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「健康食品」9割が効果なし、『週刊新潮』が健食叩き
素材のみ指摘の抽象記事で、消費者を翻弄

『週刊新潮』(8.14・21日夏季特大号)で、健康食品の批判記事を5頁にわたり掲載している。相変わらず、十年一日のごとく、雲上の仙人が垂れるがごとくの抽象記事で、消費者が最も知りたい、どの企業のどういう商品の、一体なにが問題なのかということには一切触れず、素材の問題のみに終始している。このネットの時代にあって、これで読者を説き伏せられると思っているのか、勘違いも甚だしい時代錯誤の奢りばかりが感じられる内容だ。

「9割が効果なし」は根拠なき伝聞、素材ではなく実際に「健康食品」を検証したのか

9割が効果なし、「健康食品」2兆円市場の「擬似科学・エセ医学」。仰々しいタイトルが踊るが、リードはこうだ。
「老若男女を問わぬ健康ブームで、飛ぶように売れている健康食品。今や市場規模は2兆円に届かんとしているが、日本国民は投じた額に見合うだけ健康になったのか。実は、健康食品の9割はなんら効果がなく、摂り方によっては健康被害すらもたらすという怖い話」

もちろん、この9割というのは根拠なき伝聞にすぎない。根拠があるのなら、その詳細なデータを示していただきたい。週刊誌のこうしたこけおどしのアイキャッチは今に始まったことではない。このネットの時代にあって、朝日を筆頭にマスコミ用済み論が加熱する中、相変わらずこうした古色蒼然とした抽象記事が幅をきかしている。

記事は素材の問題点を指摘するが、原料素材を原料屋から購入し、そのまま単味で飲用するような人間などいない。原料素材を加工し出来上がった末端の健康食品の配合成分、配合比率は各社それぞれ異なる。これを十把一絡げに、素材=健康食品とし、どれも「擬似科学」「ニセ医学」と断罪するのだからまったくお気楽なものだ。

「健康食品」がプラシーボなら、それを有益なものとして利用すればいい

記事の前半部では、健康食品の効果をプラシーボ効果にすぎないとしている。精神神経免疫学という学問がある。欧米ではサイコフィードバックや催眠療法といった代替療法もその一つとして知られるが、思い込みや暗示が身体機能に影響を与えるというもので、有益にも有害にも働く。

プラシーボ効果というのは、これが有益に働くとしたものだ。例えば、権威ある医者がウドン粉に砂糖を混ぜたものでもよく効く薬と患者に手渡せば効果を発揮する場合がある。

「思い込み」が身体の機能に影響を与えるというとなにやらオカルティックな話で、この週刊誌はそれを「擬似科学」と指摘するのだろうが、近代医学ではこうした「思い込み」の作用を認めている。認めているからこそ、新薬の許可を得るために二重盲検法というものが行われ、プラシーボという要因が排除される。

ともあれ、健康食品にこの「思い込み」の効果が働いているとすればそれはそれで問題はないのではないか。それが有益に働く分にはなんら問題はない。病院で権威ある医師の助言や治療というプラシーボを得るにもそれなりに高額な対価が必要となるのだ。

また、記事では、フコイダン、グルコサミン、コンドロイチン、など挙げているが、その素材に問題があるのというのなら、それが含まれるこういう健康食品が問題であるとして、企業名と商品名を一覧で掲げていただきたいものである。

繰り返すが、消費者はその素材をベースに、さらにさまざまな素材が配合された「健康食品」を摂っているのだ。素材を単味で摂っているわけではない。具体的に、この素材がどの程度配合された、こういう「健康食品」が問題である、と指摘するのが本筋であろう。

著名な機能性成分を11種ピックアップ、「効果が期待ができる」との評価が多数

2014年7月9日(水)、東京大学で、公益社団法人日本農芸化学会創立90周年記念 第40回農芸化学「化学と生物」シンポジウムが開催された。 この中で、日本農芸化学会会長の清水 誠氏(東京農業大学応用生物化学部)が「機能性食品の過去・現在・未来」と題して講演した。

清水氏は、2011年より消費者庁事業の1である「健康食品の機能性評価」に参画したという。その際、市販されている健康食品の中からトクホでは許可されていないが、人気のある著名な機能性成分を11種ピックアップし、実際に機能性があるかどうか評価した。評価方法は、ヒト試験の結論の査読、関連論文の査読、薬との相互作用の報告の調査など多岐に渡り、かなり厳しいチェック項目を設けた。

その結果、「かなり効果が期待できる」あるいは「おそらく効果が期待できる」と評価できたものが多数あり、トクホレベルのエビデンスが揃っているとはいえない健康食品であっても、怪しいとは言い切れないという結論に達したという。

「9割が効果なし」というのなら、その効果のない「健康食品」の一覧を掲げてみよ

話を戻そう。
記事のリードには、老若男女を問わぬ健康ブームで、飛ぶように売れている健康食品、とある。それではこの老若男女のためにも、『週刊新潮』で、「9割が効果なし」といわれる健康食品を一覧にして挙げてみたらどうだ。

消費者が最も知りたいのは、具体的にどういう企業の、どういう商品の、どういう摂り方が問題なのかということである。この記事を読んだ老若男女をこのまま放っておいては、それこそ「健康食品」に疑心暗鬼になり、プラシーボも効かないことだろう。

健康食品は、十年一日のごとく、この『週刊新潮』のように、「9割が効果がない」だのとさんざんいわれ、貶められ続けてきた。ならば、この際だから、その9割とやらをはっきりさせようではないか。

このネットの時代に曖昧模糊とした情報での吊し上げなど許されない。指摘するならその問題となる根拠を明確に示さなければならない。それができないならば、売らんがための記事でいたずらに消費者を翻弄することなどやるべきではない。

次回の『週刊新潮』には、こうした凡庸な記事ではなく、舌鋒鋭く、具体的に企業名と商品名を掲げ、どこがどう問題なのかご指摘いただきたいものだ。それで企業からの広告出稿の差し止めをくらったとしたら、それこそジャーナリズムの本懐というものだろう。

さらにいえば、『週刊新潮』に「9割効果なし」といわれた健康食品を利用する迷える消費者のために、編集部内に相談窓口を設け、消費者の相談に親身に乗っていただきたいものである。

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