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食品汚染に化学物質リスク、危ぶまれる次世代への影響 2010年3月2日(火)、社団法人日本食品衛生協会で、平成21年度 厚生労働科学研究・シンポジウム「化学物質と環境・健康」が開催された。私たちの身の回りに氾濫する化学物質。文化的生活に不可欠だが、常にリスクと隣り合わせで、とくに妊娠中の女性については胎児へのばく露が懸念されるため細心の注意が必要となる。
マグロや鯨など大型魚類、食物連鎖で水銀が蓄積しやすい
反捕鯨を謳う環境保護団体・シー・シェパードの日本の調査捕鯨船への過激な妨害活動が国際問題へと発展しつつある。鯨やマグロを食用としてきた日本の食文化を真っ向から非難する格好だが、その常軌を逸した抗議行動はともかく、「食」内容の面から、はたして真に守るべき食文化なのか日本でも再検討の必要があろう。 問題は、鯨やマグロのような大型魚類には食物連鎖で水銀が蓄積しやすいことだ。水銀は水俣病の原因物質としても知られる。「化学物質と環境・健康」と題した講演で、佐藤洋氏(東北大学大学院医学系研究科教授)は、妊娠中に水銀に汚染された魚を食べた母親には水俣病の症状がほとんど無かったにもかかわらず、子供に重傷があった例を報告。 メチル水銀は胎児に非常に高い毒性を示す。成人については健康影響への懸念はないが、胎児は高感受性により、幼弱な脳の発達に作用を及ぼすといわれる。また、出産後の授乳によるばく露も懸念されている。 脳下垂体ホルモンを注入すると、性行動は正常水準に回復(ラット実験)
また、九州大学大学品薬学研究員教授の山田英之氏は、『「食品汚染と次世代への影響」〜ダイオキシンによる胎児脳下垂体障害と発達への影響』と題して講演。 結果、TCDD投与ラットから生まれたラットは、健康なラットと比べ生殖組織の発達の遅延、発情時間の延長、交尾回数の半減などが見られたという。また、TCDD投入ラットの胎児に脳下垂体ホルモンを注入すると、性行動はほぼ正常水準へと回復することも判ったという。 また、TCDDの毒性は酸化ストレスの増加に起因すると考えられるため、抗酸化食品で防御できないか実験を重ねた。抗酸化作用の高いアルファ・リポ酸を摂取させたところ、TCDD投与後のラット児でも脳下垂体ホルモンと性ステロイドの低下を回復さることがわかった。しかし、ビタミンCでは回復は見られなかったことから、アルファ・リポ酸の補酵素としての機能に現状注目していると山田氏はいう。 胎児は成人の3倍も化学物質を経皮吸収しやすい また、東京農工大学大学院共生科学技術研究員準教授の渋谷淳 氏は「発達期と化学物質」と題した講演で、乳幼児は大人以上に化学物質の危険にさらされることを指摘。 妊娠中に形成される胎盤は、多環芳香族炭化水素、メチル水銀などの脂溶性化合物や鉛、エタノールなどを容易に通過させ、胎児の血中に入り込みやすいという。
こうした化学物質は低濃度でも胎児の発達中の神経系、内分泌系、生殖器に有害な影響をもたらす可能性があると渋谷氏はいう。 アスペルガー症やADHDは化学物質の摂取が原因 三重大学大学院医科学系研究科教授の成田正明氏は『「胎児と化学物質」〜妊娠中の化学物質と生後の発達障害』と題した講演で、アスペルガー症やADHDは化学物質の摂取が原因であると指摘。 胎児や子供の先天異常や催奇形性の外表奇形は、サリドマイド、アルコール、喫煙、水銀、ビタミンA酸化合物、ワクチン、抗てんかん、その他抗そう薬、抗不安薬、抗炎症薬などの妊娠中の摂取が原因と考えられている。 また、精神遅滞(知的障害)、運動発達遅滞、自閉症(アスペルガー、ADHDなど含む)なども妊娠中の化学物質の摂取が原因ではないかと成田氏はいう。
自閉症はここ数年急激に増加しており、以前は1万人あたり4-5人だったが、この30年で20-30倍になり、今や150人に1人は自閉症を患って生まれてくるという。
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