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脳機能の活性化、カフェインやベリー類に有用性報告 8月15日付けの朝日新聞によると、北海道大学の神谷温之(神経生物学)らがマウス実験で、お茶やコーヒーに含まれるカフェインに記憶の効率を高める作用があることを確認したという。カフェインにはこれまでにも同様の報告がある。脳機能の活性に役立つ飲料や果物の最新研究を報告する。
カフェイン、過剰摂取は高血圧やカルシウム流出招く
細胞内でカルシウム濃度を調節するたんぱく質、「リアノジン受容体」は脳内の記憶を司る部位に多くみられるといわれる。神谷教授らは、カフェインで「リアノジン受容体」を刺激すると、カルシウム濃度が上昇し、神経での信号伝達がしやすくなることを確認したという。
カフェインはコーヒーやお茶に多く含まれる。カフェインの記憶力を高める作用については他にも報告がある。 University Hospital Innsbruck研究者グループが、26〜47歳の健康体被験者15人を対象に、半数にカフェイン100mg(コーヒー、カップ2杯に相当)、残り半数にプラセボ(偽薬)を与え、20分後に短期記憶機能を司る前帯状皮質の活動を調べたところ、カフェイングループはプラセボグループと比べ、前帯状皮質の活動が大幅に増大したことが分かったという。 また、緑茶にもカフェインが含まれるが、脳の老化防止に役立つということが報告されている(American Journal of Clinical Nutrition誌06/2月号)。 東北大学研究者グループが70代以上の被験者1,003人以上を対象に緑茶摂取と脳の関連を調べたところ、1日に2杯以上飲んだ場合、認知力障害のリスクが半分になることが分かったという。ただ、メカニズムまでは明らかになっていないという。 カフェインについては、摂り過ぎの弊害も指摘されている。Duke大学の研究者グループが、コーヒーに含まれるカフェインの健康への影響を、19人の健康成人を対象に、15年間にわたり調査。被験者には、1日コーヒー1杯に相当するカフェイン錠剤を与え、また別のグループには4〜5杯分に相当する錠剤を与えた。その後、それぞれ15分毎に血圧を検査したところ、4〜5杯分投与されたグループは1杯のグループと比べ、心臓病に罹る危険性が20%増え、卒中は35%に増えたという(98年)。 また、インディアナ州の大学の研究チームは、コーヒー2杯分以上に当たるカフェインを摂ると骨からカルシウムを失う可能性があり、一日に少なくとも800mgのカルシウムを摂取する必要があると警告している(The American Journal of Clinical Nutrition誌99/9月号)。 ブルーベリーなどのベリー類、脳機能の活性化に関与 飲料以外では、ブルーベリーの脳機能の活性化が報告されている。とかく眼科領域への効能でクローズアップされがちなブルーベリーだが、認知障害の予防に有用であることが報じられている(Neurobiology of Aging誌07/7月号)。 National Institute on Aging、Tufts University、Louisiana State University System研究者グループが、ラット344匹をグループ分けし、それぞれにブルーベリーエキス(2%)を混ぜたエサか、または通常のエサのどちらかを8週間以上与えた。その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)か、神経変性疾患の原因となる神経ロスを誘発するカイニン酸を与えた。 迷路テストなどでラットの脳機能などを評価したところ、ブルーベリーグループは通常のエサグループに比べ、行動に良い結果を得た。また、同グループは脳細胞の損失が抑制されていたという。
また、Neurobiology and Aging誌06/7月号最新号に掲載された記事によると、Tufts UniversityおよびUniversity of Maryland研究者グループが、オスのラット60匹を3グループにわけ、うち2グループにブルーベリーかストロベリーの2%エキスをエサに補給して2ヶ月間与え、各グループの半数に放射性鉄分を浴びせ加齢性認知退化を誘発した。 他に、グレープの成分、レスベラトロールが脳への血流を増やすという研究報告もある(Journal of Agricultural and Food Chemistry誌06/5月号)。 National Taiwan Normal University研究者グループらが、成人でオスのWistarラットを、1)対照グループ、2)脳虚血を誘発、3)脳虚血を誘発後、レスベラトロール(20mg/体重kg)を静注――の3グループに分けたところ、どのグループにも血圧および心拍数の変化は見られなかったが、2)グループは1)グループに比べ、脳への血流が65%減少したことが分った。また、3)グループでも血流量の減少は見られたが、その割合は35%に留まったという。 リンゴ、アルツハイマー病予防に有用 また、リンゴが脳の老化防止に役立つことも報告されている(Alzheimer's Disease誌06/2月号)。 University of Massachusetts Lowell's Center研究者グループは、青年マウスおよび老齢マウスに標準のエサ、栄養素を排除したエサ、リンゴジュース(人が飲むカップ2〜3杯で、1日2〜4個食べた量に相当)を加えたエサの3種類を与えた。 マウスに迷路テストを行って有効性を評価、また脳の酸化ダメージを調べたところ、老齢マウスでは、リンゴジュースを添加したグループで、迷路テストの成績がかなり改善したという。 他にも、リンゴがアルツハイマー病予防に有用であるという報告もある(Journal of Alzheimer's Disease誌6/8月号)。University of Massachusetts Lowell研究者グループによるもので、通常のラット、アルツハイマー病に似た症状を呈しているラット、高齢ラットに、それぞれのエサにビタミンE(50IU/kg)か葉酸(4mg/kg)を混入、またはこれら栄養素を削除し代わりに自動酸化促進物質として鉄分を混入、ビタミンE、葉酸を抜く代わりに濃縮リンゴジュース(0.5%)を混入して与えた。 結果、リンゴジュースを与えたグループでは、脳内神経伝達物質であるアセチルコリン値が他のグループに比べ25%増大したことが分かった。アルツハイマー病の症状を呈したラットにリンゴジュースを与えた場合、アセチルコリン分泌が33%増大、また高齢ラットでは130%高くなっていることも分かったという。
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