頁数:336ページ
発行:株式会社Eco・クリエイティブ
著者:酒向 猛
定価:1,890円(税込み)


酒向 猛(さこう たけし)

【 略 歴 】
昭和51年 順天堂大学医学部卒業、岐阜県立多治見病院 研修医
昭和52年 岐阜県立多治見病院 外科医局員
昭和57年 名古屋大学 大学院医学研究科入学
昭和61年 名古屋大学 大学院医学研究科終了、岐阜県立多治見病院外科へ赴任
昭和63年 医学博士、岐阜県立多治見病院 外科部長、中津川市民病院診療部長兼統括外科部長を経て現在

隠された造血の秘密【目次】

まえがき
第1章 腸管造血説とは
血液は食物から腸で造られると主張する腸管造血説
定説も変わるものである

第2章 生物学という学問のとらえ方
生物学研究方法について
生物学には哲学的考察が必要である
人はアイドルに憧れ、アイドルを誤解する

第3章 生気論を葬ったウィルヒョウの呪縛
顕微鏡の登場と細胞学説
一枚の静止画像の解釈を巡る対立
ロキタンスキー学派とウィルヒョウ学派の対立
一世を風靡したウィルヒョウ学説
機械論を生気論の対立
ウィルヒョウ的誤謬への分岐点
ウィルヒョウの功罪

第4章 ルイセンコ学説と獲得形質遺伝論争
ルイセンコ学説の興亡
獲得形質遺伝の論争も生気論と機械論の対立に帰着する 

第5章 レペシンスカヤの細胞新生説と生命の起源の謎
レペシンスカヤの細胞新生説
生命とはなにか?
オパーリンはレペシンスカヤを支持した
オパーリンと千島喜久男の歴史的対談

第6章 千島喜久男の赤血球分化説と腸管造血説
千島喜久男の新説
学位論文の受難
卵黄は赤血球から形成される
無核赤血球の謎
ワイスマンの生殖質連続説への批判
レペシンスカヤに対する天野重安の侮辱的発言
天野重安の業績と人生
山崎正文の業績
骨髄造血説に対する腸管造血説の台頭
骨髄造血説の再検討
骨髄細胞の細胞分裂の頻度に見られる大きな
矛盾
造血の系統発生学的検討
腸管造血の実像
胎盤は造血器である
西原克成の重力による骨髄造血成因論 

第7章 国会証言までした森下敬一の活躍
森下敬一の登場
森下によるウサギの骨髄血管結紮実験
森下によるカエル離体心実験
森下は赤血球から白血球が生まれる場面を動画に記録
白血球核左方移動の嘘
森下敬一の国会証言

第8章 骨髄移植による骨髄造血幹細胞発見
腸管造血説の凋落
血液細胞の由来についての歴史的考察
骨髄移植と骨髄造血幹細胞の発見
幻の幹細胞を求めて
新一元論の衝撃

第9章 幻の造血幹細胞
妹尾左知丸の幹細胞批判
小宮正文教授の骨髄造血幹細胞の写真
三浦恭定教授の血液幹細胞論「造血幹細胞はリンパ球
様細胞らしい」
マーカーによる幹細胞の同定
造血幹細胞はリンパ球様細胞である
組織培養について
千島の組織培養批判
研究は材料が扱いやすい分野から進歩する
造血幹細胞の定義はポルノと同じか?
組織幹細胞と胚性幹細胞
造血幹細胞は蛸壺の中に住んでいる
造血幹細胞はいまだ可視化不十分な幻の細胞である

第10章 驚くべき幹細胞の可塑性とiPS細胞発見の衝撃
驚くべき幹細胞の可塑性
幹細胞の可塑性は千島の学説を証明するか?
iPS細胞の発見は千島の学説への回帰か?
セントラルドグマに対する千島の反論

第11章 プリオン学説によるセントラルドグマ崩壊の危機
狂牛病の病原体プリオンの不思議
セントラルドグマの崩壊  
プリオンという蛋白性感染粒子が意味する事

第12章 細胞を構成する基本小体は存在するか?
顕微鏡下に蠢く微粒子・基本小体
北朝鮮から出てきた細胞新生説・ボンハン学説
ガストン・ネサンのソマチッドの謎

第13章 腸管造血説の総括と生気論的医学の復権
腸管造血説の総括
生気論的医学の復権

おわりに
参考文献

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"「腸造血理論」に基づく食事療法で、ガンを予防・改善する"
 食べた食物が血液の質を決める!〜隠された衝撃の学説「腸管造血説」とは

