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妊娠適齢期女性の過度なダイエットに警鐘
日本で高まる低出生体重児の出生率

2010年7月3日(土)、早稲田大学で、教育最前線講演会「「食」と「健康」の教育を考える〜いま問い直される「栄養」とは?」が開催された。 近年、日本で高まる低出生体重児の出生率が指摘、現代人が幼児期から直面する健康問題などが取り上げられた。

低出生体重児、OECD加盟国中で日本が1位

日本の低出生体重児の出生率は9,1%、OECD加盟国の中で日本がトップ。
そう指摘するのが、福岡 秀典氏(早稲田大学総合研究機構 胎児期エピジェネティクス制御研究所 客員教授)。

低出生体重児とは、いわゆる未熟児、2,500gに満たない新生児をいう。福岡氏は、「胎児期の「食」から未来の「健康」を考える」と題した講演で、「日本では、赤ちゃんの出生時の平均体重が年々減少傾向にある。平均すると現在10人に1人の割合で低出生体重児が誕生している」と指摘。

低出生体重児の原因としては、妊娠適齢期女性の痩せ、喫煙などが考えられている。「日本女性の、痩せていれば美しい、という考え方には国の将来のためにも警告を発するべき。歴史的に、痩せている女性が増えている時期というのは国が衰退傾向にあるという見方もある」と福岡氏はいう。

子宮内環境で低栄養の赤ちゃんが育つことが成人病の要因(バーカー説)

低出生体重児は、生まれながらに深刻な問題を抱えることになる。将来、生活習慣病などの疾患を発症しやすいといったことだ。「妊娠時、胎芽期、胎児の時に栄養不足だと、それでも生きていけるように体内変化が起こることが判明している」と福岡氏。

子宮の中で変化した体の仕組みは、生後、環境が変わってもそのまま維持されることが分かっている。栄養が少なくても生きていける体の胎児が、生後、飽食文化の日本で、栄養分の多い食事を急激に摂ることになる。
これが生活習慣病の発症率を高めているのではないかということが最新の研究で明らかになっている。今、こうした新たな生活習慣病発症のメカニズムが注目されているという。

この「子宮内環境で低栄養の赤ちゃんが育つことが成人病の原因となる。これに出生後、生活習慣でリスクファクターが加わると成人病が発症しやすくなる」という考え方は、「成人病胎児期発症説(バーカー説)」といわれている。

また、小児成人病の本態性高血圧症、脂質異常症、インスリン治療を必要とする2型糖尿病、肥満児など、耐糖能異常も日本で増加しているが、これらの要因も、胎児期の栄養状態との関連が指摘されている。

妊娠中の母体の栄養状態が、子どもの一生の健康を決めるといっても過言ではない。「健康な子どもを生むために母親は十分な栄養を摂る」ことは、幼児の将来的な成人病予防や健康確保の基本であることを十分理解する必要があると福岡氏は強調する。

世界的には低出生体重児は減少傾向に

一方、世界的には、低出生体重児は減少傾向にある。
途上国で25%を超える地域もあるが、例えば、アイスランドで3,1%、韓国で4,3%、中国で1,2%、日本は平均9,1%で、OECD加盟国の中でも1位。

日本でこれほど多くの低出生体重児が生まれているのは、飽食でありながら誤った食事、妊婦の栄養状態の悪さなどが考えられる。妊婦中の過度なダイエットなど、将来的に幼児の生活習慣病の原因となるものには気をつけなくてはいけないと福岡氏はまとめた。

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