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いわゆる「健康食品」、機能性表示検討へ
長らく懸案事項だった、いわゆる「健康食品」の機能性表記など表示制度の検討が進められている。2013年10月23日(水)、瀬尾ホール(東京都)で「第30回健康食品フォーラム」(財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会主催)が開催され、消費者庁長官の阿南久氏、厚生労働省医薬食品局の西村佳也氏らがいわゆる「健康食品」の新表示制度について講演した。
規制改革実施計画で、「健康食品」の機能性表示制度検討
健康に有益な食品として、国が健康表示を認めたものに特定保健用食品(以下、トクホ)や栄養機能食品がある。トクホは、平成3年に日本が世界に先駆けて設けた健康表示制度で、「おなかの調子を整える」「ミネラルの吸収を助ける」など、健康への効用を謳うことが許可された商品は現在1000品目を超え、市場は2011 年度で 5175 億円と推定されている。 一方で、一般のいわゆる「健康食品」には健康への有用性、機能性の表記は許可されず、業界の懸案事項だったが、ようやくこれが検討の方向へと動き始めた。 今年1月、内閣府消費者委員会により「健康食品の表示等のあり方」に関する建議が提出。6月の規制改革実施計画の閣議決定で、いわゆる「健康食品」の機能性表示制度についての検討が進められることとなった。 厚労省医薬食品局の西村佳也氏によると、アベノミクスによる好調な経済の追い風を受け、規制改革会議が活発に行われており、トクホや栄養機能食品以外のいわゆる「健康食品」をはじめとする保健機能を有する成分を含む加工食品及び農林水産物について、機能性の表示を容認する新たな方法を検討し、結論を得るよう進められているという。 米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考に 規制改革会議では「一般健康食品の機能性表示の緩和」が健康・医療分野の中で優先項目として位置付けられ、健康食品とそれを取り巻く環境は今非常に注目されているという。 現在、検討が進められている「健康食品」の新たな表示制度については、トクホのように国の個別審査を必要としない表示のあり方で、米国のダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)の表示制度を参考に、企業の責任かつ科学的根拠のもと、機能性表示ができるようにするという流れで動いているという。 米国では90年代半ばから表示など規制緩和で栄養補助食品市場が2桁台に伸張
参考とする米国のダイエタリーサプリメントの表示制度とはどのようなものか。 DSHEAでは、健康に寄与するという科学的論拠が明確であれば、ラベルへの記載が容認された(ただし、特定疾患の診断・治療・予防などを示す表記は不可)。また雑誌の記事などに掲載されている情報も販売の際に使用が可能となった。製造業者は、表示の正当性を裏付ける科学的根拠をFDAに通知する義務はないが、発売後30日以内に商品名や成分内容を明記したものをFDAに届出することが義務付けられた。こうしたDSHEAの恩恵を受け、栄養補助食品市場は毎年2ケタ台の伸長率で好景気に湧いた。
今日本では、このアメリカの表示制度を参考に「一般健康食品の機能性表示の緩和」が進められているというが、DSHEAについてはこの20年間、さまざまな不具合の補正が行われている。 米食品医薬品局(FDA)では、'97-'99年にエフェドラの副作用事例の詳細な調査を行い、全体の47%に心臓血管、18%に中枢神経に異常が認められたとしている。2003年には米国でエフェドラ配合のダイエット剤を摂取したメジャーリーガーがトレーニングを終えてから24時間内に死亡するという事件も起きている。 1998年4月、FDAがDSHEAの補正で規制案 こうしたエフェドラやリラックスハーブといわれるkava kavaなどサプリメントの副作用の問題がクローズアップされ、次第にDSHEAの欠陥が論議の的となっていった。当然、FDAもDSHEAの補強に乗り出す。1998年4月に、FDAは体の構造/機能に関するサプリメント製品の表示に対し、次のような規制案を発表した。
