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総コレステロールやLDL-コレステロール、高いほうが死亡率が低い
日本脂質栄養学会「長寿のためのコレステロールガイドライン(2010年版)」

2010年9月3日(金)・4(土)、名鉄犬山ホテル(愛知県犬山市)で、「日本脂質栄養学会 第19回大会」が開催された。同学会では一貫して「コレステロール低下医療の危険性」を唱えているが、今回、「長寿のためのコレステロールガイドライン(2010年版)」を提示。改めて、コレステロール低下医療からの脱却を訴えた。

「総コレステロール値は高い方が長生き。専門家の間では10年以上前から分かっていた」

「このガイドラインは、真に必要な情報をまとめ、無駄な、有害な医療をなくすことを目的として作成されている」。
浜崎智仁氏(日本脂質栄養学会 理事長)はガイドラインの序文の最後をそう括っている。  

高脂血症の数値については動脈硬化学会などのガイドラインに示されているが、よく知られるのが、いわゆる悪玉といわれるLDL−コレステロールは140mg/dL以下に、総コレステロールは220mg/dL以下にしましょう、といったもの。

しかしながら、この数値の設定には大きな問題があると浜崎氏は指摘する。まず、総コレステロール値が高いと総死亡率がどうなるか、そのデータが全く示されていないこと。

実際に、「総コレステロール値が高いと総死亡率が高まる」のか---。
むしろ実体はその逆で、「総コレステロール値あるいはLDL-コレステロール値が高いと、日本では総死亡率が低下する」「総コレステロール値が高い方が長生きする」。しかも、そうした事実は、専門家の間では10年以上前から分かっていたという。

「これまであまり知られていなかった多くの事実が含まれている」

「長寿のためのコレステロールガイドライン(2010年版)」では、これまであまり知られていなかった多くの事実が含まれている。それが可能になったのも、編集委員のほとんどが製薬企業から研究費等をもらっていないため、という。

日本動脈硬化学会のガイドライン作成者の多くは高脂血症治療薬メーカーから数千万あるいは数億の研究費を取得している(私学の場合は金額不明)ことも判明している。 コレステロールを低下させる薬剤のスタチン類は日本で年間2500億円を売り上げるが、関連医療費はその3倍に達し、私達の税金がかなり使われていると浜崎氏は指摘する。

「長寿のためのコレステロールガイドライン」では、各編集委員の利益相反情報も記載しているが、他のガイドラインにはこれまでこうした情報開示はなかった、という。
ちなみに、2008年3月30日付けの読売新聞は第一面で、メタボリックシンドロームの基準を決めた医師の9割に製薬企業から膨大な寄付金が渡っていたことを報じている。医師と製薬企業、官僚と製薬企業の癒着の構図がつまびらかにされたが、そうした背景の下で策定されたガイドライン、はたして都合の良い意図的な操作がなされていなかったか、疑われても仕方ない。

これと同じような話が海外でも大きな問題になっている。
昨年12月、ノーベル平和賞を受賞したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が主張するCO2排出=温暖化説の論拠となった基礎データが捏造されていたことが発覚、クライメートゲート事件(ウォーター事件になぞらえ)と呼ばれ、欧米では一大スキャンダルになっている。

世界中に温暖化が原因がCO2排出であると喧伝した内容の全てが科学者や研究者らの改ざんされたデータに基づいたものであるということが白日のもとにさらされてしまったのである。

日本では政府もTVメディアも体面が悪いのかほとんど報道しないが、何もなかったことにしたい、では済まされないであろう。国民をCO2温暖化説で振り回し、CO2排出権ビジネスで翻弄した責任をどのように取るつもりなのか。

「長寿のための コレステロール ガイドライン(2010年版)」(要旨)

 【背景および編集方針】より

“動物性脂肪とコレステロールの摂取を減らして高リノール酸植物油を増やすと、血清コレステロール値が低下して動脈硬化性疾患が予防できる”というコレステロール仮説が、約半世紀前に出され、現在まで医療の現場では広く受け入れられてきた。

