英国セラフィールド 1950〜1983年に白血病発症者7人
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福島原発、海洋放射能放出量1.5京ベクレル、人体への影響は
〜放射能放出総量を日本原子力研究開発機構が試算
9月9日付け朝日新聞で、日本原子力研究開発機構が、3月21日〜4月30日までに福島第一原子力発電所から海へ放出された放射能の総量を試算したと報じている。今回は大気からの降下分も加えた総量となるが、はたして人体にどのような影響があるのか。
福島原発からのセシウム137、3600兆ベクレルが海洋に放出
日本原子力研究開発機構が、3月21日〜4月30日までに福島第一原子力発電所から海へ放出された放射能の総量の試算を発表した。 海洋では魚介類による食物連鎖が指摘されているが、放射性物質は広範囲に拡散される。はたして、人体にどのような影響がもたらされるかは未知数だが、過去の似たような事例ではどうであったか。 セラフィールドの白血病、複数の疫学調査で放射能との因果関係が見出されず
海洋への放射能流出というと、いまだ小児白血病多発伝説で語られる、英国セラフィールドの事例が挙げられる。
概要は次のようなことだ。 これに対し、D.ブラックを中心とした研究チームが調査に乗り出すが、英国放射線防護委員会(NRPB)の返答は、放出された放射性物質の濃度は自然放射線よりも低く、小児白血病の発症にはその400倍必要というものであった。D.ブラックは1950年代の同施設操業開始後の数年間に2基の黒鉛炉から流出した酸化ウランにも着目するが、これもNRPBの評価は小児白血病発生率の100分の1程度しかなく、ドンレイも同様とみなされた。 こうしたことからセラフィールドとドンレイの小児白血病発生異常は放射線被曝以外によるものと考えられるようになった。その後も、セラフィールドで100mSv以上被曝した父親を持つ小児への異常発生説などが挙げられたが、複数の疫学調査でも放射能との因果関係が見出されなかった。 また近年、キンレンが新しい核施設ではさまざまな人々が集まりニュータウンができるが、そこでの人々との接触で幼児は白血病に感染しやすいという感染説を主張。1999年、カンブリア地方で1969年-1989年の間に生まれた12万人の子供の健康調査の分析で、1) 両親がカンブリア以外からきている、2)両親またはその一方がカンブリアからきている、を比べたところ、1)のほうが子供が6歳までに白血病になるリスクが2.5倍高いことが判明、ここでも放射能との関係性が否定された。 セラフィールド、4京1000 兆ベクレルのセシウム137(チェルノブイリ事故の2分の1〜3分の1相当) が放出 結局、セラフィールドにおける20数年におよぶ放射能と小児白血病発症との関連性についての論争では、「因果関係が見出せない」として終止符が打たれた格好となっている。しかし、これを京大原子炉実験所のI氏が文献を徹底的に調べたところ、放射能排出については、実際には、大量の放射性廃液が放出されていたことがわかったという。 一体、どれほどの量だったのか。セラフィールドでのセシウム137 の放出量は4京1000 兆ベクレル(約110 万キュリー)で、チェルノブイリ事故で爆発した原子炉から放出された量の2分の1から3分の1に相当。また、プルトニウムの放出量は610 兆ベクレル(1万6000 キュリー)で、長崎原爆で使われたプルトニウムの約2個分。その他、大変な量の放射能が、英国とアイルランドの間の狭いアイリッシュ海に放出されていたという。結論として、I氏は、シースケール村の白血病の原因は、セラフィールドから放出された放射能にあると考えるのがもっとも素直な判断としている。 セラフィールド、1950〜83年までの33年間に白血病発症者は7人 では、これほどの放出量でどれほど深刻な事態がもたらされていたのかというと、1950年の核燃料再処理施設の稼働から1983年までに白血病の発症者は7人。4年に1人の割合の発症である。 現在日本では白血病の発症者は年間7,000人以上といわれている。もちろん、その多くが原発周辺地域に住んでいるわけではない。他にも、原発周辺地域での小児白血病発症がドイツのKiKK研究などで指摘されているが、こちらも明確な因果関係は見出せていない。 これまで何かと白血病の発症との関連で放射線が引き合いに出されてきたが、はたして、放射線がどの程度関わっているのか。日本で年間7,000人以上が発症するといわれる白血病だが、発症原因はいまだ不明とされている。 ・
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