がん治療の食事療法ではマクロビオティックやゲルソン療法がよく知られる。そうした食事療法の背景にあるのが、故・千島喜久男博士が提唱した「腸造血理論」である。セントマーガレット病院でがん患者の治療にあたる酒向猛医師に、我が国のがん罹患の現状や食事療法の有効性について伺った。

医療法人社団 恵仁会 セントマーガレット病院
              統合医療科部長 酒向猛 氏

編集部:がん罹患の現状についてお聞かせください

酒向:2人に1人ががんに罹り、3人に1人が亡くなっています。がんの原因としては、やはり食の欧米化が考えられます。また、食品添加物や化学薬品、農薬や化学肥料漬けの農業の問題もあります。

動物が成長促進のため女性ホルモンを注射され、さらに農薬や化学肥料漬けの飼料で飼育されると、脂肪に汚染物質が蓄積します。それを人が食べ、取り込みます。動物性脂肪の過剰摂取もよくありませんが、さらに動物性脂肪の中に濃縮されていることが問題なのです。 乳がんなどもそうしたことが関係しているようです。乳腺というのは脂肪の中に埋まっていますから、そこからがんになりやすいということもあるようです。

編集部:人口動態統計をみますと、日本人の平均寿命の伸びとともに、がん(悪性腫瘍物)も増えていますね

酒向:戦後、乳児死亡率が非常に低くなっていますので、その分、平均寿命は長くなっています。しかし、決して健康な老人が多いというわけではありません。

また、高齢者人口の増加に伴い、がんが増えたということもあります。高血圧の薬でもがんが増えることがあるという意見もあります。血圧が高いのは、血流を良くするための作用なのですが、それを無理やり薬で下げるわけですから、脳出血や血圧による病気で亡くなることは減るかも知れませんが、逆に血流の障害によりがんが増えるともいわれています。

編集部:昔は今のようにがんも多くなかったようですが

酒向:がんの罹患率は低かったです。明治・大正時代、一番多かったのは急性胃腸炎という分類で、今でいうコレラ、チフスです。昭和初期あたりからは結核。昭和25年には脳卒中が1位になりました。昭和56年にがんがトップになります。

編集部:国民医療費は現在34兆円で、年々増える一方ですが

酒向:日本では、医者に行って薬をもらえばいいという考えですが、それもよくありません。医療費が増えている一番の原因は、医療機器など機械の設備に費用がかかるためです。日本も他の国々も一緒です。ある医療経済学者が、医療費高騰の原因は、人口の高齢化ということもあるが、まず医療技術の発展によって高い機械が必要になってきたことだといっています。

私が医者になった30年程前は、超音波もなければCTもありませんでした、地方の中核病院の手術室に心電図が1台しかないという状態でした。今は、とにかく医療機械が増えています。日本は世界で一番CTがあるともいわれています。

それから、昔は1人の医者が多くの分野の病気を診ていましたが、今は専門家じゃないと患者さんも納得しません。当直も昔は1人で済みましたが、今は何人もいないとダメで、当然人件費もかかります。医療の細分化が進み、患者さん側の要求も増えるようになりました。患者さんも医療費をかければどんな病気でも治るという幻想を持つようになりました。もちろん、そのような幻想を持たせた医者側にも責任があります。

編集部:がん治療に、どのように取り組まれていますか

酒向:私は、2年ほど前に当院に赴任しましたが、ここではゲルソン療法を採用しています。現在の医療体制では、混合診療ができません。代替療法を行うにはさまざまな制約があり、不自由なことが多いです。
私は、故・千島喜久男博士の腸造血理論を支持しています。西洋医学は骨髄造血ですが、東洋医学では、黄帝内経にもあるように腸造血です。

大学院時代にがん細胞の培養実験を行いましたが、骨髄造血にはいろいろな矛盾があることが分かりました。現代医学は、血液細胞は骨髄で造られるとしています。ドイツの有名な病理学者、ウィルヒョウが「細胞は細胞より生ずる」と主張し、それが今日の定説となっています。