コレステロール値を下げることによって動脈硬化性疾患が予防できるとする情報が国連WHOや欧米から伝えられ、わが国の医学界もこれを広く受け入れてきた。

実際、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2007年版)」や日本循環器学会の「虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2006年改訂版)」(これらを循環器系学会ガイドラインと略)は欧米発信の情報をほぼ受け入れており、後者は関連する10学会の共同で作られたものであって500余の学術論文が引用されている。

このコレステロール低下医療の妥当性を示す主要な根拠として、コレステロール低下薬、スタチン類が心疾患予防に有効であったとするいくつかの論文が重視されている。

ところが近年多くの新しいエビデンスが集積し、これら循環器系学会ガイドラインにはいくつかの解釈に誤りがあること、その内容は大部分の人にとってむしろ危険なものとなっていることがわかった。

一方、臨床試験の公明性を確保するための新法が2004年に欧米で施行された。それ以来、企業と直接の利害関係のない研究者らにより新法にそって行われた臨床試験では、“ス タチン類はLDL−コレステロール値を下げるが心疾患予防には効果がない”ことが明らかにされた(2006年以降)。

そこで、現在の医療分野におけるコレステロール低下一辺倒の趨勢に問題を提起し、方向転換を図ることを目的として、日本脂質栄養学会のもとに「コレステロール ガイドライン策定委員会」が設置された。

本委員会は総死亡率が最も重要なエンドポイントであるという理解のもとに、“長寿を目指したコレステロール ガイドライン”を策定した。対象とした論文は原則として、調査対象者が千人単位以上あるいは追跡期間が数年以上のものである。

この「長寿をめざしたコレステロール ガイドライン(2010試案)」は、今後、この分野の他の専門家からの意見を集約し、より良い方向に改定される予定である。

【長寿のための コレステロール ガイドライン(2010年版)】

第1章 コレステロール摂取量を増やしても血清コレステロール(TC)値は上がらない

第U章 “高リノール酸食物油の摂取を増やし動物性脂肪とコレステロールの摂取を減らす"という従来の栄養指導は、むしろ心疾患、癌などを増やす危険性が極めて高く、これを勧めない

第V章 血清コレステロールの心疾患に対する相対危険度は調査集団により大きく変わる。集団中の家族性高コレステロール血症(FH)などの割合がクリティカルな因子であると解釈すると、この変動性が合理的に説明できる可能性がある

第W章 コレステロールの基準値を決める上で最も主要なエンドポイントは総死亡率である。40〜50歳以上、あるいはより高齢の一般集団では、TC値の高い群で癌死亡率や総死亡率が低い。これらの集団には、コレステロール低下医療やコレステロール低下をめざした食品を勧めない

第X章 女性に対するコレステロール合成阻害薬、スタチン類の使用は不要とされてきたが、男性に対しても医師の合理的な判断による特別なケースを除き、動脈硬化性疾患予防にスタチン類は不適切であり、勧めない

第Y章 血清コレステロールの善玉(HDL−C)・悪玉(LDL−C)説は、その根拠が崩れた

第Z章 中性脂肪値が150mg/dL以上でも脂質異常症とはいえない。一般集団では、中性脂肪値の高い群のほうが総死亡率は低いという結果も報告された

第[章 動脈硬化性疾患およぴその他の炎症性疾患を予防するためには、ω6系脂肪酸の摂取を減らしω3系脂肪酸の摂取を増やすことを勧める

第\章 家族性高コレステロール血症などの先天性遺伝因子をもつ人に勧める脂質栄養

第]章 脳卒中はコレステロールや動物性脂肪摂取の多い群、血清脂質レベルの高い群ほど発症しにくく、脂質レベルの高い群のほうが予後は良好である

第]T章 わが国の食環境でみられる植物油脂の供給増の方向は危険である。動物に有事作用を示す植物油脂の代わりに動物性脂肪を肥満にならない程度に摂取すること、またそれを可能とする食環境作りを勧める

第]U章 「動脈硬化性心疾患予防ガイドライン2007年版-日本動脈硬化学会」の問題点

第]V章 欧米から発信されている脂質栄養情報を妄信しないよう勧める

第]W章 長寿をめざした脂質栄養の勧め--要約

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