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オーガニック(有機)作物への関心、米国で加速
背景に遺伝子組み換え食品への反発

米国で、遺伝子組み換え技術の反発からか、オーガニックへの関心が高まっている。3月9日から12日まで開かれた全米最大規模の自然健康商材展示会「ナチュラル・プロダクツ・エキスポ・ウエスト2001」では、オーガニック関連商材が大挙した。状況を報告する。

米国最大規模の自然健康商品展示会でオーガニック(有機)商材が席巻

「オーガニック・コットン」「オーガニック・パスタ」「オーガニック・ハーブ」―。アナハイムのコンベンションセンターで3月9日から12日まで開かれた、全米最大規模の業者向け自然健康商品展示会「ナチュラル・プロダクツ・エキスポ・ウエスト2001」は、まさに「オーガニック(有機栽培)」一色だった。
とにかく目にするものすべて「オーガニック」といっていいほどの商品パッケージにも「ORGANIC」の7文字が並ぶ。

同展示会は1981年にカリフォルニア州でスタート。当初の出展企業はわずか200たらず、入場者も3000人ほどだったが、21年たった今、ブースの数も入場者も10倍に膨れ上がった。今年で開催21年目を迎え、出展企業は過去最高の2400社、入場者数も3万人を超えた。西海岸での好評を受けて、11年前から東海岸でも開催。今年は10月11日から14日まで、首都ワシントンで開く。

アメリカは消費者優先の国、高いオーガニック志向に企業も照準

今回の展示会で、オーガニック関連商材が大挙したが、これについて、オーガニック・トレード協会のシニア・ライター、バーバラ・ヒューマン氏はこう語る。「リネン、タオル、子供服、紳士・婦人服、おもちゃ、装飾品に至るまで、オーガニックの用途は広がっている。中でも、スポーツウエアーへの利用が近年増えている」。

例えば、スポーツウエアー業界のスーパースターといえば「ナイキ」だが、今年も120ポンドのオーガニックコットンを用いたスポーツウエアを、国内はもとよりヨーロッパ、アジアで販売する予定だ。ナイキは昨年、80万から90万ポンドのオーガニックコットンを素材として使用、うち60万ポンドは米国産。1997年から、一部スポーツウエアーへの3%オーガニックコットン使用を開始、2010年までに全ウエアーへの使用を目指すという。

こういったオーガニック人気の理由を、「環境破壊や遺伝子組み換え問題が騒がれる中で、消費者のオーガニックへの関心が高まったといえる。ほかの国でもそうだと思いますが、アメリカは消費者優先の国です。企業はそうした消費者の需要に応えてビジネスを展開していきますから、繊維だけでなく食品でもオーガニックブームになっているわけです」とヒューマン氏。

また、同展示会のマーケティング・ディレクター、ジーン・ウエッブ氏は「ここ2年ほど、オーガニック商品の増加には目を見張るものがある。農薬や遺伝子組み換え作物が問題視されていることが大きな理由といえるでしょう。基本的に農作物を使った商品はオーガニックものが主流」と話していた。

米国で、オーガニック食品の「統一基準」発表

日本では本年4月より、改正日本農林規格(JAS)法が施行、国の認定機関の審査を通ったオーガニック(有機)農産物には「有機機JASマーク」が付くことになった。現在、世界中で論議の的になっている遺伝子組み換え食品に対しても原材料に使っている場合は表示が必要とされている。

一方、米国でも、昨年末に米農務省(USDA)が、遺伝子組み換え(GM)作物を使用した食品をオーガニック食品として表示することを認めないなど、オーガニック食品に関する米国内統一基準を発表した。

明確な基準を打ち出した背景には、健康志向や食品の安全性への関心からオーガニック食品の需要が高まっているのと、規制の厳しいヨーロッパ市場を開拓する狙いがある。USDAが10年あまりの歳月をかけ、改定に改定を重ね策定したこの統一基準は官報への公示などの手続きを経て、2002年半ばに実施される見通しだ。

統一基準、USDAへの約41,000のコメントを参考に改定

おおまかに統一基準の内容を説明する。オーガニック食品についてはGM作物使用の食品のほか、日持ちをよくするためにガンマ線照射でバクテリアの増殖を防いだ食品、防腐剤の亜硫酸塩化合物などを添加した食品、ホルモンや抗生物質を投与した動物の畜産品―などをオーガニックとして表示することを禁止する。