千島学説では造血は消化管、とくに小腸で行われるとしています。また、細胞は細胞分裂により増殖するだけではなく、細胞構造を持たない有機物から自然発生するとしています。

私は、腸造血のほうが正しいと思いますが、正当派の学者は認めていません。なぜ、腸造血理論が認められないかについては、『隠された造血の秘密』(エコ・クリエイティブ刊)という本の中で書きました。

編集部:食事療法というと日本ではマクロビオティックがよく知られていますが

酒向:マクロビオティックは日本発祥の食事療法で、故・桜沢如一先生が提唱され、アメリカでは久司道夫先生が普及させました。動物性食品はダメで植物性食品が良いという点はゲルソン療法と共通しています。

マクロビオティックは生の野菜・果物は体が冷えるとしています。がんの場合、体が冷えているから生はダメとしています。果物はあまり薦めていません。

ゲルソン療法では生の野菜と果物を多く摂ることを薦めています。千島先生の腸管造血からすると、野菜・果物はあまり熱を加えず生の新鮮な形で摂ったほうが良いです。

野菜の摂取については、今、日米で逆転しています。日本よりアメリカのほうが野菜を多く食べるようになってきて、そのせいか、アメリカではがんによる死亡者が少し減ってきています。日本ではがんによる死亡者は右上がりで増えています。

編集部:野菜は熱を加えると、酵素が壊れるといいますね

酒向:そうですね。あまり調理しないほうがいいです。その典型的な食事療法が甲田療法です。玄米も擦って食べます。一切、火を通しません。腸管造血という観点からすると、理想的な食事といえます。ただ鳥のエサのような食事だということで8割くらいの方が途中で脱落しますね。

マクロビオティックは玄米菜食で、玄米にゴマ塩をかけてということですが、ゲルソン療法では消化の点から、オートミールを薦めています。玄米は消化が良いとは言えません。また、マクロビオティックではタンパク質の代用として大豆を薦めますが、ゲルソン療法では大豆は薦めていません。塩も制限します。油物も摂りません。

それから、ゲルソン療法では海産物はあまり使いません。重金属による海の汚染ということがありますから。ゲルソン先生は、現代人はいろんな化学物質で肝臓がやられていて物質代謝が障害されており、それががんの大きな原因だと指摘しています。肝臓さえ健康であればがんは治るといっています。
ゲルソン療法の柱は、食事療法と浣腸です。コーヒー浣腸で、肝臓を刺激して胆汁を出し、肝臓の解毒作用を促進させます。

編集部:千島学説では、汚れた血液ががんになるということですね。実際に、がんになった場合、自宅での食事療養である程度の改善が可能ですか

酒向:私は15,6年前から食事療法を指導していて、かなり進行した患者さんにはこういう食事にしたらという簡単な冊子のようなものを渡していますが、ほとんどの方が我流や中途半端です。やはり治すのならしっかりした施設なり指導者のもとで行わないとダメです。

ある弁護士の方で、一流病院で肺がんと診断されて、もう10年近くになりますが、肺がんを手術せずにマクロビオティックで治したという方がいます。その方はアメリカの久司先生のところまで行かれて、直接指導を受けて食事療法を厳密にやったようです。

がんの術後の食事療法にしても、しっかりした指導者のもとで行わないとあまり意味がありません。せっかく手術で治ったのにダメになったという例もあります。もちろん手術でも100%治るというわけではありませんから、バランスのとれたケアが大切です。

腸造血理論に基づく食事療法を森下敬一先生(お茶の水クリニック)が実践されましたが、森下先生のお話ですと、20年くらい前は食事療法をちゃんとやればがんがかなり治りましたが、最近は改善率が低くなっているといいます。一つには食品自体の力が落ちていることもあります。また、食事療法を受けている年齢が50〜60歳で、若い頃から化学薬品漬けになった食品生活をしているため自然治癒力が落ちているともおっしゃっていました。

編集部:現代医療のがん治療の問題点について

酒向:現代医療のがん治療は、手術・抗がん剤・放射線療法ですが、これらの治療法はがんの根本的な原因をなおしているわけではありません。早期の場合は、手術で治ることもあります。

