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根強いダイエットニーズ、会場はLow-Carb(低炭水化物)一色
米国・健康自然食品産業展「第23回ナチュラル・プロダクツ・エキスポウエスト2004」

3月4日から7日まで、アナハイムのコンベンションセンターで米国最大規模の企業向け自然健康商品見本市「第23回ナチュラル・プロダクツエキスポウエスト2004」が開かれた。会場は、ダイエットニーズや狂牛病不安を反映してか、Low-Carb関連商材やオーガニック商品が多く出展され、目を引いた。

展示ブースの1割以上がLow-Carb関連

今、米国では、どのような自然健康食品が注目されているのか---。
世界の関心事ともいえるが、米国最大規模を誇る自然健康商品見本市「第23回ナチュラル・プロダクツエキスポウエスト2004」は、その答えを探すのに格好の場だ。

今年、展示ブースは2500、入場者数は世界86カ国から過去最高の3万6000人を記録した。会場では、右を見ても左を向いても、とにかくLow-Carb関連商品。ブースの1割以上がLow-Carb関連を展示していた。クッキー、グラノラバー、チップス、ナッツ、パスタ、ピッザと種類も豊富なうえ、フレーバーもよりどりみどり。
また、サプリメントでは、イソフラボン、βグルカン、ビタミンD、ルテイン、リコピン、補助酵素Q10といった話題の商品が、あの喉につまりそうな大きめのタブレットから飲みやすいリキッドタイプへと形態を変え、ラインアップしていた。
自然食関連では、狂牛病の影響か、ホルモンも抗生物質も与えていない、オーガニック栽培のベジタブルだけを飼料に与えたオーガニック・ビーフなどの展示が目立った。

Low-Carb食品の愛用者は1500万から3000万人

Low-Carb(低炭水化物)といえば、故アトキンス博士が長年にわたり提唱していた低炭水化物ダイエットが有名だ。「ダイエットしたいなら、ステーキ、ベーコン、チーズ、バターといったたんぱく質を含んだフードをたくさん食べ、果物や穀類といった炭水化物の類いは極力控えなさい――」。90年代はじめにブームが巻き起こり、2002年に再燃した。ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンに掲載された「炭水化物を減らし、良質のたんぱく質を十分に摂る食生活を送れば、副作用なくダイエットできる」という研究報告が発端となった。

業界関係者らによると、現在、低炭水化物(Low-Carb)食品の愛用者は1500万から3000万人。「90年代はじめの低炭水化物ブーム以来なかった久々の新旋風 だ」と食品業界関係者は話している。
低炭水化物食品だけを扱う専門店も昨年から軒並みオープンしている。低炭水化物のベーグル、キャンディー、クラッカー、サラダドレッシング、シリアル、ビールなどズラリと並ぶ専門店の数は、全米に約200店。規模からいえばまだまだニッチマーケットだが、低炭水化物のメッカといわれるカリフォルニア州で昨年オープンした低炭水化物専門スーパー「Castus」は今年、400万ドルの売り上げを見込んでいる。

ちなみに量販店「ウォール・マート」の低炭水化物チョコレートの売り上げは昨年、1億5千万ドル。レストランやファーストフード・チェーン店でも低炭水化物 メニューがお目見えするなど、ビッグ・ビジネスとして今後の展開が注目されている。

Low-Carbダイエット、脳内物質セロトニンの分泌を抑制し気分の落ち込みをもたらす

こうしたLow-Carb人気の背景にあるのは、総人口の約65%が太りすぎといわれている米国民の根強いダイエットニーズだ。しかしながら、一方で、Low-Carbダイエットは気分の落ち込みをもたらすという気になる報告もある。

炭水化物の豊富な食事は、気分を高揚させ食欲を抑える脳内物質・セロトニンの分泌を促す。MIT Clinical Research Center研究者グループによると、甘い物あるいはでんぷん質の多い食品を食べた後にだけセロトニンが分泌されるが、Low-Carbダイエットはセロトニンの調整を抑制するという。

低炭水化物(Low-Carb)食品の愛用者は1500万から3000万人

Low-Carbダイエットの提唱者、ロバート・アトキンス博士は、2003年4月、72歳で人生の幕を閉じたが、著書の「Dr. Atkins' New Diet Revolution」は、今だに文庫本の売り上げで2位(ロサンゼルス・タイムス紙調べ)にランクインしている。

