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国内外の食品の残留農薬規制、問われる「食」の安全の現状報告
厚生労働科学研究・シンポジウム「安全な食品で健やかな暮らし」

2010年2月12日(金)、九段会館で、シンポジウム「安全な食品で健やかな暮らし」(厚生労働科学研究主催)が開催された。このなかで、米谷民雄氏(静岡県立大学食品栄養科学部 客員教授)が「食品と残留農薬」と題して講演。「食」の健康不安要因として常に挙がる残留農薬の規制の現状について報告した。

平成18年、ポジティブリスト制度施行で残留農薬の規制対象広がる

「食」に関する不安要因については、食品添加物、ダイオキシンなどの環境ホルモン、水銀やカドニウムなどの重金属、遺伝子組み換えなどあるが、やはり筆頭に挙げられるのが残留農薬の問題。現状はどうなのか。

平成18年5月、ポジティブリスト制度が施行。食品中に残留する農薬、飼料添加物、動物用医薬品が一定量超えた場合、販売が原則禁止されることとなった。

それまで残留基準が制定されていた農薬等は283品目。従来の食品衛生法では、残留基準が制定されていない農薬等が食品から検出されても販売禁止にはならなかった。国内外で使用される多くの農薬等に残留基準が制定されていなかったという状況だ。

ポジティブリスト制度導入により、規制対象の枠が広がり、これまでのものを含む、国際的に広く使用されている農薬等799品目に残留基準が制定された。

それ以外の残留基準が定められていない農薬等については、食品衛生法に基づき「ヒトの健康を損なうおそれのない量」を定め、規制している。

販売等が規制されるのは、「一律基準」を超えた残留農薬等が見つかった食品。「一律基準」はこれまで国際評価機関や国内で評価された農薬等の許容量と国民の食品摂取量に基づき、専門家が0.01ppm(食品1kgあたり農薬等が0.01mg含まれる濃度)と設定しているという。

中国の穀物、豆、イモ類などの生産量が過去最高の伸び

国内での規制体制が整備される中、海外からの輸入食品の残留農薬規制についてはどうなのか。とくに、冷凍ギョウザ事件以来、消費者の「食」への安全志向が急速に高まっている。

2010年2月24日(水)、中央区立日本橋社会教育会館で、「第75回 食と環境のセミナー」が開催された。セミナーでは国際農林水産業研究センター所属の銭小平氏が「中国における食料産業の構造変化と食品の安全対策」について報告した。

銭氏によると、2004年以降、中国の食料生産量は6年連続増加。2009年度は穀物、豆、イモ類などの生産量が5.3億トンと過去最高の伸びとなったという。

中国における食糧自給率は95%で、不安定要因があるものの、中国政府は今後10年-20年間は高い自給率を保てると予測しているという。

食生活のスタイルは、一家庭における調理時間が短縮傾向にあり、食の欧米化が進んでいるという。また、加工品への需要が急速に高まり、外食需要も増加しているという。

日本でのポジティブリスト制度施行後、中国側で厳しい検査体制を敷く

中国国内での食の安全対策については、とくに富裕層が安全性を重視するようになっており、今後さらに価格から品質志向が強まることが予測されるという。

輸出については調整食品類が最も多く、主要取引先は日本と韓国。しかし、安全性が課題で、加工水準や付加価値の低さ、輸出企業の規模の小ささ、国際競争力の弱さなど課題が山積していると銭氏は指摘。

とくに日本でポジティブリスト制度施行後、中国側の検査体制が厳しくなり、輸出食品への安全対策から、高度な検査機器の投入を政府が積極的にすすめているという。

日本への輸出品については、検査コストや検査機器の調達コストが高くなり、日本国内の消費者価格に転換できずに企業収益にも影響するほどだが、それでも安全性を優先する傾向にあるという。

中国政府はこれまで輸出品にばかり検査体制を強化し、国内産品については検査体制が整っていなかったため、輸出品と国内品の安全性の差も大きいという。

2009年には中国では食品安全法が発効。また2010年2月には食品安全委員会が設立。国家として食の安全に全面的に取り組む姿勢だという。

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