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コレステロールの善悪、基準値めぐり学会論争 『週刊朝日』(2010.11.19日号)で、「コレステロールは高めが長生き〜ついに学会論争に発展!」と題し、コレステロール基準値をめぐる学会の論争を報じている。日本脂質栄養学会では、現在のコレステロール基準値が低く設定されていると指摘。疫学研究では、コレステロールの高い人のほうが死亡率が低く、長生きと主張する。
死亡率が最も低いのは総コレステロールが240〜259mg/dL
いわゆる悪玉のLDLコレステロールは140mg/dL以下に、総コレステロールは220mg/dL以下に---。現在、日本動脈硬化学会がガイドラインで示すコレステロール基準値である。これにより薬剤の使用が判断される。 この基準値をめぐり、日本脂質栄養学会と日本動脈硬化学会で論争が続いている。日本脂質栄養学会では、「コレステロール基準値が低く設定され、無駄な投薬が行われている」「総死亡率でみると、コレステロール値が高いほうが死亡率が低い」と主張する。 週刊朝日の記事では、現在の日本動脈硬化学会のコレステロール基準値では、中高年男性の3割以上、閉経後女性の半数以上が高脂肪血症と診断されかねない、コレステロール低下薬のスタチン類などの市場規模は3千億円、と報じている。 コレステロール基準値には男女の性差が示されていないことも問題で、日本脂質栄養学会の浜崎智仁理事長は「無駄に医療費がかかり、副作用の危険にさらされる女性が大勢いる」「疫学研究でみると、最も死亡率が低いのは総コレステロールが240から259の層で、基準値より20以上高い。コレステロールが高めの層がいちばん長寿」と述べている。 また、コレステロール基準値の根拠となる論文について、「過去5年、海外で発表された研究で、高脂血症の患者に対するコレステロール低下薬の有効性を示すデータは一つもない。確かにそれ以前には多くあったが、医師の主観が入ったり、手法に問題があったりで、信憑性に欠ける」(同)と指摘している。 LDLコレステロールは悪玉ではなく、食品からの摂り過ぎも起きない 日本脂質栄養学会では、9月に「長寿のためのコレステロールガイドライン」を公表している。この中で、コレステロールの摂取が増えても血清コレステロール(TC)値は上がらない、40〜50歳以上では、TC値の高い群でがん死亡率や総死亡率が低い、など示している。
なにかと問題視されがちなコレステロール、とくに悪玉とされるLDLコレステロールとは一体どのようなものか---。
大櫛氏は、体内でのコレステロール生成のメカニズムを次のように解説する。 食品から摂るコレステロールが増えたとしても、肝臓は少し休むだけで、血液中のコレステロールレベルは一定に保たれる。胆汁や男性・女性ホルモンもコレステロールが材料になる。 欧米では190mg/dL以上が薬物治療の検討基準
こうしたコレステロールに対し、医療的にはどのような対処がなされているのか。 日本脂質栄養学会では、この性差・年齢を無視した基準値を問題視している。前述の浜崎氏は、約1万人を13年間追跡した調査で、男性では総コレステロールが上昇するに従い、冠動脈疾患死が増えているが、女性では統計的な差はないという。 女性はコレステロールを溜めたり使ったりする能力に優れ、男性と比べコレステロールが高い。現在の基準でみると、女性は男性に比べ2倍脂質異常症ということになる。実際に厚労省の調査でも、日本ではコレステロール低下薬を女性が男性の2倍服用している。 また、LDLコレステロールは加齢とともに増える。これは細胞膜の強化や免疫力の低下を補うためだが、現在の基準では、高齢者ほど脂質異常症が多いことになる。 こうした性差・年齢を無視した基準で、女性や高齢者にコレステロール低下薬が処方されているという。 「男性では100mg/dL未満、女性では120mg/dLで急激に死亡率が上昇している。男女ともLDLコレステロールの高い人のほうが死亡率も低く、長生き」と主張する日本脂質栄養学会。欧米では、LDLコレステロール190mg/dL以上が薬物治療の検討基準とされている。
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