代替療法を専門とする医師として米国を代表する存在だったアトキンス博士。博士が長年にわたり提唱してきた「低炭水化物・高たんぱく質ダイエット」のアトキンス式ダイエット法は、「パン、パスタ、ライス、砂糖、ケーキや果物を食べず、代わりに、牛肉、豚肉、チキン、魚、ベーコン、バターなど良質のたんぱく質を含んだ食品をどんどん食べよう」という異色なもの。肉好きアメリカ人には大受けした。

体脂肪を燃やし筋肉の増強にも役立つたんぱく質

効果的なダイエットのために、アトキンス博士がとくに問題視していたのが炭水化物。炭水化物は糖に分解されて血液中に入り、血糖になる。すると、血糖を下げるためすい臓からインス リンが分泌される。血糖が急激に上昇すると大量のインスリンが分泌され、過剰状態が続くと行き場のなくなった糖質は脂肪細胞に蓄積されやすくなる。 こうして体脂肪が増えていく----。
そのため、博士はインスリンの分泌をできる限り抑えるため炭水化物を控え、代わりに、満腹中枢を充足し食欲を抑え、体脂肪を燃やし筋肉の増強にも役立つたんぱく質をたくさん摂るべきであると提唱した。

アトキンス理論、体脂肪減少で効果が立証

確かに、こうしたアトキンス理論は臨床実験でも効果が立証されている。ノースキャロライナ州のデューク大学で120人の肥満男女を対象に、アトキンス式ダイエットと連邦政府が推薦する米国心臓協会(AHA)の高炭水化物・低たんぱく質ダイエット「ステップ・ワン」を比較した。その結果、アトキンス式グループの方が6カ月後の体重減少率が高かったうえ、善玉コレステロール値の増加率も高く、悪玉コレステロール値の低下率も高かった。ちなみにアトキンス式グループは平均31ポンド体重が減ったのに対し、ステップ・ワン組は20ポンドだった。

また、シンシナティ大学の研究もポジティブな結果を伝えている。こちらは肥満女性53人を対象に6カ月にわたりアトキンス式と低脂肪・低カロリーの典型的ダイエットを比較。その結果、アトキンス式グループは平均18・7ポンド体重が減ったのに対し、典型的ダイエットは8・6ポンドだった。体脂肪の減少でも、10・5ポンドと4・4ポンドとアトキンス式に軍配が上がった。ただし、血圧とコレステロール値に関しては差がなかった。

アトキンス式ダイエット、短期効果はあるも長期効果となると疑問

ところで、前出のデューク大学の研究報告は2002年、シカゴで行われたAHAの学術集会で発表された。しかしながら、その翌日、「この研究結果に基づいて、 AHAの食事療法ガイドラインが改訂されたという誤った印象を与える報道があった」とAHAが抗議の緊急声明を発表した。「症例が少なく、追跡期間も短いため、 長期的な効果はわからない。AHAがアトキンス式ダイエットを心臓病予防として推奨したわけではない」と言い切った。

実は、米国でアトキンス式ダイエットに疑問符を投げかけていた専門家たちもまさに、その点を指摘していた。アトキンス式ダイエットは確かに短期間の 効果を裏付ける研究報告はあるものの、長期的となるとほぼ皆無という。
そのため、懐疑派は「長年にわたって脂肪分の高い肉やベーコンを食べ続ければ、当然、心臓疾患、糖尿病、脳卒中、ある種の癌に罹るリスクが高くなる」 とアトキンス式ダイエットによる各種疾患への罹患リスクを懸念する。

アトキンス式ダイエットの欠陥は腎臓にかかる負担

また、短期間で体重を急激に落とせるのは、炭水化物を排出しようと利尿効果が高まり、体内から水分が放出されるためで、その分、腎臓にかかる負担が 大きくなる。アトキンス式ダイエットの際に十分な水の補給が必要なのはこのため。一般的に「健康のため1日にコップ8杯の水」のところを、アトキンス式 に取り組んでいる人はプラス32杯、加えて定期的にエクソサイズしていたとしたら、さらに32杯飲んでいれば、腎臓へのダメージはない」という。

メンズフィットネス誌3月号では、アトキンス式ダイエットの「高プロテインダイエットは腎臓に悪いのか」という読者の質問に同様に上記のように答えて いる。つまり、もともと腎臓になんらかの問題がある人は、高プロテインダイエットは避けたほうが賢明ということだ。

また、アトキンス式ダイエットで便秘がちになった、口臭がきつくなった、リバウンドが起こりやすいといったネガティブな報告も目立つ。 さまざまな疑問が投げかけられ始めた米国屈指のダイエット法。とはいえ、提唱者の死後もこのアトキンス式ダイエットは依然ブームが続きそうな模様だ。

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