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「食品添加物」に潜む不安〜壮大なる人体実験の途上「人工」「複合影響」

2010年1月28日(木)、都民ホール(東京都庁内)で、「第15回 食の安全 都民フォーラム」(主催:東京都福祉保健局)が開催された。「食に関するリスクを考えよう!〜食品添加物を理解する」をテーマに、基調講演「食品添加物のリスク評価」、パネルディスカッションなどが行なわれた。

「無毒性量」に100分の1をかけてADI(1日摂取許容量)を設定

食品添加物や農薬はADI(1日摂取許容量)を超えないよう低く設定されている。そのため長期摂取しても問題はない---。 当日、食品安全委員会委員の長尾拓氏は基調講演「食品添加物のリスク評価」でそう指摘した。
誰もが漠然とした不安を抱く人工合成化学物質、食品添加物。1人あたり年間で平均1kg以上摂るともいわれ、身体への影響が気にかかるところ。

食品添加物はノーリスクであると科学的根拠を縷々されても、フォーラムの最後、「それでもやはり食品添加物は避けたいか」と主催者側から問われれば、参加者の大半が「YES」と挙手。食品添加物の相互作用による「複合影響」は未知数、いまだ壮大なる人体実験の途上にあるといえる。

食品添加物は、「人の健康に影響を与えないもの」だけが厚生労働大臣により認められている。「人に影響を与えない」とは、人がそれを生涯、毎日摂取しても影響がないとの意。その量は、ADI(1日摂取許容量)として食品安全委員会より設定される。

食品添加物の「健康へのリスク評価」を行う食品安全委員会では、ADIを以下の手順で設定する。
1) 動物実験による毒性試験データ(急性毒性、慢性経口毒性、発がん毒性、遺伝毒性、催奇形性試験など)収集。
2) 1)から全く影響の出なかった量、「無毒性量」を見い出す。
3) 動物と人との違いや個人差、年齢などを考慮し、「無毒性量」に100分の1をかけてADIを設定。

食品への添加そのものが嫌なのではなく、「人工」であることに不安

なぜ、かくも食品添加物への不安を生活者は払しょくできないのか---。
同志社大学の心理学部教授の中谷内一也氏は、基調講演「消費者のリスク認知〜食品添加物を中心に」で、生活者の食品添加物に抱く不安心理について解説した。

この中で、行政サイドが食品添加物の安全性をいくら主張しても、「消費者の安全・安心を感じる基準が行政のリスクの評価基準と異なる」ため、心象的な理解が得られないと中谷内氏。そのことを示す調査を提示した。
調査は、成人2200名(無作為抽出)を対象に、51項目のハザード(危険の原因・危険物・障害物など)への国民不安を調べた(有効回答1192名)。調査期間は、08年1月31日〜2月11日。

結果、トップが「地震」、以下「地球温暖化」、「がん」、「新たな伝染病」、8番目に「化学合成食品添加物」がついた。また「食品表示偽装」も12番目に位置。ちなみに、戦争15、農薬17、薬の副作用18、テロ25、ダイオキシン26、たばこ31、狂牛病34、環境ホルモン36と続いた。興味深いのは、食品添加物でも、「人工」ではなく「天然由来の食品添加物」は44番目で、心象的に低いリスク評価を示したこと。

こうした結果から、「食品への添加そのものが嫌なのではなく、人工であることが気にかかっているようだ」と中谷内氏。消費者の抱く食品添加物不安の深層にあるものとして「影響が後から現れ、外部から観察できず、本人にも感知できず、なじみがなくて、科学的にもよくわかっていない新しいリスク」など未知性因子を挙げた。

残留農薬・ダイオキシン・重金属、「食」の不安未知性因子に包囲

「食」にかかわる不安因子は、なにも「食品添加物」ばかりではない。残留農薬、ダイオキシンなどの環境ホルモン、重金属、遺伝子組み換え(長期摂取による影響が不明)など、我々は健康に関わる多くの未知性因子に取り囲まれている。

重金属でいえば、マグロに含まれるダイオキシンや水銀含有の高さが指摘されている。土壌から海洋に流出した水銀は食物連鎖の過程でプランクトンから小魚、マグロなどの大型魚へと濃縮、蓄積されていく。

1月22日付けの朝日新聞によると、鯨肉を食べる住民が多い和歌山県太地町で、住民50人(小学生から80代)の毛髪検査を行ったところ、月に1回以上鯨肉を食べる人(28人)の水銀の平均濃度が24.6ppmで、日本人の平均の10倍以上であることが分かったという。

調査(07年12月〜08年7月)は、北海道医療大の遠藤哲也准教授、第一薬科大の原口浩一教授らが実施。ちなみに、世界保健機関(WHO)の警告する水銀基準は50ppm。また、水銀が原因とされる水俣病患者の水銀濃度は100〜700ppm。こうした量より低いとはいえ、免疫力低下や循環器障害を招く恐れもあり、留意が必要とされている。

水銀は脳に溜まることが懸念されているが、眼の水晶体にも溜まることが指摘されている。
2009年12月8日(火)、慶応義塾大学三田キャンパスで、慶応義塾・生命科学シンポジウム「食と医科学、そして健康長寿」が開催された。この中で、眼科が専門の坪田一男教授(慶応義塾大学医学部眼科学教室)は、水銀などの有害重金属は脳だけでなく水晶体にもかなり溜まることを指摘、食品の抗酸化成分がそれらの排出に関与することも報告している。

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