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魚介類のダイオキシン暴露、胎児への影響懸念
食品汚染シンポ「有害物質による魚介類汚染」

2月2日(土)、文京シビックセンターで、「食品汚染シンポジウム〜有害物質による魚介類汚染問題」が開催された。当日、「ダイオキシンによる魚介類汚染の実態と問題点」と題して、中下裕子氏(弁護士、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議事務局長)が講演した。ダイオキシン類の摂取経由は魚介類からが90%と圧倒的に多い。厚労省の調査では、耐用1日摂取量を大幅に下回っているものの、とくに妊産婦は胎児への影響を考え、魚の摂食に留意が必要だ。

2000年「ダイオキシン類対策特別措置法」施行、ダイオキシン類大幅削減

世界的にマグロの需要が高まるなど、魚の摂食に関心を寄せる人々が増えている。背景には、狂牛病や鳥インフルエンザ報道の影響で肉への摂食不安があるようだ。

魚には、EPAやDHAといったオメガ3系脂肪酸が含まれ、疾患予防への有用性が報告されている。世界の長寿食といわれる和食や地中海式食も魚介類がベースで、健康に有益であることは歴史の検証で証明されている。
とはいえ、問題がないわけでもない。懸念されるのが、ダイオキシン暴露である。

ダイオキシンがクローズアップされるようになったのは70年代。ベトナム戦争で使用された枯葉剤でがんや先天性奇形などの発症が多数報告され、枯葉剤に含まれるダイオキシン類の毒性が論議の的になる。

発がん、催奇形性、生殖毒性、免疫毒性、肝臓代謝障害など慢性毒性が指摘され、2000年には、米国環境保護庁(EPA)が発がん物質に指定する。

ダイオキシン類の大部分は廃棄物の焼却から発生することから、かつて日本は世界最悪のダイオキシン排出国という不名誉な称号を与えられていた。ちなみに1997年にはダイオキシン類の総排出量が年間約8000gに達していたといわれる(当時、ドイツの年間総排出量は数g〜数10g程度)。(*注1)

2000年1月、日本で「ダイオキシン類対策特別措置法」が施行。「2002年度末の総排出量を1997年比で9割削減する」目標を立て、2003年の総排出量は1997年比で95%の削減になった(環境省推計)という。2010年には総排出量を2003年比で15%削減を目指している。

*母乳中のダイオキシン濃度の推移(厚労省報道資料) >

厚労省ダイオキシン類摂取量調査では、健康への影響はナシ

ダイオキシン類の排出については特別措置法により、大幅に削減されたことが評価されている。同法では、ダイオキシン類による健康被害を防止するため、ダイオキシン類の耐用1日摂取量(TDI)を4pgTEQ/kg・体重/日(世界保健機関(WHO)では1〜4pgTEQ/kg・体重/日)としているが、2004年度厚労省発表のダイオキシン類1日摂取量調査では、1.33pgTEQ/kg・体重/日と推定され、健康に影響を与えるものではないと報告されている。

ダイオキシン類の摂取経由は、食品が98%、うち魚介類が約90%を占める。ほとんどが魚介類経由で体内に取り込まれる。ちなみに上記調査では、魚介類からの摂取量が1.15 pgTEQ/kg・体重/日で、約86%と報告されている。
ダイオキシン類に汚染されやすい魚介類は、汚染海域の魚、スズキやイワシなどの内湾・沿岸の河口周辺の魚、脂質含有率の高い魚、食物連鎖の上位にいるマグロやサバ、ブリなど。

2004年度厚労省の報告ではダイオキシン類の1日摂取量が1.33pgTEQ/kg・体重/日と耐用摂取量をかなり下回っているが、慢性毒性による影響を考えると妊産婦は留意が必要だ。ダイオキシンは脂質に溶けやすいため、授乳期に胎盤経由で胎児にダイオキシン類が浸出し、アトピー・アレルギーの発症に関与することがいわれている。

魚の内臓や脂身を剥ぐなど、妊産婦は魚介類の食べ方を工夫する

では、日頃の食生活でダイオキシン類対策をどうすればいいのか---。
とくに妊産婦について、中村氏は次のように言う。「調理によってもダイオキシンは減少する。魚の内臓、脂身などはダイオキシンが溜まりやすい。そういうところを剥いで、身の部分だけ、白味の部分だけ食べる。これで60〜80%減少したという報告例もある。焼く、煮るということでも脂分が外に出るためか14%〜30%減少したという報告もある。
内臓を取り除いて皮を剥いで食べるようにする。肉類、乳製品も脂質があるから魚介類ほどではないにしても溜まりやすい。野菜は比較的ダイオキシンの汚染は少ない。表面を水で洗い、皮をむくだけでも摂取量は違う。食物繊維やクロロフィル(葉緑素)を含む食品を食べるようにすると良い」。


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