免疫は私たちの体を病気から守る防御システムである。しかし、この免疫が時に私たちに襲いかかることがある。厚生労働省の指定する難治性疾患は135あり、このうちの1/4が免疫に関わっている。また「特定疾患」 の56疾患についても、その1/3以上に免疫が関っている。

元来、免疫とは自己と非自己を認識し、非自己を攻撃、排除する防御システムである。ところがこれに何らかのエラーが生じると、自己を敵とみなして自らを攻撃するようになる。これが「自己免疫疾患」と呼ばれるもので、関節リウマチなどが知られる。

他にも、１型糖尿病や多発性硬化症などが挙げられるが、前者は免疫により膵臓がダメージを受けた場合、後者は中枢神経がダメージを受けた場合に生じる。バセドウ病や橋本病も免疫による甲状腺への攻撃で起こる。

なぜこうした免疫のエラーが生じるのかについては明らかになっていない。そのため、「自己免疫疾患」の決定的な治療法はまだ見つかっていない。

渋谷 氏は治療の決定打が見出せない理由を2つ挙げる。 一つは免疫が全身に行き渡り、全身のさまざまな臓器で免疫疾患に陥る可能性があ ること。2つ目は、免疫が自己を攻撃する「きっかけ」がつかめないことである。

アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギーも免疫疾患の一種だが、こうした「自己免疫疾患」の解明が急がれる。

米国食品医薬品局（FDA）、「グルテンフリー」（含有量20ppm未満）を要請

ところで、今アメリカではセリアック病を巡って、米国食品医薬品局（FDA）が米国食品業界に新たな食品表示規制を設けようとしている。

セリアック病の患者は小麦やライ麦などに含まれる蛋白質の一種グルテンを摂取すると、免疫系が小腸の内膜を攻撃し内皮の繊毛を損傷、小腸から栄養分を吸収が困難になる。セリアック病は、慢性の下痢や腹部の痛み、貧血、さらにアレルギー症状を伴う。アメリカでの患者数はおよそ300万人といわれている。

これに対し、今月8月2日、米食品医薬品局（FDA）は、「セリアック病の症状悪化を防ぐには、グルテンフリーの食生活が必須」とし、「グルテンフリー」を食品業者に要請。「グルテンフリー」の新たな定義を「小麦やライ麦などに含まれる蛋白質の一種グルテンの含有量が20ppm未満」とし、実施までに1年の準備期間を設けた。また同様に、「ノーグルテン」「フリー・オブ・グルテン」「ウィズアウト・グルテン」など類似の表示についても規制をかけた。

現在、アメリカでは5人に1人が何らかのアレルギーを持っているといわれている。そのうち、食品によるアレルギーは全体の約６％を占める。アメリカではグルテンによるセリアック病のような深刻な症状ではないにしても、グルテンに過敏に反応する人々は2000万人を超えるといわれている。