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食品の50℃湯洗、鮮度アップも酵素は失活
食品に含まれる酵素は熱に弱く、ディメリット

『週刊ポスト』2012.5.18号で、食感革命「50℃洗い」驚異のレシピと題し、肉や野菜などを50℃で洗うと見た目が活き活きすると謳っている。カラーグラビアで派手に鮮度アップを強調するが、食品に含まれる酵素は47.7℃で失活するといわれている。はたして、見た目のメリット以上に健康へのディメリットはないのか。

しなびた葉も驚くほど蘇った

記事では、冒頭で食品の50℃湯洗をこう紹介する。
しなびた野菜を50℃の湯で洗うと、途端に鮮度が蘇る。この「50℃洗い」を発見したのが、スチーミング調理技術研究会の平山一政氏代表。平山氏は、蒸気技術工学の専門家で、早稲田大学社会システム工学研究所の研究室長だった頃、100℃以下の低温で蒸す調理法「低温スチーミング」を開発。「50℃洗い」はこの研究の過程で発見された「奇跡」だった。

さらにこのように続ける。
「低温蒸しのテストを繰り返すうち、50℃で蒸すと野菜が元気になるという不思議な現象に遭遇したのです。そこで50℃の湯で洗ってみると、水洗いより土などの汚れがよく落ち、しなびた葉も驚くほど蘇った。野菜嫌いの原因にもなっているアクや臭みまで抜け、トマトなどは糖度も上がりました」(平山氏)

食品の酵素は熱に弱く、47.7度で失活

カラー写真で掲載された食品を見る限り、ビフォーと2分間の50℃湯洗のアフターでは後者のほうが鮮度アップが一目瞭然である。「食感革命」と謳うが、確かに食卓を預かる多くの主婦たちから支持を得られそうだ。しかし、ここで懸念されるのが食品に含まれる酵素の問題である。生体の恒常性維持に不可欠な食品の酵素は熱に弱い。47.7度で失活するといわれている。

記事では50℃の湯洗方法や効果をこう紹介する。
野菜の「50℃洗い」は、ボウルに50℃の湯を注ぎ、素早く野菜全体を湯に浸し、1分から3分間程度洗う。専用の温度計を用意し、43℃以下になったら湯を足して温度を保つ。 例えばホウレン草だと、緑の色も濃くなり、葉脈がしっかり浮き出て、見違えるほどの鮮度がアップする。味は、洗う前は独特のエグミと青臭さを感じるが、50℃湯洗後はそれが感じられず、葉も柔らかく、茎はシャキシャキと瑞々しい。

ローフード、食品の70%ほどを非加熱食品に

ところで近年、欧米で「ローフード」という食習慣が流行っているのをご存じだろうか。1900年代から欧米を中心に提唱されてきた食生活で、食品に含まれる酵素の生体への効用に着目、熱に弱い酵素を効果的に摂るため摂食の70%ほどを非加熱食品にするというものだ。加熱調理された食品は、酵素の効力が失活しているため、もはや「死んだ食物以外の何物でもない」とされている。
ベジタリアンはまさにこのローフードの実践者といえるが、ちなみに、ガンの食事療法としてよく知られるゲルソン療法でも70%を生食にするよう勧めている。

この酵素とはどのようなものか。人体中に3000ほど存在し、食物の消化吸収や体のさまざまな機能の円滑化に関係しているいわれている。例えば、酵素が不足すると、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をいくら摂ってもそれらを活かせない。生体での生化学反応を仲介するのが酵素の役目で、酵素が十分に働かなければ、体が健全に機能しなくなる。

20世紀前半までは、アメリカの動物園では人と同様に加熱調理した餌を動物に与えていたが、その頃は、動物に病気が多く死亡率が高かった。加熱調理した餌で、動物たちは心臓病、糖尿病、ガン、肝臓病など人と同じ病気を起こしていたという。しかしその後、生の餌の重要性が認識され、生の餌にしたことで病気を起こさなくなったという(参考文献:E.ハウエル著『医者も知らない酵素の力』中央アート出版刊)

また、ネズミに加熱した餌を与えた場合、2年の生存だったが、生の餌だと寿命が3年だったという報告もある。生の餌だと寿命が30%ほど長くなるという。

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