾つかある。

1つ目は、「disease(疾患)」の定義をDSHEAが成立と同時にNutrition Labeling and Education Act(NLEA)施行の一環として発行された「disease or health-related condition」に戻している。

2つ目は、更年期障害や老化、青年期、妊娠期間で生じる自然な症状に関する基準に手を加えた。概要案では、更年期障害や老化、妊娠はそれ自体疾患ではなく、それらに関連して起こる症状が医療関係者などから見て異常と思われる場合に疾患としていた。

しかし、のぼせや月経前症候群(PMS)、老化による性機能低下を疾患とする見方に反対する意見が多く寄せられた。これに対しFDAは、重症かつ永続的ではない自然な生過程から起こる症状は疾患として扱わないと訂正した。

例えば、のぼせや生理による共通の症状、妊娠によるつわり、老化による軽度の物忘れや脱毛といったものは疾患と扱わないが、妊娠中毒症や老人性痴呆などの重大な症状は、引き続き疾患として対応されるとした。

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