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「統合医療」めざし、さらに前進〜7/4・「第2回JACT大会'99」

7月4日、東京女子医科大学 弥生記念講堂で「日本代替・相補・伝統医療会議」(JACT)の年次大会「第2回JACT大会'99」が開催された。今回は、昨年12月の第1回設立記念講演会に続き、国内外からおよそ500名の健康・医療従事者が会し、盛大なものとなった。 講演は、米食品医薬局(FDA)の李博士による「米国相補・代替医療の現状」、JACT渥美理事長による「米国NIH・NCCAM(国立相補・代替医療センター)近況報告」が行われた。また2つのワークショップ「健康・栄養食品はどうあるべきか」、「国際相補・代替大学構想」とシンポジウム「JACTの研究すべきテーマは何か」が行われ、JACTの活動に期待を寄せる参加者から熱心な質疑が交わされた。この他、今回は代替医療関連の各学会から12の学会推薦講演、また医療関係者らによる健康・栄養食品の学術報告など10の一般演題を加え、前回を上回る多彩なプログラムとなった。


代替医療に関係していないと、時代の医療に取り残される

「第2回JACT大会'99」は午前9時に開会、午後7時に閉会と長時間におよんだが、会場は最後まで熱心に講演を聞き入る参加者で溢れた。
冒頭、挨拶に立った渥美和彦JACT理事長は、今大会について「JACTには教育・研究・普及という大きな3つの柱があるが、今日は学術的な会になるかと思う」と述べ、続けて、「第4回代替医療シンポジウム訪問記」、「米国国立相補・代替医療センター(NCCAM)」と題した2つの特別講演を行った。

渥美理事長は3月25日〜28日に、ニューヨークで開催された「第4回代替医療シンポジウム」にJACTの代表として参加、JACTの活動方針などを発表したが、その際の学術プログラム及び展示会の様子などについて紹介。「次回は、2000年にハワイで開催される予定で、期日は現在のところ未定だが、JACTとの共催が話題にのぼった」と述べ、日本での「統合医療」を目指すJACTの活動に世界の関心が集まっていることを報告した。

また、米国国立相補・代替医療センター(NCCAM)を訪問した際、プログラム主任のジョーン・チャー博士と会見し、どのような医療の学会組織がCAMのプロジェクトに協力したか、どのような大学や研究所が協力したか、玉石混合のCAMの有効性や安全性を評価する基準を確立したか、など13の質問を行ったが、これらに対し、「これから次第に西洋医学も統合医療への理解を深めると思われる。NIHもこれをさらに推進していく姿勢で、国民もこれを非常に支持している。各大学にテーマと予算が振り分けられ、1999年は5千万ドルになった。来年は1億ドルという話も出ている」と述べた。また渥美理事長は講演の中で、カナダのブリッジコロンビア大学の副総長が「医者で代替医療に関係していないと、時代の医療から取り残されるであろう」と言っている、と述べ、医者で代替医療を知らないと時代遅れになる、という世界的な流れを強調した。

医療費削減が緊急課題、米国で代替医療に期待

渥美理事長の講演に引き続き、李 仁秀博士(米国保健社会福祉省食品医薬局(FDA)毒物学研究部分子発癌チームリーダー、韓国保健社会福祉省(KFDA)技術顧問)が「米国における相補・代替医療革命」という演題で、健康、栄養食品の在り方などについて講演した。

李博士は、米国の代替医療の状況について「米国は医療費がGNPの12%になっている。いかにして医療費を削減するかが課題。食べ物ががんなどの病気の予防と発症に関わるとされており、気をつけることが必要」と述べ、米国民が健康・栄養食品に関心を寄せる傾向と代替医療に期待をかける風潮を指摘し、「米国には600の栄養補助食品の企業と4000におよぶ製品があり、40億ドル市場を形成している」と現状を報告した。

健康・栄養食品の必要性、学術委員会の設立を早急に望む声

またワークショップ「健康・栄養食品はどうあるべきか」では、和田 攻(埼玉医科大学衛生学教授)、帯津良一(帯津三敬病院院長)の両氏が司会を行い、渥美理事長が、現在健康・栄養食品はどのようなものがあり、どのように分類されているのか、有効性はどのように認められているのか、それに差があるのか、安全性はどうなのか、同時に服用した時にプラスなのかマイナスなのか、などの問題提起を行った。

これに対し、糸川教授(京都大学)が特定保健用食品、特別用途食品、健康食品の役割を説明。また李博士は、「いろんな健康食品が出ているが、クオリティをどのように規制するか米国でも問題になっている。GMP(医薬品製造)施設で製造したとしても、原料である天然物の薬草は場所や採取年によっても、成分が違う。FDAでは天然物から抽出して成分のどの部分が有効なのか究明を必要としている」とコメント。会場からは、「ニュートリションはかなり濃縮されて、医薬効果を示す場合が多い。もし原料が汚染されていて、何か問題が起きた時、一気に排除されかねない。環境汚染が進んでくれば、そうした濃縮ものの危険性のチェックが必要」などの意見が寄せられた。

また、「健康食品は必要なのか。日本ではまだ食べ物で健康を維持できるのではないか」といった質問に対し、「日本でも偏った食生活というものがあるため、健康食品で補うことも必要かと思われる」(糸川教授)など、活発な討論が交わされた。 

「国際相補・代替医療大学」の設立を提案

また2つ目のワークショップでは渥美理事長が「国際相補・代替医療大学構想」について講演し、「ここ数年米国のNIH調査室を見てきたが、米国ではかなりの大学が代替医療の調査を行っている。日本でこうした構想を提案すべきではないかと思った」と述べ、方法論として、A)医科・医療大学に大学院を増設、B)医科・医療大学に新学部を増設、C)新たに大学を設置、という具体的な3つの形式を提案した。

シンポジウムは折茂 肇(東京都老人医療センター長)と阿岸鉄三(東京女子医大教授)の両氏が「JACTの研究すべきテーマは何か」について行った。冒頭、折茂氏は、「老人医療の分野に長らく関わってきたが、医療費の高騰を防ぐためにも、今後予防医学は大変大事になる」と述べ、引き続き、渥美理事長が、自然治癒力の解明、伝統医療の比較検討、代替相補医療の有効性の実証、各種健康食品の有効性の解明などJACTとして基礎・臨床研究からアプローチすべき課題を提案。

またがんのための相補・代替医療、健康・栄養食品の研究発表などのために分科会の発足の必要性、インターネットによる学術交流、2001年以降に構想されている国際相補・代替医療会議などについて提案した。 次回は「第3回JACT年次大会'99」は8月28、29日の両日、今大会と同様、東京女子医科大学 弥生記念講堂で、一般啓蒙に主眼を置いたプログラムを予定している。

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