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徳川家康に学ぶ長寿の秘訣〜「麦めし、実だくさんのみそ汁、丸干しイワシ」

11月3日(水)、慶應義塾大学(東京都港区)で、市民公開講座「健康は食事から〜医食同源」が開催された。当日、食文化史の研究家として知られる永山久夫氏の「徳川家康に学ぶ長寿食」と題した講演の他、「健康で若さを保つ食事」など3講演が行われた。

家康は徳川歴代将軍の平均寿命の倍生きた

織田信長49歳、豊臣秀吉62歳、徳川家康75歳。天下取り3武将の没年齢だ。戦国武将は「天下取り」のために「勝つための身体作り」、いわば 「長命のための身体作り」を心がけていたといわれる。ことに、家康は堅実な性格そのままに、日頃の健康管理においては十分注意を払い、前向きな人生観と「早寝早起き、粗食」を常としていたといわれる。

家康以降の徳川14代の将軍の平均寿命は49.6歳(当時の日本人の平均寿命は37.8歳)で、いかに家康が長命であったかをうかがい知ることができる。 家康に長寿をもたらした食事とは、はたしてどのようなものであったのか------。

これについて、永山氏は、家康が、「麦めし、実だくさんのみそ汁、丸干しイワシ」を好んで常食としていたことを挙げる。穀類、大豆、魚といった、日本人の伝統食の原型ともいえるものだ。こうした食事が、家康の明晰な頭脳と屈強な心身の形成に大きく貢献したという。
現代の栄養学に照らしてみると、ビタミンB群、食物繊維、大豆(E、イソフラボン、レシチン)、DHE・EPAといったところだ。これらは、世界でもトップを誇る日本人の長寿体質を支えてきた機能性成分であるとされ、世界的にも研究が盛んに進められている。

麦飯や雑穀、知力を高めるブレインフードとしての役割

戦乱の世にあって、戦国武将は強靭な心身の練磨を強いられるが、とりわけ乱世をたくましく生き抜くためには、智謀策術に秀でた知力を養うことも必要となる。家康の「麦めし、実だくさんのみそ汁、丸干しイワシ」は、一方で脳機能を高めるブレインフードであるとの見方もできる。
日本人は昔から優秀で勤勉であることが世界的な評価としてあるが、とりわけ、「穀類、大豆、魚」の常食によるところが大きいとされている。

これについては、すでに栄養成分の機能性研究からも明らかにされている。
米国では全粒粉や玄米といった雑穀が静かなブームとなっているが、精白米と比べて未精製穀類はビタミンB1が多く含まれる。B1については、欠乏すると脚気や鬱などの症状を引き起こすことで知られるが、脳内の重要な神経伝達物質であるアセチルコリンの生成に関与し、学習能力の発達など脳機能の向上をもたらすとされている。
他にも、オーストラリアの研究グループによるとアルコールを毎日多量に飲むと、脳の神経細胞が破壊され、記憶減退など脳機能を阻害する恐れがあるが、ビタミンB1がそれを防ぐという報告もある(The Age誌'01/2月号)。

また、穀類の精製過程で90%以上が落ちてしまうといわれるビタミンB3(ナイアシン)については、シカゴの研究グループが、65歳以上の痴呆の徴候のない815人の食生活とその後4年間を調べ、ナイアシン摂取量をみたところ、最も多くナイアシンを摂取している(1日22mg) グループは最も少ないグループ(13mg未満)に比べ、アルツハイマー病に罹る危険性が79%低いことが分かったと報告している(Gerontological Society of America会合)。

魚食で鬱を払拭、タフな頭脳に

戦国の武将だけでなく、競争社会の真っ只中にいる現代人は単に優秀なだけでなく強靭な精神力をもたらすタフな頭脳が要求される。
魚油に含まれるω-3系脂肪酸と呼ばれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は神経系統に働きかけることが知られており、鬱病などの精神性疾患の改善に有効性を示すことがこれまでに報告されている。

また、ω-3系脂肪酸の脳機能低下の防止作用についても報告されている。
オランダの研究グループが、45歳から70歳の1,613人が参加した研究データを 分析。5年間にわたって被験者の記憶力、認識の柔軟性などを調べたところ、 魚介類などに含まれるω-3系脂肪酸は、全体的な認識機能低下を約20%防ぐ ことが分かったという報告もある(Neurology'04/1月号)。
さらに、高齢者の増加とともに懸念されるアルツハイマー症についても、 タフツ大学の研究グループが、平均年齢75歳でFramingham Heart Studyの一部に参加中の1137人の血中脂肪酸濃度を測定したところ、週に 3回魚を食べると、アルツハイマー症のリスクが半減することがわかったと報告している(American Heart Association)。

大豆、知力・気力・体力作りの総仕上げのパーフェクトフード

そして、知力、気力、体力作りの総仕上げが大豆といえよう。9種類の必須アミノ酸、ビタミンE、サポニン、イソフラボンを豊富に含む他、コリン(神経伝達物質のアセチルコリンを合成)など、脳機能の活性に欠かせない栄養成分も他の食品に比べ抜きん出ている。

日本人はこうした大豆を味噌や醤油、豆腐や納豆などさまざまに加工し伝統的に食してきた。とくに納豆に関して、整腸、ダイエット、血栓症、骨粗しょう症、更年期障害、抗菌・殺菌(0-157など)、肝機能障害、糖尿病、がん、など多様な有用性が報告、パーフェクトフードとして世界的にもその機能性が高く評価されている。

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