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健康立国モデルを世界に提示〜「第6回JACT大会2002」

12月21・22日の両日、東京女子医科大弥生記念講堂で日本代替・相補・伝統医療連合会議による「第6回JACT大会2002」が開催された。この中で、JACT理事長の渥美和彦氏は、日本での医療改革の必要性と、世界一の長寿国として「健康立国モデル」を提示すべき役割を説いた。

米国では、9割以上の医療関係者が「通常医療とCAMとの統合がベスト」と回答

「治療医学から保健・予防の医学に」---。米国や日本など世界の先進諸国が一様に頭を悩ませているのが国民医療費の高騰。もはや医療経済の破綻は必至ともいえる状況だ。統合医療を目指す日本代替・相補・伝統医療連合会議(JACT)では、さまざまなCAM(相補・代替医療)*注1により、病気を未然に防ぐ必要性を提唱してきた。

講演の中で、渥美氏は「これから世の中が保健・予防の医学に大きく変わっていく。医学教育の改革が必要」とし、CAMの推進の必要性を強調した。
'90年代に入って米国では一般国民や医療従事者のCAMへの傾倒が強まり、3人にひとりがCAMを利用する('93年ハーバード大学・アイゼンベルグ教授ら調査)など、予防医学への認識が高まっていった。最近の調査でも、とくに医療関係者らにCAMが浸透していることが明らかとなっている。

渥美氏によると、米国で「CAMについての医学、看護、薬学の教師の賛成率」(M.J,Kreitzer,2002)を教師145人を対象に調べたところ、「臨床治療は通常医療とCAMとの統合がベストである」という問いに、医学が91%、看護が96%、薬学が94%と高い賛成率を示したという。
また「多くのCAMのアプローチは、症状や病気の治療に望みを与えてくれる」という問いに、医学が83%、看護が96%、薬学が94%。さらに、「CAMに対する知識は教師の私として重要である」という問いにも、医学が91%、看護が98%、薬学が87%であったという。ちなみに、「CAMは公衆の健康を脅かす」という問いには、それぞれ10%以下であったという。

米国では、西洋医療とCAMとの統合化が着実に進みつつある。しかしながら、「日本では未だ統合医療もCAMもわからない人が大勢いる。今後、日本の医療教育をどう変えていくかが、大きな課題となる」と渥美氏は指摘する。

日本には健康・長寿の原因を分析し、世界に提示する役割がある

さらに、「日本の一番大きな欠点は、将来計画がないこと。米国では戦略研究というものがあって、将来を見透かして医療がどうなるのか、経済がどうなるのか、世界がどうなるのか、そこでわが国はどうするのかということを考えている。日本は健康医療改革を行い、教育、制度、法律、税制を変えていかなければいけない。統合医療の総合的研究が必要」と渥美氏は述べた。

そのため、JACTでは、日本で統合医療を推進するための国家戦略の検討委員会を設置し、海外の情報収集、統合医療の目標、評価基準、分析方法、各療法の有効性・安全性、研究・検討データベースなど実践研究を行い、5年、10年、20年の国家保健医療戦略を練るという健康立国のモデルプランを政府に提案したという。

こうした取り組みの中で、「日本が健康立国のモデルを世界に提示する必要がある。日本は世界一の健康長寿国になったが、8年、10年経つとフランスや米国や中国が追いついてくる。日本は健康・長寿の原因を分析し、世界にそのモデルの要素関連などを提示する責任と義務がある」と渥美氏はいう。

「我々は、笑顔や言葉で医療に参加できる」(永六輔さん)

今大会では、シンポジウム「CAMとEBM」やワークショップ「癌治療のCAMの実際」、「日本における測定・治療機器」「日本独特のCAM」などが行われ、参加者の関心を集めた。

大会2日目には、放送タレントの永六輔氏が「こうあってほしい日本の医療」と題して講演。医療現場における会話や笑顔での対応の重要性を挙げ、「笑顔や言葉でどれだけ医療に参加できるか。薬でも機具でも最新の医療施設でもない、言葉が大事。やさしい響きで、面白くて、苦痛を取り除く言葉。我々は、そうした言葉のもつ大きな力を認識し、身につけていく必要がある」と述べた。

また、在宅医療について、「昨年より、長野県が男性の長寿の1位になった。長野という自然環境の厳しいところで、老人の医療費は全国で最下位、しかも寿命はトップ。長野県は在宅医療を20年かけてやってきた。できるだけ薬を渡さない、畑仕事でも何でもさせ、地域のボランティアと車で動き回る医療スタッフで支えてきた。そうしたことが長野を日本一にした」と述べ、長野モデルともいうべき長寿システムを日本の医者や医学界は着目すべきであると強調した。

ホメオパシーは波動医学、現存の医学の中で一番ホリスティックなもの

大会では、この他、「21世紀の医学・ホメオパシー」と題して、日本の代替医療研究の第一人者として知られる帯津三敬病院名誉院長の帯津良一氏が講演。ホメオパシー療法*注2に関して、「ホメオパシーは臨床で2年半やってきた。現存の医学の中で一番ホリスティック*注3なのがホメオパシーではないか」と述べた。

ホメオパシー療法は英国や米国など医療関係者の間でも人気が高まっている。帯津氏は2000年1月にホメオパシー医学会を設立しており、「西洋医学の効きにくい時にこれを用いるといい。ホメオパシーは波動医学だと思う。物質性を徹底的に排除することによって薬の持っているエネルギー場が人間のエネルギー場に働きかけ、病気を治していく。まさにバイブレーショナルメディスンといっていい。物質性を徹底的に排除したほうがエネルギーとしては純粋なものになるため、希釈すれば希釈するほど効果があると考えられる」と見解を述べた。

*(注1)CAM(Complymentary and Medicine):相補・代替医療の意。一般的に西洋医療以外の医療を指す。カイロプラクティック、漢方、鍼灸、アーユルヴェーダ、心理療法、イメージ療法、気功、食事(栄養)療法、アロマテラピーなどの伝統・伝承医療。WHO(世界保健機構)によると医学的論拠が認められるCAMは世界におよそ100あるといわれる。

*(注2)ホメオパシー療法:200年ほど前、ドイツのザムエル・ヘーネマン医師によって作られた療法。かぜで例えると、かぜをひいて熱が出るのは、からだが病気と戦っているため。熱を無理に下げると、体は病気と戦うのをやめてしまう。ホメオパシー療法は、熱を適度にあげることでもともと人間に備わっている自然の治癒力を高め病気を退治するというもの。ホメオパシー薬の投与で病気に抵抗する体の反応を引き出し治療効果をあげるという仕組みだ。治療には、生薬、鉱物などの自然物を何度も希釈した錠剤や液状の薬を使う。量が少ないほど効果があるといわれる。
米国では、ホメオパシー薬は食品・医薬品局(FDA)規定の「薬」として扱われており、「内科医または医療ライセンスを持った者しか患者に薬を処方したりすすめたりできないはず」と、素人による医療行為に疑問の声もあがっている。

*(注3)ホリスティック:ギリシャ語の「holos」(全体)が語源。「全体的」、「関連」、「バランス」などと訳される。「ホリスティック医学」は人間を「体・心・気・霊性」等の有機的総合体ととらえ、社会・自然・宇宙との調和にもとづく包括的、全体的な健康観に立脚する。(--「日本ホリスティック医学協会」より--)

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