1) 具体的な疾患を示してはいけない FDAの審査を受けなければ、疾患の予防・治療に関する表現は不可 こうした規制に、ダイエタリーサプリメント産業は反発しFDAに抗議した。そこでFDAはさらに検討を重ね、2000年1月、修正案を発表した。それによると、製造会社が研究によって有効性を証明できた場合に限り、製品に体の構造や機能に影響を与える表現が許可される。ただし、FDAによる審査を受けていなければ、従来どおり疾患の予防、治療、診断に関する表現は許されない。つまり、ラベル表示、宣伝文句、製品名を通して、"骨粗しょう症を予防する"、"閉経期後の女性の骨を強化する"といった暗示するものは許可されないとした。 一方、健康を維持するという表現、つまり"健康な循環システムを維持"や疾患を表わさない"筋肉強化"、"リラックスさせる"といったものは許可された。また、妊娠や更年期、その他年齢に関連する一般的症状(例えば、"月経前症候群の一般的症状に"や"ほてりに"など)に関する表現も許された。しかし、老化、更年期に関するもので骨粗しょう症など重大疾患を示唆する表現は問題とされた。 こうしたFDAの規制については、やはり微妙な点で指摘される商品も多い。とくに売れ筋のダイエットや免疫関連の商品は遡上に上がりがちだ。昨年10月、FDAの親機関である保健社会福祉省(HHS)の監査部門、監査総監室(OIG)が、サプリメントのラベル表示を疑問視する報告書を発表し、FDAの法的権限を拡大するよう求めている。 OIGではサプリメント表示に関する調査報告書「栄養補助食品〜連邦規制に適合しない構造機能表示」の中で、ダイエットおよび免疫関連のサプリメント127点を対象に調査したところ、全体の7%にあたる9点に、「表示はFDAの評価を受けていません。商品は病気を診断・治療・予防するものではありません」という法律で定められた免責表示がなかったとした。 また、全体の20%にあたる26点に、「咳を止める」「心臓病・高血圧を予防する」「天然成分がガンを攻撃する」といった法律で禁じられている疾患の治療効果が掲載されていたとした。こうしたことから、OIGは、FDAに管理体制の強化とラベル表記への法的権利の拡大を求めた。 このOIGの動向にサプリメント業界は危機感を抱いた。本来DSHEAでは、商品への「構造機能表示」は認められている。例えば、「カルシウムは骨を強化する」「〜は免疫力を高める」といったことだ。だが、特定の疾患に効果があるという、医薬品に記載されているような「薬効表示」は違法となる。例えば、「高血圧を下げる」「骨粗しょう症を予防する」といったこと。 これまで、DSHEAでは「薬効表示」はFDAの承認が必要だが、「構造機能表示」では必要ないことから、薬のような複雑な手続きを踏まず効能を謳った商品を発売できるという恩恵が得られていた。しかし、OIGの主張に、「構造機能表示」も「薬効表示」同様、FDAの承認が必要という含みを感じ取り業界は反発を深めた。DSHEAを巡っては、そうした経緯がある。 これまで以上に取り締まりを強化 こうした変遷を辿ってきたアメリカのダイエタリーサプリメント業界だが、現在DSHEAで承認されているような、商品への「構造機能表示」が日本でも適用されるとなれば、画期的なことではある。ただ一方で、薬事法による表現規制の絡みもあり、簡単に収まるような問題ではなさそうだ。 消費者庁では健康食品の「表示の取り締まり」を重要な業務としており、新たな表示制度が施行されれば、これまで以上に取り締まりの業務を強化していく可能性もあるとしている。 とくにインターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示の監視を重点的に実施し、法令違反が見つかった場合には、事業者に対して適正な表示への変更を求めるだけでなく、サイトやショッピングモールの運営事業者にも注意喚起を行うという。 近年は、健康食品を使った「送りつけ商法」なども横行している。今年7月には消費者委員会を通じ、各都道府県や事業所に対し新たな注意喚起や情報提供を行うことなどを通達したという。 消費者庁では、現在、新表示制度が検討されているが、米国の表示制度の良い部分は見習うものの、日本独自の制度をつくりあげるという基本概念が重要としている。
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