抗がん剤については、私の経験では胃がんや大腸がん、肺がんなどで、がんが小さくなることはありますが、完治したという人はいません。

抗がん剤をうまく使えば患者さんのQOLを改善しますし、多少の寿命を延ばすという効果はありますが、抗がん剤で治るのは白血病や悪性リンパ腫でおよそ半分くらいです。全がん患者のなかで、抗癌剤で治るがん患者は約2〜3%です。

早期に、化学療法ではなく、いわゆる自然療法でやれば癌が治る可能性もありますが、中々それができません。というのも、早期に、自然療法を薦めてもし患者さんが亡くなったら、なぜ標準治療をしなかったのかと訴えられ裁判では確実に負けます。患者さんが自然療法を行うことを納得してくれればいいのですが。

編集部:抗がん剤を拒否する人々も増えつつあるようですね

酒向:延命効果やQOLの改善効果しかなく、結局、標準治療で治らないということでしたら他の方法を選んだほうがいいのではないかと思います。

昔は、抗がん剤はあまり効かなかったし副作用もありませんでした。医者も患者さんに何か与えないといけないですし、患者も何も与えられないのも不安だということで抗がん剤を使っていました。今は効くようになった分、注意して使わないといけません。

私は、西洋医学的な治療でもうだめだといわれた患者さんには、抗がん剤はやめて代替医療でいきなさといいます。ただ、抗がん剤を使っている患者さんは抗がん剤で免疫力を障害されて代替療法でも非常に治りにくくなります。ゲルソン療法にしても、専門家にいわせると抗がん剤を使っていたら本当に治りにくいといいます。

編集部:がんの遺伝子療法が話題になっていますが

酒向: 20年ほど前にがん遺伝子が発見されて、その時に20世紀のうちにがんは遺伝子治療で治るといわれていましたが、今はまだ実験段階です。人体実験(臨床試験)では、ほとんど効果がないというのが現状です。
遺伝子が損傷して異常な細胞が出来るといっていますが、がん抑制遺伝子といって、遺伝子自体を治す遺伝子もあります。このがん抑制遺伝子自体が働かないことが発がんの一つの原因となります。

編集部:代替医療を利用している患者さんは増えていますか?

酒向:増えていますね。患者さんの半分くらいが代替療法を併用しているというデータがあります。その9割以上がサプリメントです。 アメリカでは、医者が処方する薬より代替療法に使う額のほうが多いそうです。いかにアメリカは予防に力を入れているかということがわかります。

アメリカは10年以上前から100億円近い予算を代替療法の研究に投じています。スローケタリングというアメリカで一番大きながんセンターがニューヨークにありますが、そこに代替医療部門があるほどです。

私が医者になって判ったことは、薬で治る病気というのは非常に少ないということです。急性の感染症は抗生物質が良く効きますが、高血圧が治るかというと、確かに血圧は下げますが、やめてしまえばだめです。膠原病やアトピー、糖尿病にしても薬で治る病気は少ないです。

編集部:医薬品との相互作用など、代替医療の問題点について

酒向:もちろんサプリメントだから安全というわけではありません。医薬品との併用については、医者にちゃんと相談すべきです。厚労省の代替療法のガイドラインにも、代替療法を併用する際は、主治医に相談しなさいとあります。ただ、主治医に相談しても、日本ではそんなものはインチキだという人がほとんどで、医師の理解不足ということもいえるかもしれません。

サプリメントについては、ある程度免疫力をあげる効果はあると思います。だだし、サプリメントだけでがんを治すことは無理だと思います。世界中の学者ががんの特効薬探しをしているのに、未だに効くものはないのですから。

患者さん自らが生活を見直し、食事や生活習慣の改善をして、その中でサプリメントを補助として利用するということが大切です。

編集部:がん予防や治療における心得については

酒向:私の治療法の原則は、物理療法も精神療法も全てやりなさいということです。相乗効果が出ますから。ダイエットも食事療法だけでは中々効果がでません。運動と両方で効果があります。がん治療についても食事も精神療法もバランスよくしなさいということです。治療法は掛け算です。

今、西洋医学の医者は手術・抗がん剤・放射線療法でだめなら後はホスピスへ行きなさいというようなことをいいます。一方、代替療法をやっている人は、西洋医学的な処置などとんでもないという極端ないい方をし、お互いが歩み寄ろうとしません。

両方が大切です。もちろん現代医学の良いところがあります。それぞれの良いところをバランスよく取り入れていくことが大切だと思います。

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