また、表示方法については、食品内の有機成分の含有量に応じて、「100%有機食品」、有機成分が95%を超える「有機食品」、70%から95%の「有機成分食品」、70%以下の「食品」と、4種類に区分した。

ただし、この統一基準について、USDAのダン・グリックマン局長は「オーガニック表示は、あくまでもマーケティング上の要素が強く、食品の安全性や栄養価を示すものではない」と強調。USDAは、2000年3月に発表した統一基準改定案に寄せられた約41,000のコメントを参考にさらに改定を加え、最終統一基準を作成した。

「オーガニック業界に改革もたらした」と高い評価

統一基準に対する食品業界関係者の評価はまずまずだ。大手食品企業ジェネラル・ミルズの1部門「スモール・プラネット・フーズ」の創設者、ジーン・カーン氏は「統一基準は、オーガニック業界に改革をもたらし、市場がさらに拡大されるものと大きな期待をよせている」と歓迎。また、オーガニック・トレード協会(OTA)のエクゼクティブ・ディレクタのキャサリン・ディマット氏は「基準内容は厳しく、オーガニック業界の前進に多いに役立つことだろう。ただ、まだ完璧とはいえないので、OTAでは今後もUSDAに対し問題点を指摘していく」と話していた。

全米で統一基準が設けられたことで、消費者はもとより、供給側の困惑も解消され、これまで様子見していた農家や食品メーカーが次々と参入してくるものと予想する関係者は多い。

オーガニック市場、90年代半ば頃から毎年20-25%の伸び

ところで、統一基準の必要性がここまで重視されたオーガニック市場だが、米国オーガニックフード市場報告によると、2000年の売り上げは推定78億ドルで、前年の65億ドルを20%上回った。90年代半ばごろから毎年20%から25%の成長を遂げている。

ニーズの高まりから、有機栽培に切り替える農家も増えており、公認の有機農家は現在、12,000件を数える。昨年4月26日付けの全国紙「USA TODAY」によると、1997年現在、有機栽培の農地面積が最も広いのが、アイダホで107,955エーカー(以下エーカー略)、次がカリフォルニアで96,851、ノースダコタ88,581、モンタナ 59,362、ミネソタ 56,275、 ウィスコンシン41,245、 コロラド35,127、アイオワ 34,276、フロリダ32,745、ネブラスカ28,104と続く。

遺伝子組み換え食品の登場がオーガニックニーズに拍車

オーガニック市場伸張の背景には、大手食品企業の参入がまず挙げられる。ジェネラル・ミルズ、ケロッグ、ハインツといった企業の参入で、大型のスーパーマーケットや自然食品店といった量販店への流通の道が開かれ、価格競争も盛んになり、オーガニック市場が活性化した。
大々的な宣伝活動も功を奏した。いつくかの資料によると、オーガニック食品の売り上げの半分近くを量販店が占めるという。

また、遺伝子組み換え(GM)食品の登場もオーガニック人気を高めた大きな要因といえる。昨年起きた遺伝子組み換えトウモロコシのアレルギー問題は消費者のGM不信に拍車をかけた。大手自然食品チェーンのホール・フーズ・マーケット、ワイルド・オーツ・マーケットは、自社ブランドすべての「100%GMフリー」を宣言したほどだ。

メディアでGM食品の安全性の賛否両論が報道される中、消費者はGM食品に疑問を抱きはじめ、オーガニック食品を好んで買うようになっていった。ただ、「オーガニック食品がいいのはわかるが、わざわざ自然食品店に行くのは面倒。どうしても近くのスーパーで、値段の安い食品を買ってしまう。オーガニックかどうかは二の次。まずは値段の安さ」という現状も。
オーガニックが伸びているとはいえ、年間の食品総売り上げ4600億ドルのうち、わずか数%しか占めていないのは、そこに理由がある。

遺伝子組み換え食品のつまづきの原因は、「虫除け」、「収穫増」といった生産者側の恩恵ばかりを優先したからという見方が強まっている。そこで、消費者へのメリットを増やし、受け入れてもらえるように業界は今、軌道修正をしている最中だ。消費者サイドに立ち、食品の「栄養強化」といった側面から遺伝子組み換え技術の導入を試みている。

例えば、遺伝子組換えの米でベーター・カロチンなどのカロチノイドを豊富に含む「ゴールデンライス」。やはりカロチノイドで高抗酸化物質のリコペンを強化したトマト。カフェインフリーの紅茶の葉などがあり、いずれも2、3年すれば店頭にお目見えする予定という。

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